
シンキチ醸造所/群馬県|山とクラフトビール〜ブルワーを訪ねて、特急で!〜
オガサワラガク
- 2026年05月14日
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下山後の一杯はどんな飲みものでもおいしい。とくにシュワっとする、地元ならではのクラフトビールは格別です。そんな特別なビールを作っているブルワーさんを訪ねて、そのおいしさ、魅力をちょっとだけ深く紹介します。
紹介してくれたのは

オーナー 堀澤宏之さん

シンキチ醸造所
住所:群馬県高崎市若松町2-11
餃子で満腹、観音山登頂断念の記録――それでもビールはうまかった
今回は私がかねてからうかがいたいと思っていた高崎の「シンキチ醸造所」へ。
その取材前日に山﨑さんから「明日、取材前に山登りますか?」というLINEが届いた。もちろんアウトドア雑誌の連載であり、「山登り後の一杯がおいしい!」という一言から生まれた企画なので、登ったほうが企画にも合っているのはわかっている。
ただ、その山登りのお誘いが取材前日に来るなんて。登山初心者にとって、山を登るというのはそれなりの覚悟と準備が必要であり、前日に誘われてもいろいろと間に合うはずがない。私は意志をもって、山﨑さんのLINEを「既読無視」した。
とはいえ、完全に無視するのも気が引けるので、当日は一応、山にも登れそうな格好で向かった。登る気はないが、登れないわけでもない。狡こう猾かつさと律儀さ。中間管理職を経験したサラリーマン時代があったからこそできる、社会人の処世術である。
まずは高崎駅に着いたあと、私が目星をつけていた町中華「久華」へ。
なんとこちらのお店は注文を受けてから皮を伸ばして包むスタイル。このスタイルのお店にハズレはない(餃子超人調べ)。やはり出てきた餃子はすばらしい逸品であった。皮はほんのり厚みあり、焼き上がると底はパリッと、上はもっちり。小麦の香りがしっかり感じられ、肉餡の甘味がなんともチャーミング。馬の鼻先にニンジンを吊るすように、この餃子が目の前にあったとしたら、私はどんな山でも登れるだろう。
腹ごしらえを終えると、山﨑さんの説得により観音山という低山の中腹にある清水寺まで行くことに。軽い散歩コースとしても知られている場所とのことだったが、実際に歩いてみると途中から石段が永遠に続いており、町中華で満腹になった体にはかなりの運動だった。クタクタになりながら清水寺に着くと、山﨑さんはその先の道をちらっと見ている。どうやら山頂まで行きたそうだったが、私は明確に拒否し、下山した。
いよいよ今日の目的地、シンキチ醸造所へ。シンキチ醸造所は三軒長屋の真ん中にある小さなブルワリーで、醸造所のとなりには酒場スペースが併設されており、醸造タンクを眺めながら飲むことができる夢のような空間が広がっていた。

話を聞かせてくれたのはオーナーの堀澤さん。そもそもは和食の板前で、現在はビールを仕込みながら、別で寿司とナチュラルワインを合わせる店も営んでいる。
ビール造りを始めた理由も、料理人らしい視点だった。「日本酒やワインには、料理と合わせることを前提に造られる酒がある。だがビールでは、和食を意識して造られているものはあまり見かけない。それなら、自分が造ってみよう」と。
ビール造りを続けるなかで、堀澤さんは「ビールは舌で飲む人より、ノドで飲む人のほうが多い」と気づいたという。それからは「ノドをとおったときに気持ちよく飲める一杯」を目指すようになった。
実際に飲んでみると、その言葉の意味がよくわかる。シンキチのビールは驚くほどクリーン。苦味も酸味も穏やかで、炭酸も優しい。吸い込むというより、体にすっと染み込んでいく。山を登り終えて腰を下ろしたときに飲みたい、まさに「大人のポカリスウェット」のようなビールだった。

堀澤さんは、ビールをこうしたいという大きな理想を掲げているわけではない。ただ「前よりも、少しでもおいしくすること」を目標にしているという。特別なことをするわけではない。ただ前回よりほんの少しでもいいビールを造る。その小さな更新の積み重ねが、いまの味を形作っている。
堀澤さんが少しでもおいしいビールを目指すように、私もこの連載を通して少しでも山登りが好きになれたらと思う。とはいえ、今日はもう清水寺までで十分だった。帰りの特急では泥のように寝て、東京へ帰った。
下山後の一杯は……

ごぼうのビール「大八木」
- 1,760円(税込)
- スタイル:ベジタブルエール
- アルコール度数:約5.0%
- サイズ:500㎖
高崎産のごぼうを使ったシンキチ醸造所の個性派。ひと口飲めば土の香りと旨みがふわりと広がる。苦味や炭酸は優しく、体へ自然に染みわたる飲み心地。料理と合わせ、カウンターでゆっくり味わいたい。
おすすめの山

観音山
近くにある観音山は、地元の人にとって身近な山。「私は中腹にある清水寺までここからゆっくりジョギングして、往復40分くらい。毎日の運動にちょうどいいです」と堀澤さん。さらに清水寺から観音山山頂まで徒歩で約50分。清水寺から眺める景色も十分によい。
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