
宮崎県高千穂町・天岩戸神話の舞台を訪ねて|山と向き合う男たちが、結び直すもの
ランドネ 編集部
- 2026年05月17日
断崖の岩戸に、一本の縄を渡す。宮崎県高千穂町、天岩戸神社で冬至のころに行われる祭礼、天岩戸注連縄張神事。神話にならい、御神体の岩戸に新しい注連縄を渡す神事だ。舞台は切り立った岩壁。その役目を担うのは山を知る人たち。本誌に深く関わっていただいている、天野和明さん、望月将悟さん、広田勇介さん、3人の言葉から舞台裏をたどる。
>>“神様百名山”広田勇介さんがご案内「天岩戸神話の舞台をめぐる1日」はこちらの記事をチェック
神話の舞台、天岩戸の森で祈りは静かに結ばれる
この神事に関わることになった理由や、山と向き合ってきたそれぞれの経験。3人の言葉から、その背景にある思いや感覚をひもといていく。
なぜ神事に関わるのか?
広田:最初に声がかかったときはどう思いましたか?
天野:すごくおもしろそうだなと思いました。天野という苗字ですし、天岩戸も高千穂も来たことがなかったので、場所としての興味もありました。さらに「だれも入ったことがない場所にしめ縄を張る」という、しかも1000年続くお祭りにしたいという話を聞いて、クライマーとしてはぜひ関わりたいと思いました。
望月:私も、ぜひやってみたいと思いました。これまで、いろいろな山を走ったり、山のなかで救助をしたりしてきたなかで、山に守られてきたような感覚があるんです。レースで辛いときやケガを疑うこともありましたが、でも結果的に私は大きなケガをほとんどしていないんです。だからなにか恩返しというか、山に対して貢献できることがあればいいなと思っていました。

山で感じる神秘
広田:山のなかで、なにか神秘的な体験をしたことがありますか?
天野:20年以上前、ヒマラヤのローツェという、標高8500mの山に行ったときのことです。私は酸素ボンベを使わないで登らせてほしいとお願いして、ほかのメンバーよりも2〜3時間早く出発しました。夜中の0時にキャンプ地を出て登っていくんですが、その時間、その高さにいる人間はたぶん世界で私だけだったと思います。
天気もとてもよくて、孤独とか怖いという感じではなくて、宇宙に近いところにいるような感覚でした。私は宇宙飛行士になりたいと思っていた時期もあったので、宇宙に近い場所にいるような感覚はすごく印象に残っています。
広田:宇宙飛行士になりたいとは、ロマンチックですね。望月さんは?
望月:このしめ縄を張る作業をしているとき、いつも光が差してくるんです。それはとても神秘的です。トランスジャパンアルプスレース(TJAR)では、神秘ではなく、幻覚の話はよくあります。石ころが財布に見えて、「財布が落ちている」と言ったら、うしろから走ってきたランナーに「それ石だぞ」と言われるとか(笑)。極限状態になると、そういうことはあるんです。
広田:望月さんはレースの後半、南アルプスに入ると、幻覚を見るのではなく、元気になるとうかがいましたが?
望月:北アルプスと中央アルプスを越えて南アルプスに入ると、海からの風が暖かくて、ホームに帰ってきた感じがするんです。安心感がありますね。
広田:木に触れてエネルギーをもらうという話も聞きますが。
望月:私は抱きつきます。「ちょうだい」って言って(笑)。大きな木を見ると、長い時間そこに立っていろんなことを感じてきた木なんだろうなと思って、耳を寄せたくなります。
神話の物語をたどるように祈りと奉納が重なっていく

神事の現場で感じること、美しさへのこだわり、そして山と向き合う姿勢。3人の言葉からは、神事と登山に通じる共通の感覚が浮かび上がってくる。
山と神事に共通するもの
広田:今回の天岩戸注連縄御神事のでき具合はどうでしたか?
天野:私は最初から関わらせてもらって、今回で6年目。毎年少しずつ工夫しているんですが、今年は一番左右のバランスがきれいに出たと思います。両端から見るとまっすぐに見えるんですが、実際は少し斜めに張っていて、その空間を計算しています。
広田:クライマーはラインの美しさにこだわりますよね。
天野:ガチャガチャしているより、すっとした形のほうがきれいだと思います。
望月:私は3年目ですので、見た目の美しさまで見る余裕はなくて。危ない場所での作業なので、とにかく安全に!です。


九州の山の魅力
広田:では、今回の神事に参加したMt.ランドネメンバーのみなさんのほうから、質問がありましたらどうぞ。
Mt.ランドネ:九州でおすすめの山はありますか?
天野:近くだとやっぱり阿蘇山ですね。阿蘇は活火山なので、地球が生きている感じがすごくするんです。あんなに火山の近くまで行ける場所って、世界的にもなかなかないと思います。
Mt.ランドネ:阿蘇はパワーが強いですよね。
望月:私は九州の山にはまだあまり登れていないのですが、宮崎の親父山や、大崩山とかは興味があります。ぜひいつか登ってみたいですね。
広田:九州にも霧島連山の高千穂峰があります。天孫降臨の伝説が残る山ですね。神様が山に降りてきて日本が始まったという話なので、山好きとしてはうれしいですよね。
望月:信州では「登れる山と登りたい山は違う」という言葉があります。自分の能力を知ることが大事で、それが事故を減らすことにもつながると思います。自分と向き合いながら山に登ってほしいですね。
広田:己を知ることが、いい登山につながるんじゃないかなと思います。
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ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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