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歩く旅がひらく、日本の風景とこれから│第11回ロングトレイルシンポジウム リポート

長野小諸安藤記念アウトドアアクセンターで、「11ロングトレイルシンポジウム」開催した。日本ロングトレイル協会設立10節目なる今回は、特別講演地域事例発表、教育、観光、保全、そしてパネルディスカッションまで、じつに多彩テーマ並ぶ一日となりした。

司会務めフリーアナウンサー深沢彩子さんは、ロングトレイルようやく社会認知きたこと、そして地域活性とどず、自然教育、健康、人々ライフスタイル大きなヒントつつあること冒頭語りした。
また、公益財団法人 安藤スポーツ・文化振興財団理事長で、日本ロングトレイル協会名誉会長でもある安藤さんは、青少年心身育成における自然体験大切ながら、ジャパン・トレイル各地ロングトレイル広がり期待寄せした。開催地・小諸からは、小泉俊博市長メッセージ田中尚公市長によって代読れ、ロングトレイル地域魅力伝え、まちつなぐ存在としてってきたこと歓迎伝えした。

会場感じは、ロングトレイル単に長い距離歩くためではない、ということです。自然れ、土地歴史文化出会い、そこで暮らす思いながらていく。その時間なかで、自分感覚少しずつらいていく。今回は、そんな“歩く旅”現在地を、5視点からます。

1)歩くことの意味を問い直す

シンポジウム前半は、「なぜ歩くのか」という、ごく根本的な問いでした。
特別講演に登壇した稲葉香さん、国立中央青少年交流の家所長の藤原一成さん、そしてパネルディスカッションに登壇したロングトレイルコーディネーターの村田浩道さん。それぞれ立場は異なりますが、歩くことを単なる移動手段としてではなく、人が生きることそのものに深く結びついた営みとして語っていたのが印象的でした。

「歩くことは生きること」——稲葉香さん

特別講演「大いなるヒマラヤの懐を行く 北西ネパール」で登壇した稲葉香さんは、大阪・千早赤阪村で山小屋美容室を営みながら、ヒマラヤに通い続けています。美容師として暮らしながら歩く人でもある稲葉さんの話は、壮大な景色の紹介にとどまらず、ご自身の身体と向き合いながら旅を重ねてきた時間そのものでした。

▲「大いなるヒマラヤの懐を征く 北西ネパール」ヒマラヤを歩く美容師、第25回植村直己冒険賞受賞 稲葉香さん。

19歳でリウマチを発症し、痛みを抱えながらも歩き続けてきた稲葉さん。休憩中の会話では、「歩くことは生きること」とも話していました。歩けることそのものがありがたいこと。痛みがなくなるわけではないけれど、それを超えて楽しめるものを見つけたことで、自分の世界が変わっていったこと。そうした率直な言葉には、強い説得力がありました。

また、稲葉さんは「誰でも行けるって大事です」とも話していました。今年企画しているツアーのなかには、経験者向けの長期コースだけでなく、初心者向けのコース、さらには歩かずに車で巡る企画もあるそうです。歩ける人だけの世界にしないこと。旅の入り口を少し広く開いておくこと。その姿勢もまた、いまのロングトレイルに通じる視点のひとつだと感じました。

子どもにとって、歩くことはもっと自然なこと

▲「歩く体験が育む子どもたちの可能性」国立中央青少年交流の家所長 藤原一成さん。

藤原一成さんの講演「歩く体験が育む 子どもたちの可能性」は、教育の話でありながら、大人にとっても大きな問いを投げかけるものでした。
藤原さんは、そもそも“体験”という言葉で特別なもののように括る以前に、子どもにとって歩くこと、動くことはもっと自然で、根本的な営みなのではないかと語ります。

人は感覚で世界を受け取り、筋肉を通してそれに応えていく。歩くことは発達の土台にあるものです。それなのに、今の子どもたちの暮らしのなかでは、自由に走ったり、ただ気持ちよく歩いたりする時間が少なくなっているのではないか。交流の家にやってきた子どもたちは、自然のなかに入ると数時間で走り出し、声を上げ、表情を変えていくそうです。

「近所の子どもたちといっしょに100mでも500mでも歩いてみる。そういうことなんだろうと思うんです」
この言葉は、ロングトレイルを遠い特別な世界の話にせず、まずは日々の暮らしの延長にあるものとして考えさせてくれました。

歩くことで、自分を真ん中に戻していく

パネルディスカッションで村田浩道さんが語ったのは、歩くことの精神的な側面でした。禅宗の僧侶でもある村田さんは、歩くことによって心と体がひとつに整っていく感覚について触れます。

「歩くということで、自分自身を真ん中に戻していく」
そんな表現がとても印象的でした。歩くことで景色が見えるだけではなく、自分のなかにある考えや感情も少しずつ整理されていく。ロングトレイルの魅力は、外側の風景だけではなく、歩くなかで内側にも変化が生まれることなのかもしれません。

稲葉さん、藤原さん、村田さんの言葉を通して見えてきたのは、歩くことが“成果”や“到達”のためだけにあるのではない、ということでした。歩くことそのもののなかに、人が人らしくあるための時間が含まれている。そんなことを、あらためて考えさせられる時間でした。

2)地域は歩く旅でどう変わるか

ロングトレイルは、歩く人のための道であると同時に、地域の側にも変化をもたらします。
「ロングトレイルと地域活性化」をテーマに登壇した松井督治・国東市長、熊野参詣道 伊勢路を紹介した大西かおりさん、そして中山道・木曽路を紹介した小嶋忍さんの発表からは、歩く旅が地域の風景や価値をどう変えていくのかが見えてきました。

地域の“当たり前”が、価値として見直されていく

大分県国東市の松井督治市長は、国東半島峯道ロングトレイルについて紹介しました。国東半島には、六郷満山文化を背景にした寺院や石造物、磨崖仏、奇岩、世界農業遺産の風景、さらに現代アートまでが点在しています。歩くことで、その土地に積み重なってきた時間の層に触れられるのが大きな魅力です。

▲「ロングトレイルと地域活性化」国東市長 松井督治さん

松井市長自身も、ロングトレイルの存在を深く知ったのはここ数年だと話していました。歩く人たちの姿を見て、地域の人自身が「自分たちの土地にはこんな価値があったのか」と気づき始めていることが、とても大きな変化だと語ります。

地元の人にとって当たり前だった風景が、歩く人のまなざしによってあらためて光り出す。ロングトレイルは、外から人を呼び込むだけでなく、地域の側が自分たちの足元を見直すきっかけにもなっているのです。

巡礼者を支えてきた文化が、いまも道に残っている

新規加盟トレイルとして紹介された熊野参詣道 伊勢路では、NPO法人大杉谷自然学校校長の大西かおりさんが、伊勢から熊野へと続く約200キロの巡礼路の魅力を語りました。

▲新規加盟トレイル「熊野参詣道伊勢路」NPO法人大杉谷自然学校 大西かおりさん。

伊勢路は、石畳や峠道の景観だけでなく、巡礼者を迎え、支えてきた街道沿いの人々の文化が今も感じられる道です。

大西さんは、熊野を「神話」や「祈り」といった大きな言葉だけで語るのではなく、実際に巡礼者を見守ってきた地域の社会や、道沿いに続いてきた思いやりの文化にこそ注目してほしいと伝えていました。地蔵や庚申塔、保存会の整備活動、小学生による体験学習。そうしたひとつひとつが、歩く旅を今に受け渡しているのだと感じます。

かつての歩く旅を、いまの形でひらいていく

「木曽路はすべて山の中である」という島崎藤村の一節で始まった、中山道・木曽路の紹介も印象的でした。木曽広域連合地域振興課の小嶋忍さんは、近年訪日客にも人気が高まっている木曽路について、一部の人気区間だけでなく、木曽路全体としてどう魅力を伝えていくかが重要だと語ります。

▲新規加盟トレイル「中山道木曽路」木曽広域連合地域振興課 小嶋 忍さん。

そのために進めているのが、安心安全に歩けるルートの調査や、GPSマップ、道標の整備です。さらに今後は、中山道だけでなく御嶽古道や飛騨街道ともつなげながら、より広がりのある歩く旅として育てていきたいと話していました。

地域が歩く旅でどう変わるか。
その答えは、観光客が増えるかどうかだけではありません。道が見直され、土地の記憶が掘り起こされ、そこで暮らす人たちの誇りが少しずつ育っていく。その変化こそが、ロングトレイルのもつ大きな力なのだと思います。

3)歩く人をどう迎え、どう増やすか

ロングトレイルが魅力的な道であっても、歩く人がそこへたどり着けなければ意味がありません。
この章では、株式会社ヤマップ アウトドア事業開発部 部長 大土洋史さんの話と、パネルディスカッションで語られたジャパン・トレイルの考え方、さらに保全の視点から、歩く人をどう迎え、どう増やしていくかを見ていきます。

歩き手が知りたいのは、まず“どう行くか”

大土さんは、「歩く人を増やすために 地域が考えるべきこと」というテーマで、登山者データや自治体との連携事例をもとに話しました。
コロナ禍を経て、登山者のあいだでは低山への関心が高まっているといいます。これは、多くの地域にとって新しい可能性でもあります。

その一方で、歩く人が本当に知りたい情報が十分に整っていない地域も少なくないそうです。大土さんが示したのは、登山者が知りたい情報の順番でした。
まず交通情報、その次に山の情報、最後に山麓の観光情報。
地域側は食や温泉などを先に伝えたくなりがちですが、歩く人にとっては「そこへどう行けるのか」が最初の関門です。この順番を間違えると、せっかく興味を持っても途中で離れてしまう。ごく基本的なことのようでいて、とても大切な視点だと感じました。

ロングトレイルは、長さそのものを押し出すことにも意味がある

大土さんは、ロングトレイルの見せ方についても興味深い話をしていました。短く区切って「歩きやすさ」だけを伝えるのではなく、まずは長い距離を歩く魅力をしっかり見せることが大切だというのです。

「歩く人を増やすために、地域が考えるべきこと」株式会社ヤマップ アウトドア事業開発部 部長 大土洋史さん。

たとえば数日かけてつないで歩く行程や、その途中にある補給ポイント、テント泊や野営の可能性などを見せることで、歩き手は「こんな旅ができるのか」と想像しやすくなります。
ロングトレイルらしさとは、ただ長いということではなく、長さがあるからこそ多様な歩き方ができること。その魅力をどう伝えるかが問われているのだと思います。

守ることもまた、歩く人を増やすことにつながっていく

もうひとつ印象的だったのが、保全の話です。多くの地域では、高齢化や予算不足によって、道を守る人もお金も減っているという現実があります。そんななかで大土さんが紹介したのは、保全活動を有償ツアー化する取り組みでした。参加者がお金を払い、1泊2日で道を整備する。その体験を通して、またその地域を訪れたいと思う人が増えているそうです。

ただ「整備を手伝ってください」と呼びかけるのではなく、達成感や余白のある設計にすることで、また来たくなる気持ちにつながる。守ることと、訪れること。そのふたつが自然に循環していく仕組みづくりは、これからますます重要になっていきそうです。

登山者に、ロングトレイルをどう手渡すか

パネルディスカッションで登壇した金井麻美さんは、日頃から登山者と接する立場から、登山とトレイルのあいだにまだ少し距離があることを指摘していました。
「『何々山に登りたい』というニーズはやはり強くあります。でも、登山とトレイルがちょっと乖離している部分がまだあるのかなと個人的には思っていて、自分はそれを同じものだとつなげていきたいと思っています」。
歩く人を増やしていくためには、新しい人に向けた発信と同時に、すでに山を歩いている人たちに、ロングトレイルという選択肢をどう届けていくかも重要なのだと感じました。

4)各地の道は、ひとつの線へ

このシンポジウム全体を通して見えてきたのは、各地のロングトレイルが、それぞれ独立した道であるだけでなく、少しずつ大きな線へとつながっていこうとしていることでした。
その中心にあるのが、約1万キロの「ジャパン・トレイル」構想です。

ジャパン・トレイルは、日本を体感するための道

パネルディスカッションで、日本ロングトレイル協会事務局長 安藤伸彌さんは、トレイルという言葉には、街なかの道も、里山も、海辺も、登山道も含まれると説明しました。そのうえで、日本におけるロングトレイルは、「豊かな自然のなかを歴史や文化を味わいながらたどる歩く旅の道」なのだと語ります。

▲左)日本山岳ガイド協会認定登山ガイド/IML認定ガイド 金井麻美さん。右)日本ロングトレイル協会事務局長 安藤伸彌さん。

ここで大切なのは、ジャパン・トレイルを“踏破しなければならない道”として捉えないことです。長い距離があるからこそ、少しだけ歩いてもいいし、何度かに分けてもいい。自分の歩幅で、その土地の自然や歴史、文化を体感できることに意味がある。
長い距離を歩くことそのものが目的なのではなく、歩く過程を楽しむための線なのだ、という整理はとてもわかりやすいものでした。

新たに加わる道が、線に厚みを与えていく

ジャパン・トレイルが目指しているのは、各地の道をただ一本につなぐことではなく、それぞれの地域に息づく自然、歴史、文化、人の営みを感じながら歩ける道として育てていくこと。歩く人が、自分の歩幅で日本の風景にふれていけること。日本ロングトレイル協会代表理事/安藤百福センターセンター長 中村達さんの講演からは、そんな構想の大きさと、その土台を各地のロングトレイルが支えていることが伝わってきました。

▲「JAPAN TRAILの現在地と次のステージ」日本ロングトレイル協会代表理事/安藤百福センターセンター長 中村達さん。

今回紹介された木曽路や伊勢路も、そうした大きな線に加わっていく存在。
木曽路は、古くから歩かれてきた中山道の文化を現代の歩く旅として捉え直し、伊勢路は、江戸時代から続く巡礼の道と街道沿いの文化を今に受け継いでいます。

それぞれの道には、それぞれの風景があり、歴史があり、歩く理由があります。各地の道がその個性を保ったままつながっていくからこそ、ジャパン・トレイルという構想は、単なる長距離ルートではなく、日本という土地そのものを感じるための線になっていくのだと思います。

5)歩く文化の次の10年

日本ロングトレイル協会設立10年の節目に開かれた今回のシンポジウムは、過去を振り返る場であると同時に、次の10年へ向かう視点を共有する場でもありました。

会場で繰り返し感じたのは、歩く文化がひとつの分野だけで育つものではない、ということです。個人の身体感覚、子どもの育ち、地域の歴史や誇り、情報発信、観光、保全、そして祈りや文化の継承。歩く旅は、それらを静かにつなぎ直していきます。

閉会のあいさつで、日本ロングトレイル協会会長の節田重節さんは、全国各地で少しずつ広がる取り組みや、保全にかかわるボランティアの存在について触れながら、こうした輪がさらに広がっていくことへの期待を語っていました。派手ではないけれど、確かな歩みです。

速さや効率が重視される時代だからこそ、自分の足で歩き、時間をかけて土地にふれることには、別の意味が宿ります。
歩くことは、生きること。
歩くことは、地域を知り直すこと。
歩くことは、次の世代に何かを手渡していくこと。

そんなことを、登壇者たちの言葉はそれぞれの角度から伝えてくれました。
歩く文化の次の10年は、きっとまだこれからです。
その道の先にどんな風景が待っているのか、まずは少し、自分の足で歩いてみたくなります。

 


写真がひらく、歩く旅の入口

シンポジウムでは、ジャパン・トレイル・フォトコンテストの表彰も行なわれました。2024年に初開催され、2025年は、500点もの応募が集まり、会場では両部門の最優秀賞受賞者が登壇しました。表彰と講評を務めたのは写真家の小川清美さん。

「トレイル上の絶景部門」の最優秀賞は佐藤直也さんの「森閃礼賛」、「トレイルでのスナップ部門」の最優秀賞は松本亜希子さんの「ゴキゲン黄金日和」。ロビーに展示された受賞作品を眺めていると、歩いた先で出会った光や風、そのときの気持ちまでが写っているように感じられました。

歩く旅の魅力は、実際にその道をたどってこそわかることも多いですが、一枚の写真がその入口をひらいてくれることもあります。まだ見ぬ道を思い浮かべながら、歩いてみたい気持ちがそっと動く。そんな時間も、この日のシンポジウムのひとつの風景でした。

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ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

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