
山好きの4人が綴る、山旅エッセイ|忘れられないひとり山旅
ランドネ 編集部
- 2026年02月01日
INDEX
山好きの4人に、ひとり山旅エピソードを綴ってもらいました。思わぬ出会いに心を奪われる朝もあれば、ドキドキと向き合う道もある。ひとりで旅したときにこそ見える景色を、そっと覗いてみてください。
秋の鳳凰小屋と地蔵岳

初めて鳳凰三山に行ったのは秋の終わりで、鳳凰小屋が閉まる日だった。氷点下になるほど朝晩は寒かったけれど、小屋番の方やほかのお客さんたちとコタツを囲んでお酒を飲みながら山の話をすると心が温まった。まだ暗い早朝に地蔵岳を目指すと朝日に赤く染まる地蔵岳のオベリスクが忘れられないほど美しく、寒いなか登ったご褒美のようだった。
それから私は秋になるとこの山と小屋に通うようになり、たいていは御座石鉱泉から燕頭山を経由して登る。登り始めるとカラフルな紅葉が迎えてくれて、燕頭山で猿男鹿線をたくさん纏った木々を見ながら休み、小屋の周りはまたとてもカラフルだ。

地蔵岳へ向かうと黄色くなった唐松と青空とオベリスクの白い岩のコントラストが美しい。小屋に戻ると、ご主人の細川さんがせっせとコタツのために火を起こしていて、その光景を見ると戻ってきたなぁと思う。ここはひとりで行っても小屋の方やお客さんが温かく迎えてくれるので安心して向かってしまう、そんな場所があるのはとてもうれしいことだ。
おすすめの山

地蔵岳[山梨県/南アルプス]
- 標高:2,764m
- 歩行時間:(1日目)御座石鉱泉~燕頭山~鳳凰小屋~地蔵岳~鳳凰小屋/約7時間、(2日目)鳳凰小屋~燕頭山~御座石鉱泉/約3時間30分
教えてくれたのは

フォトグラファー 根本絵梨子さん
アウトドア、カルチャー、ファッションなど幅広く撮影している。山や自然をテーマに、国内外を問わず旅をして撮影を行なう。
六日町温泉と坂戸山
登山と「温泉宿への宿泊」を絡めたひとり旅が大好きな私がご紹介したいのは、新潟県南魚沼市の標高634mの低山、坂戸山。よく登られている「薬師尾根コース」は整備されていてあちこちでお花も楽しめる。山頂直下に咲くカタクリの花が見ごろを迎える、4月中旬ごろの登山がとくにおすすめだ。

坂戸山登山の前日には六日町温泉の「魚沼の隠れ温泉 くつろぎ庵」に宿泊。全3室の隠れ家のような宿で、源泉かけ流しで露天風呂の開放感も抜群。浴室は貸切利用も可能で、ビールやソフトドリンク、アイスなど(一部有料)を露天風呂に浸かりながら楽しめるサービスも。夕食では裏の山で採れた山菜が、天ぷらや小鉢のおつまみとなって並び、魚沼の地酒の飲み比べとともに味わった。朝食では、炊きたての魚沼産コシヒカリをお腹いっぱいいただいた。
「チェックアウト後に坂戸山に登る」と伝えると、土鍋に残ったご飯をおにぎりにしてくださり、うれしかった。坂戸山と合わせて楽しめば、きっとすばらしい旅になることと思う。

おすすめの山

坂戸山[新潟県/南魚沼]
- 標高:634m
- 歩行時間:坂戸山登山口~坂戸山~坂戸山登山口/約1時間30分
紹介してくれたのは

ひとり旅ブロガー 月山ももさん
ブログ「山と温泉のきろく」やSNSで全国で出会ったいい山や温泉宿を発信。著書に『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』がある。
心をつかまれた普賢岳

GWに本州の喧騒を離れ、フェリーで九州へ渡った。ひとりで九州を一周めぐる山旅。百名山もめぐったが、もっとも心に残ったのは長崎の雲仙普賢岳だった。観光地という印象で、ついでに立ち寄ったはずの山。その山頂で対峙した平成新山の気配に、思わず息を呑んだ。日本でもっとも新しく生まれた山が放つ、言葉にしづらい存在感。普賢岳一帯をまとう荒々しさと独特な静けさが、じわりと心に残った。
ふもとに降りれば海。夕焼けに金を散らす水面を眺めながら浸かる温泉が心地よく、予定を変えてそのまま滞在。翌朝は、夜が明け切らない静かな闇を歩き出し、向かいの国見岳へ。日中のにぎわいとは対照的に、朝の光にゆっくりと表情を変える普賢岳を、地元の方と並んで静かに眺めた時間が忘れられない。

すっかり魅了された私は、さらに別角度を求めて九千部山へ。もちろん山頂からは普賢岳の眺めをひとり占め。観光だけでは終わらせたくない。
おすすめの山

普賢岳[長崎県/雲仙岳]
- 標高:1,359m
- 歩行時間:雲仙ロープウェイ仁田峠駅~あざみ谷~紅葉茶屋~普賢岳~紅葉茶屋~あざみ谷/約2時間30分
紹介してくれたのは

ライター 中島英摩さん
趣味が高じてライターとなり、季節を問わず山に通って山歩きやトレイルランニングの取材・執筆を行なう。長野県松本市在住。
小走りの北八ヶ岳

基本的に単独では山へ行かないことにしていて、なぜなら数十年前、登山専門出版社に入社して月刊誌に配属になって最初に担当する読者の声欄で、女性登山者の投書にあった恐怖体験に震え上がったからである。しかし、ひとりで行かなければならない取材もまれに発生する。
それは日帰りでの北八ヶ岳の山小屋取材だった。バスで往復するだけではいかにももったいないと思った私は、人が行かなそうな道を吟味し(それが問題だ)、取材後ひとりで歩き出した。
丸山にピストンし雨池をめざし峠から八丁平に出る。案の定この地味なコースに人影はなく、森に包まれて山の午後を堪能できるはずだった。が、たまにすれ違う登山者に小動物のかさこそ音にいちいちびくつき、全行程ほとんど小走りで、雨池でも一瞬立ち止まっただけで標高差300mを10分で駆け上がり、縞枯山荘まで来たときは心底ほっとした。それでも針葉樹の森の澄んだ香りや緑の色の深さは覚えている。


おすすめの山

丸山[長野県/八ヶ岳]
- 標高:2,329m
- 歩行時間:麦草峠~丸山~雨池~縞枯山荘~北横ロープウェイ/約5時間30分
紹介してくれたのは

編集者・文筆家 若菜晃子さん
著書に随筆集『街と山のあいだ』『旅の彼方』ほか。2025年夏に増補改訂版『東京近郊ミニハイク』を刊行。『murren』編集発行人。
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PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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