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【産後登山体験談】「頼むから山に行かせてほしい」4児を育てながら続けた山登り

出産という大きな山を乗り越えたあと、どのようなステップを経て登山を再開していったのか。山を愛してやまない女性たちの産後登山体験談をお届けするインタビュー企画です。

プロフィール

信州登山案内人/登山カウンセラー 松尾雅子さん

1972年、神奈川県生まれ。4児の母。1995年以降、夫の転勤で長野県内や県外を転々とし、2002年より長野県下伊那郡松川町に定住。子育てをしながら登山を続け、2012年に信州登山案内人の資格を取得。山のガイドやカウンセリングを行なっている。

産後半年で北アルプス1泊2日の縦走を決行!体力低下よりも大変だったこと

幼いころから家族で山に登っていたという松尾雅子さんは、小学校高学年で「将来は山に関わる仕事をしたい」と思うほど、山にのめり込む青春時代を送ります。社会人になってからも、仕事以外で考えるのは山のことばかり。そんななかアウトドア好きの男性と出会って結婚し、夫の転勤で山々に囲まれた長野県に移り住みます。しばらくは夫婦で山を楽しもうーーそう思っていた矢先に妊娠が発覚。24歳で第一子を出産し、それから年子で第二子・第三子を、31歳で第四子を出産しました。

▲松尾さんは子どもたちが幼いころから、一緒に登山を楽しんでいたそう。

――年子が3人続いたということは、しばらく登山もご無沙汰だったのではと思いますが、実際はどうでしたか。

松尾 ひとり目の妊娠中は怖くてできなかったし、ふたり目のときは上の子が1歳だったのでなかなかできなかったけど、3人目以降は慣れてきたこともあって、子どもたちを連れて近所の山でお散歩をしたりしていました。勝手知ったる山というか、目をつぶっていても登れるくらいの山が近くにいくつかあって。山といっても八ヶ岳のようなところではなくて、標高1,500m、高低差200~300mほどの里山です。

――とても恵まれた環境だったのですね。

松尾 はい。ふたり目を出産した直後から、夫の仕事の都合で長野県安曇野市の三股登山口の真下に住み始めました。目の前に山があって、登山口も近くにある環境だったので、とにかく山に行きたくて仕方なかったですね。20代で自分も若かったし、妊娠や出産でそこまで体力が衰えているとは感じていなかったので、じつはふたり目が生後半年くらいのときに、「頼むから山に行かせてほしい」と言って、夫が休みの土日に1泊2日で……。

――1泊2日⁉

松尾 そう、いきなりですよ(笑)。里山すら登っていなかったのに。いま考えれば恐ろしいですね。北アルプスの燕岳から入って大天井岳の山小屋で1泊して、2日目に常念岳と蝶ヶ岳を縦走して下りて来るという計画を立てて行ったんですよ。

――産後の体力的には相当きつそうです。

松尾 体力の衰えについてはそこまで気にならなかったのですが、一番つらかったのは、行動中に胸が張ってしまったことです。ふたり目は母乳とミルクと半々で育てていて、私がいないあいだはミルクを飲ませてもらっていたので、赤ちゃんのほうは問題なかったのですが、自分のほうの胸が張ってしまったのが大問題でした。

絶対に1泊2日で帰ってこなきゃいけないから、いつも以上に急ぐので、ものすごく汗をかくわけですよ。それでお水を飲むと、胸のほうに水分がいってしまって。大天井岳の山小屋に着いたときには胸がカチカチに硬くなっていたので、夜中にこっそり……搾りました(笑)。

――リアルですね(笑)。

松尾 次の日は蝶ヶ岳まで行って三股に下りる予定でした。妊娠前は、そこまで飲んだり食べたりしなくても登れなくなることはなかったので、おなじ感覚で縦走を続けていたら、常念岳を下りきって蝶ヶ岳へ登り返すところで、ピタリと動けなくなったんです。

前の日に母乳を搾ったものの、全部は搾り切れないから次の日もカチカチのままで。途中で水分をとるとまた腫れてしまって、それがもう痛くて仕方ないから、後半は水分も食べ物も摂らないでいたんですよ。

――それで動けなくなってしまったと。

松尾 脱水とシャリバテだったんだと思います。ガイドになるために登山の生理学などを勉強したから、いまならどういう状態だったのかわかりますけど、そのころはわかりませんでしたね。ごはんを食べたら元気になったので、その日のうちに登山口までなんとか下りることができました。でも迎えの車に乗った途端に、自分では抑制が効かないくらいガタガタ震えだして、帰宅後もずっと震えていたから、脱水症状になっていたんだと思います。

――壮絶な産後登山の思い出ですね。

松尾 はい。ひとり目からふたり目の出産までずっと我慢していたから、山に登りたい気持ちをそこで爆発させちゃったんですね。そういうことはしないほうがいいという苦い経験になりました。

▲大天井岳と常念岳を繋ぐ稜線。景色はすばらしいものの、産後のコンデションが整わない状態で歩くにはハードな行程だ。

自分のための登山から子どもたちと楽しむ登山にシフトしていった

――ご自身のための登山を本格的に再開したのは、3人目の出産後になりますか?

松尾 そうです。4人目が生まれる前に、いま住んでいる長野県南部の伊那谷に引っ越してきました。それからは大手をふって、「いまから、うちから見える塩見岳に行ってくるわ」と夫に子どもたちを任せて登っていましたね。

あとは(中央自動車道)松川ICのすぐ裏にある烏帽子岳や小八郎岳。塩見岳を含めた3つの山をローテンションして登っていました。

▲自宅から近く何度も登っている塩見岳を背に。この日は次女とともに、北岳まで縦走した。

――登山を再開するにあたって、ご主人は協力的だったのですね。

松尾 私たちはIターンなので、親戚もいないし、子どもを預けられるほどの友だちもいないし、時代的に保育園などもそこまで整備されていなかったので、夫以外に頼れる人がいなかったんですよね。頻繁に登っていたというよりも、一年に一回だけのご褒美として山に行っていた感じです。あとは子どもと一緒に楽しめる登山やアウトドアにシフトしていきました。

――子どもたちと山へ行くようになり、感じ方に変化はありましたか?

松尾 変わりましたね、やっぱり。もちろん子どもと一緒に山へ行くのは自分が行きたいから、というのが大前提なのですが、山登りの素晴らしさ、自然の不思議さやおもしろさを子どもたちに伝えたいという想いも芽生えました。

子どもを連れて行くにあたって意識したことは、子どもにちゃんと山の説明をすること。山登りは楽しいばかりでもないですから。たとえば標高差約300mの片道1時間で登れる程度の山であっても、子どもには「明日の山は、こういう道があって、登りは危ないところもあるよ」と伝えたり、「おんぶと抱っこは絶対にしないよ」という約束をして行ってましたね。

一応山頂は目指しますが、子どもが嫌になってしまったらそこで引き返していました。あとは登ったときの達成感を子どもたちに感じさせることも意識していましたね。

――子どもに達成感を味わってもらうために、親としてはどんなことができるのでしょう?

松尾 私は子どもたちに山登りを好きになってほしかったので、自分で困難を乗り越えて山頂に着いたという経験をさせるようにしていました。たとえば子どもにとって大きな段差があったら、「そこをどうやって乗り越える?」というのを子どもに考えさせて、どうしても子どもが思いつかなかったり乗り越えられなかったりしたら、「こっちの石に登ってみてはどう?」と伝えたり、下から少しだけお尻を押さえたりする程度の援助をして、子どもたち自身に乗り越えさせていました。

子どもたちは、山登りは冒険チックで楽しかったと思っているだろうし、成人したいまでも山登りが好きみたいですね。

――それは大成功と言えますね!

罪悪感をもたず自分の登山を100%楽しむための心得とは

――出産を経て、「体力に自信がないけど山に行きたいな」とモヤモヤしている女性も多いと思います。産後登山を経験した松尾さんなら、そういった方々にどんなアドバイスをしますか?

松尾 もちろん私も、おなじようなジレンマはありました。私の場合は体力というよりも、「子どもがいるのに(登山という)リスクの高いことはできない」という思いがあってモヤモヤしていて。そのときに考えついたのが、「自分は山のなにが好きなのか」ということをふり返ってみるということでした。私の場合、山の景色だけでなく、自然そのものが好きだったんですよね。山に咲いている花、鳥の声、森の匂い。山のそういうところに癒される方は、多いと思うんです。

たとえば「山のなかでお弁当を食べたい」というのが目的だったら、標高を上げなくても、水平移動で行ける自然を探して、子どもと一緒に楽しんでもいいし、自分ひとりで少し冒険してみてもいい。そういう、身近な自然に足を運ぶところから始めてみたらいいのではと思います。庭に来る小鳥も自然だし、雑草と呼ばれる花も自然だし、近所の公園でも自然に出合えるはず。視点を変えて身近な自然から始めて、少しずつ経験値と体力をつけていったらどうでしょう。

――素敵な考え方ですね。
子どもと一緒に山を楽しむ経験も素晴らしいと思いますが、もし「自分のための登山を100%楽しみたい」という場合は子どもをだれかに預けるしかない。でも「母親だから」という責任感から子どもを連れて山に行っている、という方も少なくないのではと思います。

松尾 これもいまの話とおなじようなアドバイスになりますが……。お母さん、お父さんに限らず、私のところに来た人に必ず聞いているのは、「なぜあなたは山に登りたいんですか?」ということ。ストレス発散のためとか、景色を見たいとか、いろいろあると思います。いまでないとダメなのか、もう少し先延ばしでもいいのかと天秤にかけて、「いま行かなければ自分が壊れてしまう」ということなら、それはやるべきなんですよ。どんな手段を使ってでもね。

哲学的に「私が生きるうえでは、いまこれがとても必要なんだ」ということを自分の中で確立して、それを協力者に説明できるんだったら、それをやるべき。説明できないんだったら、親としてもう少し修行するというか我慢するところなのかなと思いますね。

――自分のなかに、確固たる理由が必要なのですね。

松尾 自分にとって必要だったから、私は子どもを置いて山に行くこともあったけど、時代的に「登山=道楽」と捉えられる雰囲気もあったので、すごく罪悪感がありました。でも年に一度だけ冒険の旅に出かけたときは「家族がいるから怪我なく無事に帰らなきゃいけない」「ここでなにかあったらもう二度と山に行けない」と強く心に思いましたし、帰ってきたときには、登れた達成感よりも協力してくれた人への感謝の気持ちを感じました。ほかのお母さんたちにもそこを大切にしてもらいたいし、罪悪感をもつ必要はないと思います。

いまは個が大事にされる時代なので、うしろ指をさされることも少なくなったと思いますが、そうは言っても世間は厳しいので、世の中の冷たい視線に打ち勝つ芯をもって進んでほしいです。

――確かな芯があれば、罪悪感を覚えることもないはずですね。実体験をふまえたアドバイス、ありがとうございます!

▲幼いころから登山を通して冒険心を育んできた子どもたちは、成人したいまでも、山を好きだと言ってくれるそう。

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ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

ランドネ 編集部の記事一覧

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