
iRC・アスピーテプロスピードエッジ、坂で圧倒的な速さを誇る決戦用タイヤ

安井行生
- 2025年08月31日
iRCのハイエンド帯ロード用タイヤには、フォーミュラプロ(チューブレス)とアスピーテプロ(クリンチャー)の2つがある。アスピーテプロには、ベーシックモデルのRBCC、軽量モデルのSライトが用意されているが、2025年に追加されたのがスピードエッジ。ヒルクライムやTT向けの決戦用タイヤだ。
開発コンセプトは、転がり抵抗の徹底的な削減。転がり抵抗を減らすには、タイヤが転がる際に変形する素材の量を減らすことが必要で、それには接地面(トレッド面)を薄くしなければならない。そこでiRCはスピードエッジでSLRS(シンメトリカルローローリングレジスタンスストラクチャ)という構造を採用した。ケーシングの重ね方を変えたのである。
一般的なケーシング構造は、一枚のケーシングをビード部分で折り返して、タイヤのセンター部分(トレッド部分)で重ねている。よってケーシングはサイドウォール部で2枚、トレッド部が3枚とまる。それでは、トレッド部分が分厚くなってしまうことに加え、センター部分が左右非対称になってしまう。左右のケーシングが、どちらかが上でどちらかが下となってしまうためだ。これにより、タイヤに意図しないストレスがかかり、抵抗アップの原因になるという。
SLRSではケーシングを2枚使い、センター部分で重ねない作りとした。これによりセンター部(トレッド下部)のケーシングが2枚になり、薄くなって転がり抵抗が減る。左右対称となるので変なストレスもかからない。また、トレッドの厚みもSライト比で35%ほど薄くした。
その結果、転がり抵抗はフォーミュラプロ版でSライト比21%、RBCC比で12.7%減少。アスピーテプロではSライト比で30%も減少している。

ASPITE PRO SPEED EDGE
価格:11,000円(税込)
- サイズ(重量):700×25C(180g)、700×28C(200g)
試乗レビュー ライター安井行生✕TRYCLE田渕君幸
ここではサイクルショップTRYCLE田渕君幸代表とライター安井行生が試乗レビューをお届け。TRYCLE LODGE MIYAGASE 相模原市を拠点にツアー・オブ・ジャパン相模原ステージでも使われる宮ケ瀬湖周辺のアップダウンをコースで試し、その感じたところを対談形式でお伝えする。

田渕:このタイヤは個人的に気になったので、本格的な峠でしっかりと乗り込みました。これまでのiRCのタイヤはグリップが高く、雨天でも安心だけど、その反面転がり抵抗はイマイチというイメージがありましたが、これは面白いタイヤでしたね。ペダルのひと踏みひと踏みが軽くて、斜度がある坂での走りは他のタイヤに比べて圧倒的に速いです。
安井:同じ印象です。重量の軽さ、直進時の転がり抵抗の低さによって、登坂での走りは軽いですね。加速のかかりもいい。
田渕:そう。だからアタックにパッと反応するのは得意です。このタイヤの低い転がり抵抗が活きるのは、主に坂と低~中速域ですね。重量が軽いため、高速になると慣性が効きにくいので、リムハイトのあるホイールで巡航性を補ってあげるのもいいでしょうし、ローハイトの軽量ホイールにして坂に特化させるのも面白いと思います。一方で、コーナリング性能はそれほど印象に残りませんでした。だからロードレースというより、本当にヒルクライム決戦用ですね。特に緩急があるヒルクライムや、それほどコーナーがきつくない富士ヒルのようなコースにはいいでしょう。

安井:坂でのスピードを得るために、サイドグリップはある程度見切ったんだと思います。潔いコンセプトと設計であり、そのコンセプト通りの性能がきっちり出てます。
問:井上ゴム工業 https://ircbike.jp/
- BRAND :
- Bicycle Club
- CREDIT :
- 撮影:橋本謙司 協力:TRYCLE https://trycle.net
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