
Mountain River Brewery/東京都|山とクラフトビール〜ブルワーを訪ねて、特急で!〜
オガサワラガク
- 2026年01月21日
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下山後の一杯はどんな飲みものでもおいしい。とくにシュワっとする、地元ならではのクラフトビールは格別です。そんな特別なビールを作っているブルワーさんを訪ねて、そのおいしさ、魅力をちょっとだけ深く紹介します。
紹介してくれたのは

オーナー 山本孝さん(右)、醸造士 石川涼一さん(左)

Mountain River Brewery
住所:東京都杉並区久我山3丁目17-18 ウッディ久我山
標高は低くても、物語は濃ゆい。久我山に、旨みの川が流れていた
山が好きな人が作ったブリュワリー、久我山のマウンテンリバーブリュワリーへの取材をしようと、編集の山﨑さんから連絡をもらった。
ただこの連載は「山とビール」がテーマで、これまで必ず登山とセットになっている。しかしマウンテンリバーがある久我山は、東京都杉並区の閑静な住宅地。もちろん、その近くにわかりやすい山は存在しない。これは企画として成立するのだろうか。そんな不安が頭をよぎったところで、山﨑さんが少し間を置いてこう言った。
「久我山って、山ですよね?」
なるほど、そう来たか。
久我山の地図を何度見返しても、等高線はほとんど動かず、せいぜい坂があるかどうか。標高はおそらく10mにも満たない。それでも確かに、〝山〞という文字はついている。
私は昔から物わかりのいい人間である。それなりに年も重ね、大人の事情というものも理解できる。ランドネ読者の生粋の山好きから、どんな言葉を浴びせられようとも、その日私は決めた。久我山という名の山に、登ってやろうと。
というわけで、マウンテンリバーを訪ねる前に久我山駅で電車を降り、軽い散歩……いや、登山をすることにした。改札を出ると、住宅街は静かで、空が広い。高低差はほとんどないが、歩いていると不思議と呼吸が整ってくる。山とは、標高ではなく、心の持ちようなのかもしれない。登山に腹ごしらえは欠かせないということで、「中華料理熊」で感動的においしいラーメンと餃子を食べ、久我山登山は終了。そして、マウンテンリバーブリュワリーへ向かった。
元材木店を改装したという天井の高い空間で迎えてくれたのは、代表の山本さん。この建物を通りがかりで見つけ、「ここにブリュワリーがあったらおもしろい」と思った妄想を、実際に形にしてしまった人だ。
設備は3 0 0 ℓタンクが4基のみ。クラフトビール業界ではかなり小規模な部類に入る。「でも、小さいからこそできることがあるんです」と山本さんは言う。仕込み量を小さくできることで、実験的なビールに挑戦できること。フルーツの皮むきや下処理といった手作業を残すことで、素材の状態を見ながら味を微調整できること。規模を抑えることで、ビール作りの自由度を保っている。


販売についても同様だ。自分たちのタップルームはあえて持たず、卸を中心に展開。顔の見える近隣の飲食店や、感度の合う小さな店と、少しずつ関係をつないでいく。大量流通を目指さない代わりに、「どう飲まれるか」まで想像できる距離感を大切にしている。
マウンテンリバーのビールは、どれも「食事といっしょに飲まれること」を前提に設計されている。IPAであってもホップを派手に効かせすぎず、料理の邪魔をしないギリギリのところで香りと苦味を立たせる。単体で強烈な印象を残すのではなく、料理と合わせて初めて完成する。その思想が仕込みの核にある。
もうひとつの特徴が、ベルギービールに由来する「瓶内二次発酵」だ。タンクで炭酸を加えるのではなく、瓶の中で酵母にもう一度仕事をしてもらい、時間をかけて自然な炭酸を生ませる。時間はかかるが、そのぶん、炭酸は柔らかく、口当たりも丸い。酵母が残ることで、味わいには奥行きが生まれる。
実際にいただいたキュービックIPAは、ひと口目にホップの香りがふわりと立ち上がり、続いて酵母由来の洋梨のようなニュアンスが追いかけてくる。アルコール度数は7 %あるが、それを感じさせない軽やかさで、気づけばグラスが空いていた。
久我山という名の、限りなく低い山。そこで出会ったこのブリュワリーは、大きくしないことで、地域に深く根を張るという、自分なりの登り方を選んでいた。私はそのビールの余韻そのままに、ゆっくりと下山して家路についた。
下山後の一杯は……

Table Saison
- 650円(税込)
- スタイル:セゾン
- アルコール度数:3.0%
- サイズ:330㎖
“日々の食事のなかのお酒”として設計されたセゾン。度数3%、クセを抑えた軽やかな飲み口で、食事の邪魔をしない軽快なビール。餃子にもよく合いそうだ。
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高尾山
「成人してから登山の楽しさを知ったのですが、子どもができて遠出が減りました。でもロープウェーで上まで行き、山頂で遊んで帰るという山のすごし方に魅力を感じています。高尾山ではケーブルカーとリフトに乗れるので子どもが大喜び。アクセスもよく気軽に楽しめます」
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