
晩秋の尾瀬とそこで働く人々に会いに行く1泊2日の尾瀬旅|まだ知らない尾瀬ストーリー#13

HagiwaraMai
- 2025年10月23日
“尾瀬”と聞くと思い描く景色はどんなものでしょうか?
「湿原と山と木道」という景色を思い浮かべる方が多いかもしれません。尾瀬はその景色があまりにも有名で、その成り立ちや歴史、その周辺地域のこと、そこに関わる人々のことはほとんど知られていません。じつは尾瀬には感動的なストーリーがいくつもあるのです。
尾瀬をこよなく愛するOze Nature Interpreterの私が、尾瀬のさまざまなストーリーをお届けします!
「また来年!」「元気でね!」が尾瀬では早くも聞こえてくる
10月16日~17日に久々に群馬県側の尾瀬へ訪れてみた。まずは尾瀬のふもと、片品村に到着。現在私が住んでいる檜枝岐村からは車でも4時間ほどかかります。ここ、片品村は尾瀬高校へ通っていた学生時代に友だちの家に遊びに行ったり、部活の練習や演奏をするたびに訪れていた場所であり、社会人になってからは数年間住んでいた場所。そんな思い入れの深い片品村はいくつになってもまるでふるさとのようで、帰ってくるたびに懐かしい気持ちになります。
鳩待峠に向かうバスやタクシーに乗り換える戸倉でも顔馴染みの人がいて、“久しぶり!元気だった?結婚おめでとう!”と言ってくれる。そんな片品村での思い出をふり返ったり、片品村の温かい人々に触れたりしながら尾瀬ヶ原へ入山。

鳩待峠に到着すると、しとしと雨が降っていました。でも今日は山小屋に行けばいいだけ。というわけで鳩待峠〜山ノ鼻間を、ゆっくりゆっくり味わうように歩きました。

雨の影響で落ちてしまった葉っぱもあったけれど、まだまだ美しく紅葉した葉もたくさん。
足元の葉も色とりどりで美しい。
雨が降ると木道はとっても滑りやすくて、落ち葉が増えるこの季節はさらに滑る。そのなかで、新しく架け替えられた木道がところどころに出てくると、その滑りにくさを改めて感じて、施工してくださった業者のみなさまに感謝の気持ちがじわっと湧いてきます。

さらに木々の葉が落ちるこの季節は、ツキノワグマが木の実を食べるときに作る“熊棚”が目立つようになります。

木道歩きは足元を見てしまいがちですが、立ち止まって視線を上に向けると意外な発見があったりするものです。
こうして、1日目は山小屋へ早めにチェックイン。こたつに入って本を読んだり、お風呂でしっかりあたたまったり、以前にお世話になった山小屋の人たちとの話を楽しんだり、山小屋での時間をのんびりとすごしました。
2日目の朝は“朝弁”を持って、日の出前に尾瀬ヶ原へ。

私は山小屋へ泊まるとき、朝ごはんの時間が美しくすばらしい時間だと思っているので、よく朝ごはんを“朝弁”にしてもらっています。この日は朝から風が強く、雲も出ていてなかなか朝日が顔を出してくれませんでした。
おまけにとっても寒かった!でもそのぶん、太陽が出てきてくれるとその暖かさが身に染みてとてもありがたく感じます。しかも風が強いということは、いま出ている雲を風が運んでいってくれるかもしれない…!そう思いながら黄金色の湿原を楽しんでいると、空にあった雲はみるみるなくなっていきました。



そろそろ尾瀬ではシーズンが終わりを迎えます。山小屋さんも冬支度を終え、下山していく季節。今回の旅で、私は顔馴染みの人たちに“また来年ね!元気でね!”と何回言ってもらったかわかりません……。
そう、尾瀬では10月になると、まるで年末のような挨拶が聞こえるようになります。晩秋の尾瀬は景色も美しいのですが、こんなふうに無事に仕事を終えた人々がさまざまな想いで尾瀬から下山していく、そんな別れの季節でもあるのです。今年も尾瀬に来る人々を受け入れ、おいしいごはんとお掃除の行き届いたお部屋でもてなしてくださった山小屋のみなさん、本当に本当にお疲れさまでした。
みなさんも尾瀬のシーズンが終わる前に尾瀬を支えてくれるすべてての人々と、尾瀬に対する感謝の想いを胸に、ゆっくりと尾瀬を訪れてみてはいかがでしょうか?
きっと、いつもとはひと味違った尾瀬旅を楽しめるはずです。

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PROFILE

ランドネ / Oze Nature Interpreter
HagiwaraMai
尾瀬高校自然環境科の卒業生であり、尾瀬のビジターセンターや山小屋、ガイド団体で働いた経歴をもつ。現在は、尾瀬をこよなく愛するOze Nature Interpreterとして尾瀬とその周辺地域の知られざるストーリーを伝える活動をしている。
尾瀬高校自然環境科の卒業生であり、尾瀬のビジターセンターや山小屋、ガイド団体で働いた経歴をもつ。現在は、尾瀬をこよなく愛するOze Nature Interpreterとして尾瀬とその周辺地域の知られざるストーリーを伝える活動をしている。