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14年ぶりに「本来の中辺路」へ。再開通した仲人茶屋跡〜岩神王子〜蛇形地蔵を歩く

地滑りの兆候が確認され、長く通行止めとなっていた熊野古道・中辺路の一部区間が、2025年10月、14年ぶりに再び歩けるようになった。急斜面が続く森で、重機を入れず、人の手と木の力でつなぎ直された「本来の道」。今回は、その再開区間を含むコースを、林業のエキスパート・岡上哲三さんと、語り部・山田良憲さんの案内で歩いた。古道に息づく人の知恵と森の生命力を感じる山歩きをご紹介。

台風被害から14年、ついに再開通

熊野古道・中辺路ルートの一部は、2011年の台風12号の影響で地滑りの兆候が見られたことで、長い間立ち入り禁止になった。そのあいだは、南側の作業道が迂回路として使われていたが、2025年10月、仲人茶屋跡から蛇形地蔵(湯川王子の手前)までの区間が14年ぶりに再び開通。本来の熊野古道を歩けるようになった。

復旧作業は2022年から3年をかけて進められた。急斜面や谷が多いうえに世界遺産エリアであることから重機が入れないため、現地で伐り出した間伐材を使い、人の手で橋や土留めをていねいに組んだという。

今回は、その再開区間をふくむコースを歩くメディアツアーに参加。熊瀬川王子から仲人茶屋跡、岩神王子、湯川王子を経て、熊野本宮手前の三越峠へと至るコース。

案内してくださったのは、熊野古道の修復や林業の現場を60年以上支えてきた岡上哲三さんと、語り部の山田良憲さん。岡上さんは80歳。2025年6月まで中辺路町森林組合の代表理事組合長をつとめてきた、熊野古道と森の達人だ。

山田さんはもともと京都在住で、2019年に京都から熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社・那智山青岸渡寺)を歩いたことをきっかけに和歌山県へ移住。語り部団体「語り部の会熊野古道中辺路」の会長として活躍している。

熊瀬川王子から始まる、静かな山歩き

歩き出してすぐ、舗装路は消え、柔らかな土と苔むす石畳の道が広がる。わたしたち以外に歩く人はおらず、静かな時間に癒されていく。やがて熊瀬川王子跡に到着。

「ここからは、峠を三つ越えます。なかなかに歩きごたえがありますが、自然豊かなところ。熊野古道のなかにはアスファルトで舗装された区間も多くありますが、このルートにはいっさい舗装路がなく、気持ちのいい山歩きができます」と山田さん。

林業が育んだ森のすがた

途中、岡上さんは静かに木々を見上げ、こう教えてくれた。

「このあたりは林業に向いた土地で、よく伸びた木がたくさん。モミやトチなど、樹齢80〜100年の木も多い。昔から林業に携わる人々が間伐を繰り返して、丁寧に手入れしてきた証拠やね。いい木は、よく伸びて幹が丸く、枝が少ない。(古道を歩きながら)紀州材のよさも感じてもらえたら」

木々の間から柔らかな光が差し込み、足元には木の根がうねるように広がっている。静かな森のなかで、生命の息づかいを感じる時間だ。

草鞋(わらじ)峠を越え、青緑に輝く石畳の道を進むと、今回再び歩けるようになった仲人茶屋跡に着く。ここには分岐があり、道は男坂と女坂に分かれる。ふたつをあわせて「女夫坂(めおとざか)」と呼んでいたことから、その中間にあった茶屋が「仲人茶屋」と名付けられたという。江戸時代にはすでにその名が使われていたそう。

それぞれの王子跡や茶屋跡には解説板が設置されていて、歩きながら歴史を学べるのも、整備が行き届いた熊野古道ならでは。知識を重ねることで、古道歩きがより味わい深い時間になる。

見晴らしの岩神峠と、沢沿いの道

起伏のある道を進むと、ふっと視界が開け、岩神峠に到着。そばには岩神王子跡があり、ひと休みするのにちょうどいい場所だ。

目のまえには、いくつもの山が重なり合い、淡いグラデーションを描いている。「14年ぶりに見られる景色」という言葉が、その眺めの感動をいっそう深くしてくれた。

岩神峠から急な坂を少し下ると、道は沢沿いへと続く。苔むした岩や湿った土の匂いが漂い、しっとりとした空気が心地よい。見上げると、のけぞるほど高く伸びた木々が静かに立ち並んでいた。

人の手でつながれた道

道のあちこちで、修復の跡が見られた。重機は入れられず、作業はすべて人の手によるもの。熊野古道を長年支えてきたベテランたちが力を合わせ、現地で伐り出した間伐材を使用。2〜3人のチームをいくつか作ってチルホール(木を引く機械)で丸太を運び、一本ずつ丁寧に橋や土留めを組み上げたのだとか。

丸太を整然と組んだ土留めや、木材を重ねて頑丈に作り上げた橋、階段。そのどれにも、手仕事の跡と熊野古道への想いを感じる。

60年以上この地の林業に携わる岡上さんは「山を持つ人や整備する人の協力なしでは、熊野古道の維持管理はできません」と教えてくれた。

大切に守られ続けてきた熊野古道。14年ぶりによみがえった本来の道には、多くの想いと時間が刻まれていた。森と人がつないだこの道を、ぜひ歩いて確かめてほしい。

詳細やMAPのダウンロードはこちら:和歌山街道マップ 熊野古道中辺路|和歌山県公式観光サイト

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ランドネ 編集部

ランドネ 編集部

自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

ランドネ 編集部の記事一覧

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