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隙のないオールラウンドホイール|ROVAL RAPIDE CLX III & SPRINT

今夏のツール・ド・フランスで、クライミングバイクが姿を消し、エアロロードバイクが山岳ステージでも主流になったことが話題になった。合計獲得標高52500mと、山岳比重の高かった今年のツールで軽量バイクが姿を消したことには、いくつか理由が考えられる。

まずはエアロロードバイクが軽量になってきたこと。重く平坦に特化したフレームではなく、クライミングバイクと兼用できるような、軽量なオールラウンドバイクが優れた空力を手に入れている。スペシャライズドのターマックSL8などはその最たる一台だ。

レムコ・エヴェネプールが今年のツール・ド・フランスで乗ったバイクにはRAPIDE CLX IIIが装着されている(photo: Yufta Omata)

もうひとつの理由としては、登りだけでなく下りや平坦路における空力性能が重要視されていること。平坦は流して、山岳に入ってレースが本格化するという従来のような展開は、ことツール・ド・フランスにおいては姿を消している。近年のツールでは、レースはスタート直後から全開で高速だ。たとえ集団内でやり過ごすにも、空力性能の優れたバイクの恩恵は計り知れない。

そして本稿で記しておきたいのは、このトレンドを影で支えているものがホイールの進化であるということだ。高リムハイトで空力に優れるホイールが軽量になったことが、エアロロードバイクのオールラウンド化に拍車をかけた。ゲームチェンジャーは、ホイールにある。

ROVALがツール前に満を持して発表したRAPIDE CLX IIIは、このトレンドをさらに推し進めるホイールだ。後輪よりも前輪のリムハイトを高くしたことで空力を向上させた、という過去の常識を一新するコピーは確かに目を惹くが、本質的なこのホイールの進化は、スペシャライズドがARRIS社と手を組んで開発したコンポジットスポークを採用した軽量化にある。前モデルから215gも軽量というのはただ事ではない。

が、前モデルのリムハイトがフロント51mm/リア60mmで、本モデルが51mm/48mmと低くなっていることに注意が必要だ。その分だけ軽量になって当然ではある。が、それでも200g以上の軽量化は小さくない。

RAPIDE CLX III フロントのリムハイトは51mm、リアは48mm。並べて見る分にはそこまで前後差は気にならない

このように、ROVALがオールラウンドホイールに与えたリムハイトが51mm/48mmである。3mm高い前輪のリムハイトだが、確かに目を凝らせば高く見えるものの、バイクに装着して見ればそこまで違和感を覚えるものではない。この前高リムによって、前作よりも全体的に低くなったリムハイトながら、スプリントのシミュレーションでは250mで5cm、150mで3cm先着するとブランドは主張している。

空力は前作より優れつつ、リムハイトの高さを抑え扱いやすくしつつ、大幅な軽量化を達成したとブランドは誇る。そんなにも理想的な進化はあるのかと訝しみたくなるが、実際にRAPIDE CLX IIIに乗ってみて、さもありなんと思うほどに、いいホイールであったことは認めなければならない。

バイクに進まされる感覚

まずその軽量さが印象に残る。50mmクラスリムのホイールだとは思えないほどに登坂で足が回る。乗鞍の20kmに及ぶロングクライムでの最後まで、その軽さの恩恵を受けた。前後で1305g、一昔前のクライミングホイール並の軽さだからそれも当然だが……。しかしもっと驚いたのが、山頂から畳平のバスターミナルまで緩斜面での下り。息も絶え絶えに登りきったため、足を止めていたのにスルスルとバイクが加速していく。標高が高いこともあるだろうが、「バイクに進まされる感覚」は、疲労困憊のタイミングだからこそより鮮明に刻まれた。

そして下り坂である。予想していたようにやはり下り始めから速い。乗鞍エコーラインは標高が下がるとタイトなコーナーが増え、また路面に雪国特有の大きなひび割れが散在しているが、挙動は安定していて、狙ったラインを外さずに下ることができた。やや路面から拾った振動が手に来る感覚があったのは、タイヤの空気圧セッティングをより追い込む必要があるということだろう。

さて、乗鞍という極端なロケーションで初乗りをしたRAPIDE CLX IIIだが、それだけでこのホイールをここまで気に入ったわけではない。借りたバイクもS-WORKS TARMAC SL8だったことも、評価の上振れを生みそうだ。そこで一度自宅に戻り、普段乗るバイクにこのホイールを装着してしばらく走ってみた。

丸パイプのバイクがエアロロードになる

バイクはAETHOS PRO、普段履いているホイールはROVALのALPINIST CL IIだ。ローハイト(前後33mm)ホイールのALPINISTはセカンドグレードのCL IIでも1360gと軽量だ。しかしRAPIDE CLX IIIはさらに50gほど軽いことになる。

やはりというか、登りでRAPIDE CLX IIIを履いてみると、普段のALPINISTよりも軽く感じられる。50gの重量差以上に、軽いのだ。リムハイトが高くなっているのに、という心理的な側面も否定できないが……。しかし勾配15%近い、クルクルと回せないペダリングでも軽さを感じ、3〜4%の緩斜面ではスピードの乗りがいつもと違う。軽量さと空力の恩恵を味わう。

特に20秒ほどの登りが連続するアップダウンでは、AETHOSがエアロロードバイクになったように感じられた。登り返しで減速しないから、気持ちよく踏んでしまう。その結果体力は早々に尽きたが、なぜこのホイールが高速域のロードレースにおけるスタンダードになりつつあるのか、納得がいく。隙のないオールラウンドさだ。

クライミングを想定して軽量なローハイトホイールで組んだAETHOSだが、RAPIDE CLX IIIを知ってしまうと、金額以外にこれを選ばない理由はないと思わされる。より軽く、より速くなるのだから。ツールでクライミングバイクが姿を消したのも、むべなるかなである。

登坂性能に好感触を得たRAPIDE CLX III

今年のツールでは、他ブランドもコンポジットスポークのプロトタイプホイールをテストしていた。軽量なホイールを作ることは、どのブランドにもできるだろうが、グランツールを走り、そして勝てるホイールとなると話は別だ。

そして安全性。ROVALはこのホイールにおいてタイヤ幅からわずかに外に張り出して見えるビードフック「FLATSPOT」を採用し、リム打ちパンクの低減とともに、フックド構造でタイヤ保持力の向上にも尽力している。UCI基準を超えた独自の安全基準テストを行っているという。

わずかにタイヤ幅よりも外に張り出すリム。「FLATSPOT」機構でリム打ちパンクのリスクを低減する

RAPIDE CLX IIIは現状、コンプライアンスとパフォーマンス、そして実績(ツール総合3位!)を兼ね備えた最先端のホイールだ。個人的にAETHOSは自分の走り方にあった最高のバイクだと思っているが、このホイールと合わせることで完成する、と思った。隙のないオールラウンドホイールは既存バイクのパフォーマンスも向上させてくれる。

RAPIDE CLX SPRINT

同時にリリースされたRAPIDE CLX SPRINTにも触れておこう。こちらはフロント63mm、リア58mmのディープリムバージョン。前作CLX IIからリムハイト総計は高くなっているが、それでも125gの軽量化を果たし、1395g。このリムハイトでは十二分に軽量なホイールだ。

アウターで走り切れる登りしかない「平坦」コースや、サーキットレースなど高速巡航とスプリントが鍵を握るコースではこのホイールの出番となる。ツールでも看板スプリンターのティム・メルリール(スーダル・クイックステップ)がこのホイールでステージ2勝を飾っている。

踏み出しはやや重さを感じるものの、一度巡航に入ってからの速度維持力はRAPIDE CLX IIIよりも高い。スプリントの伸びも空気の層に押し出されるように伸びる感覚があるが、やはりパワーのあるライダー向きだろう。非力軽量級の筆者は正直なところこのホイールを活かしきれなかった。が、シマノ鈴鹿のようなコースでは使ってみたいとも思う。TTも含め、活躍してくれそうだ。

RAPIDE CLX SPRINT フロントのリムハイトは63mm、リアは58mm
これまでのステンレス製スポークからコンポジットスポークに変更したことで、1本約2gの軽量化に成功。総計では96.6gもの重量減だという
スポークヘッドはチタン製。ハブはDT Swiss 180EXPだ

RAPIDE CLX III

価格:484,000円(前後セット/税込
用途:ロードレースおよびライド
重量:1,305g
ハブ:DT Swiss 180 EXPインターナル、36T、XDRフリーハブ(SHIMANO ROAD11速HGフリーハブが付属)
リムハイト:フロント51mm、リア48mm
スポーク:フロント18本 リア24本、カーボン
タイヤサイズ:28mm幅で最適化

製品詳細はこちら

RAPIDE CLX SPRINT

価格:484,000円(前後セット/税込
用途:ロードレース
重量:1,395g
ハブ:DT Swiss 180 EXPインターナル、36T、XDRフリーハブ(SHIMANO ROAD11速HGフリーハブが付属)
リムハイト:フロント63mm、リア58mm
スポーク:フロント18本 リア24本、カーボン
タイヤサイズ:28mm幅で最適化

製品詳細はこちら

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PROFILE

小俣 雄風太

小俣 雄風太

アウトドアスポーツメディアの編集長を経てフリーランスへ。その土地の風土を体感できる方法として釣りと自転車の可能性に魅せられ、現在「バイク&フィッシュ」のジャーナルメディアを製作中。@yufta

小俣 雄風太の記事一覧

アウトドアスポーツメディアの編集長を経てフリーランスへ。その土地の風土を体感できる方法として釣りと自転車の可能性に魅せられ、現在「バイク&フィッシュ」のジャーナルメディアを製作中。@yufta

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