
ひとり山旅の魅力を教えて!|気ままに歩くひとり山旅
ランドネ 編集部
- 2026年01月02日
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仲間との山歩きとは違う、自分だけの時間をすごしに。次の休日、ひとり山旅に出かけてみませんか。ひとり山旅を日常的に楽しんでいるおふたりにそのきっかけと魅力、リアルな工夫、そして、おすすめの山を教えてもらいました。
紹介してくれたのは

菖蒲理乃さん(左)
モデル。雑誌やテレビ、ラジオなどで幅広く活躍。10代から町・山を問わずひとり旅を楽しむ。本誌で「ページをめくる旅に」を連載
大内 征さん(右)
低山トラベラー・山旅文筆家。山歩きの多くがソロ。山旅後の一杯がマイルール。著書に『低山からはじめるソロハイク超入門』など
訪れたのは
山ノ食堂
レトロ感が和む食事処。12月にレシピ本『「山ノ食堂」の12か月 ごはんとおやつと瓶詰めと。』を発売
- 住所:神奈川県相模原市南区相模台2-4-16
- 電話番号:042-865-0527
- 営業時間:11:00 ~ 17:00
- 定休日:不定休
- Instagram:@yamano.shokudo
ひとりの旅は、計画をこなす旅行とは違うよさ

――ひとり旅の原点は?
菖蒲 高校3年生のころ、初海外で、ひとりでタイに行きました。
大内 度胸あるね! 初ひとり旅をしたのは小学4年生。叔母さんの家が実家から離れたところにあって、電車を乗り継いで行ったなぁ。不安だったけど、分厚い時刻表でダイヤを確認して、初めて自分で計画して挑戦した旅だね。
菖蒲 大人になってから、印象に残っている旅はありますか?
大内 東北のバイク旅かな。21歳くらいのころ。きっかけは、歌人・寺山修司さんの「書を捨てよ町へ出よう」っていう言葉に触れて宿も決めずお寺で泊めてもらったり野宿したり。それで、東北の端・大間崎を目指した。ひとりでどこかにたどり着く・なんとかなる経験ができたのが、この旅だった。

菖蒲 私もひとりで青森に行きました。ローカル線とバスを乗り継いで。
大内 いいね。
菖蒲 電車やバスに乗ると、景色も人も変わっていくのがいいですね。
大内 そうそう。乗り物が動くごとに景色も人も変わっていくのに、自分は前に進めているのかわからない。ひとり旅をしていると、そんな取り残される感覚が出てくる。でも気づきもあって。「自分をふり返る時間なんだ」と思ったことがある。自分の現在地とか、これからのこととか。
菖蒲 だから山を歩くのって、ひとり旅と親和性があると思っています。昔はいまよりも電波が入らない山が多くて、山に入ったらもう連絡が取れない。ひとりの世界。「ひとり×山」の組み合わせにハマったところはあります。
大内 印象的なひとり山旅は?
菖蒲 岐阜県の養老公園ですね。
大内 また渋いところに!
菖蒲 春に桜を見たくて、ひとりで行きました。まず、東京から夜行バスで名古屋に行ってモーニングを食べて。それから養老鉄道という赤い鉄道に乗って、養老公園を歩きました。
大内 いい旅だね。僕がひとり山旅に本格的にハマった決定打は、沖縄で出会ったカヤックなんだよね。20代後半は、マングローブカヤックに夢中になって、年に3~4回、沖縄へ通っていて。初めてカヤックを漕いだときに、これだ、と。当時は会社員で、情報や電話に追われる毎日で、自分をひとりにしてあげる時間が少なかった。でもカヤックの上でひとり、漕ぐのを止めて静かにたゆたうの。すると、風がそよぎ水がゆっくり流れる音が聞こえる。
その「なにも起こらない」感じが懐かしくて、子どものころ山で釣りをした記憶とか、自転車やバイクで旅をした記憶とつながって、そんな時間をほっしていたと気づいたんだよね。
菖蒲 原体験が結びついたと。
大内 そうそう。なにが心地いいのか考える余裕も、立ち止まる時間もなくて。だから、なにも起こらない場所に身を置くと、本来の自分がよみがえるって実感した。
菖蒲 日常から離れることで、心も休まるっていう。「じゃあ、だれかといっしょじゃダメなのか?」って考えてみたんですけど。
大内 それは深いテーマだ。
菖蒲 ひとり旅って、「旅」なんですよね。個人的に、だれかと行くのは「旅行」。旅行は、計画を立ててこなす「行ない」。いっぽうで旅は、移動や出来事そのもの、プロセス全部なんだなと。いまのお話を聞いて改めて感じました。


大内 わかる。旅行は「行程の行」でもあって、しっかりした計画に価値があるもの。だから旅行代理店のツアーにもお金を払うし、計画どおりに進まないと戸惑う。いっぽうで、行程がカチッと決まっていない「旅」はいい。自分でなにか解決したり、工夫したりすることに価値を感じる人は、予定が決まりすぎていると窮屈だよね。
菖蒲 ですね。行き当たりばったりで、ちょっとしたトラブルがあったほうが盛り上がる。
大内 僕には「旅」が性分に合っていて。予定が詰まりすぎると、ずっとフル稼働しちゃうもの。だから余白をつくることが大事。
菖蒲 ひとりだと、地元の人と出会う率も高くないですか? 飲み屋でも話しかけられやすいし。
大内 そうだね。自分では思いつかないことを教えてくれたり、情報をもらえたり。ひとりで行ってよかった山でいうと、山梨県の小楢山。巨岩からの展望がよくて、うっかり寝ちゃったの(笑)。秋ごろで日差しも気持ちよく、岩の上でそのまま。起きたら夜だった。いまとなってはいい思い出。

菖蒲 だれかといたら「もう帰ろうよ!」って言われていますよね。
大内 うっかりを許せるのがひとり旅のよさ。ほかにも、降りるICを間違えたら、偶然いいカフェを見つけたとか。計画がガチガチじゃないから「うっかり」歓迎。想定外から新しいなにかが始まる。
菖蒲 やっちゃった〜っていう自分もちょっと愛おしいですよね。
大内 そうそう。ひとり山旅に慣れると、心の幅が広くなるというか、「どうにかなるし、どうにでもできる」と思えるようになる。
菖蒲 たしかに!
大内 理乃さんに前に教えてもらった長崎県平戸の安満岳もそう。潜伏キリシタンの人が神聖視していた山で、ひとりで行ったの。石畳の先に、白山の女神さまの祠がある。山頂の裏側から見えた景色があまりにきれいで。足元に棚田と集落が見えて、あそこまで行ってみようと下りていくと、そこが「潜伏キリシタンの里」だった。理乃さんから聞いた話と、(柔軟に動いたからこそできた)自分の体験がつながって、平戸が立体的に、解像度が上がった瞬間だった。
菖蒲 平戸いいですよね。高知をひとりで旅したとき、飲み屋の大将にすすめられた山へ翌朝ふらっと出かけました。街のすぐ近くの低山なのに、思いがけない絶景で! ひとりだからこそ、周囲のおすすめを受け入れて気ままに動くといい出会いがあると思います。
ひとり山旅で注意していることは?
クマに要注意!(大内さん)
クマ鈴やホイッスル、スプレーを携行。夏の北海道の山はひとりで行かないというマイルールも
大枠の動線は決めておく(大内さん)
安全のためにも、旅の骨組みは決めよう。たとえば、スタートとゴール地点、行動終了時間など
“ついてくる人”に気をつけて(菖蒲さん)
話しかけ続けてついてくる人もいる。山小屋への避難や早めの撤収で動線をずらし距離をとって
人目の多い時間に歩く(菖蒲さん)
コースの先頭にも最後尾にもならないように意識。人の目が届きトラブル時も助けを求めやすい
大内 征さん おすすめの山&必需品
①礼文島【北海道】

- 標高:180m(ゴロタ山)
- 歩行時間:ストコン岬~ゴロタ岬~澄海岬~浜中/約5時間20分
ひとり旅が似合う、最果ての小さな島、礼文島。緩やかな海岸沿いの丘陵が魅力。大内さんが「ひとり旅史上、最高クラスによかった。来年も行きたい」と絶賛するほど
②杵島岳・草千里ヶ浜【熊本県/阿蘇五岳】

- 標高:1,321m
- 歩行時間:草千里ヶ浜駐車場~杵島岳~草千里ヶ浜駐車場/約40分
写真は、杵島岳から眺める草千里ヶ浜。大きな水たまりの奥には阿蘇五岳のひとつ、烏帽
子岳がそびえる。絶景にして、初心者にも歩きやすいのが魅力。地元の人も散歩に訪れる
③みちのく潮風トレイル 八戸セクション【青森県】

- 標高:-m
- 歩行時間:鮫駅~蕪島~葦毛崎展望台~中須賀~大須賀海岸~淀の松原~種差天然芝生地~高岩展望台~大久喜駅/約4時間
総距離約12.5㎞の八戸セクション。写真は、ハイライトのひとつ、芝生の海岸線・種差海岸。波打ち際まで天然芝が広がる。電車(JR八戸線)でスタート地点に立てるのも魅力
④熊野古道 伊勢路(松本峠~鬼ヶ城)【三重県/熊野】

- 標高:135m(松本峠)
- 歩行時間:熊野市駅~鬼ヶ城歩道トンネル~松本峠~鬼ヶ城跡~鬼ヶ城~熊野市駅/約6時間
大内さんが取材で菖蒲さんを案内したコース。大きなお地蔵さんは松本峠のシンボル。熊野古道からいったん外れて鬼ヶ城の海岸線を歩くのがポイント。海の展望も楽しめる
ひとりだからこそ自分で守る 安心セットを巾着にイン

シャンプーだけで全身を洗う。石鹸を置かない温泉は意外と多い。耳栓は睡眠の質を上げつつアラームは聞こえるのが便利。ほかにデポ用コードロックやクマ鈴、ホイッスル、塩タブレットなどを携帯。
菖蒲理乃さん おすすめの山&必需品
①天上山【東京都/神津島】

- 標高:572m
- 歩行時間:黒島登山口~黒島登山道10合目~千代池~表砂漠~裏砂漠展望地~新東京百景展望地~不動池~天空の丘~不動池展望地~天上山~白島登山口/約4時間30分
開放的な景色が魅力。花の百名山にも選ばれている。登山道が整備されており初心者でも歩きやすい。多様なコースがあり、興味に合わせてアレンジするのもひとり山旅の醍醐味
②木曽駒ヶ岳【長野県/中央アルプス】

- 標高:2,956m
- 歩行時間:駒ヶ岳ロープウェイ千畳敷駅~乗越浄土~中岳~木曽駒ヶ岳~中岳~乗越浄土~駒ヶ岳ロープウェイ千畳敷駅/約4時間
菖蒲さんが初めてひとりでテント泊を楽しんだアルプスの山。2時間ほど歩けば山頂に到着。テント泊に慣れていなくても挑戦しやすいうえ、山上で長時間のんびりできる
③皿ヶ嶺・鷲尾山【高知県/南嶺】

- 標高:306m(鷲尾山)
- 歩行時間:筆山登山口~皿ヶ嶺~鷲尾山~筆山登山口/約3時間
菖蒲さんが現地の居酒屋大将に教えてもらった山。市街地から近く、気軽に歩ける。山頂からは長浜の街並みや浦戸湾を一望。南嶺にはほかにも山があり縦走するのもおすすめ
④養老公園【岐阜県】

- 標高:280m(養老の滝)
- 歩行時間:養老駅~養老公園~養老の滝~養老公園~養老駅/約1時間40分
桜の名所としても知られる。公園内の養老の滝は日本の滝百選に選定されている。公園のうしろにそびえる標高859mの養老山や養老神社、明水・菊水泉など見どころたくさん
移動を含めた静かな時間で、自分と思考を深めるアイテム

移動中はワイヤレスイヤホンで音楽を楽しみ、写真撮影はコンデジで気軽に。バックパックに外付けできる折りたたみトートはおみやげ入れに重宝。本は旅中に少しずつ読めるエッセイや短編集が多い。
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PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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