
練馬の自転車店で40年ぶら下がっていたランドナー|【西山自転車商会EX】ガチランドナーで行く旅〈前編〉

ニシヤマ
- 2025年10月23日
自転車はスポーツではなくホビーと言い張るいじってなんぼのレストア編集者の手記
◉編集部・西山 貴之
MTBが隆盛する直前に自転車にハマった最後のランドナー世代。バイシクルクラブにありながらもランドナー推し活を続けて20年。老後は、ランドナーに乗って日本中を徘徊する予定。
最終的に一台選ぶならやっぱりランドナー
数多くの自転車遍歴あるが、一番長く乗ってる、かつ旅した自転車は、このランドナーだ。ムックや本誌にも度々登場している。

20年ほど前、東京・練馬の町自転車屋さんにホコリとヤニにまみれてぶら下がっているのを発見。交渉して4万円で買い取った。店主も「今日は、もう店閉めてビール飲もう~」と上機嫌だったので、ウィンウィンだったと思う。
付いているパーツから推測すると70年代後期のものと思われる。いわゆる店の吊るしフレームというやつで、製作は名もなき下請けフレーム工房だ。
このページにあるランドナーは、この吊るしフレームを元に、現行で入手できるパーツをフル活用して作るという企画で作ったランドナーだ。今でも似たようなアッセンブルでランドナーを組んで楽しむことができる。
ランドナーはフランスから上陸してガラパゴス的に日本で発展した。欧風だけど和式。これで、ブラブラと走っているのが自分に最も合っている。いろんな車種に乗りたいけど、一台にしろと言われればランドナーを選ぶと思う。


今、再びのユーレー・アルビー
けっこう持ってるアルビー。キャンピング車に使いたいなーとか、メスティンに入れてイメージ撮影して夢想したり。
グーグル検索するとアルビーについて書いた過去のこのコラムが割と上位に出てくる。でも使ったネタがないのは、装着を断念していたからだ。どれも実は、運用に必要なピースが足らないほか、いろいろ問題をクリアしなくてはならない
クセのあるフレンチパーツ、動かしずらいリアメカ
近頃は、アメリカから逆輸入される形で、ネオランドナーとして再評価されている。
しかし今、熱いのは(自分の中で)旧態依然としたランドナー化。秋のツーリング&キャンプは、今だからこその「ガチランドナー」で行きたいと思っている。
きっかけは、サイクルモードのフリマコーナーで見つけたユーレー・アルビーという古びたリアメカだ。フランス製のツーリング用変速機としては、代表的な機種だ。
アルビーは1959年から83年まで作られ続けた、息の長かったリアメカだ。ただしフレンチ規格のこのメカは日本規格のフレームといろいろ相性が悪く、自分は何度か挫折した経験がある。
その昔、フランスの変速機メーカーは、サンプレとユーレーがあったが、ユーレーはわりとそういうことが多く、スムーズに動くサンプレを好む日本人が多かったと思う。自分もサンプレ派だった。
ただ、変速機マニアのランドナー乗りとしては、アルビーをいつか動かしたいという想いが強く、思わず手にしてしまったわけだ。
入手したのは、最終型に近いやつ。アルビーは5段が限界といわれているが「最終型は6段でも動く」と伝説みたいな話があり、それも実証してみたい。それにしても、自分はリア13速という時代に何をしているんだろうか?

【1】変速機データブックの個体
P-24に出てくるセーフティーモデルだ。データブックを編纂したカンビオ工房ジャンさんのフリマで買ったので、このページの個体と考えて良さそうだ。
カンビオ工房
https://ameblo.jp/cambiokoubou/


【2】カッコ悪いケージを交換
カンパエンド対応の3次型メカが完成。仕上げなどいろいろ簡素にはなっているけど、機構的には改良を重ねた最終型。


【3】シマノエンドに付いたけど……
問題は、トップ側にメカの可動域がぜんぜん達してないこと。これがアルビーがトップに落ちないというゆえんだ。以前もこれで断念した。エンド取り付けボルトにワッシャーをかましてメカを外側に出してみたものの、まだ足りない。
【4】チェーンラインを変更!
チェーンラインを変えるべく、ハブアクスルをエンド幅120mm用から126mmに変更。ボスフリーの位置がより内側になるようにする。エンドには6mmぐいっと広げて入れることになるが、フリーが5段から6段になった時によく行われたこと

【5】チャイナボスフリー6段
元は幅27mmという狭いフランス製マイヨールのフリーを使ってユーレー・チャレンジャーを何とか運用。中国製NEW・SHIMENG(幅は33mm)に変更。

ランドナーに使えるチャイナパーツ
ときおりオヤッと思わせるものが登場する中国のクラシカル風パーツ。使えそうなパーツを見つけては、ランドナーに組み込むのもマイランドナーのテーマだ。以前は、アリエクスプレスなどを使っていたが、最近はアマゾンでも手軽に入手できる。驚くほど安いが、だいたいがそれなりの粗雑な仕上げ。ただ鋳物感のあるパーツなど、違和感なくヴィンテージパーツに合うものもあってリピ買いしているアイテムも。



たかがアルビーにそこまでする!?
アルビー伝説の6段変速への道
フランスと日本のチェーンラインの規格の違いで、ユーレー全般、特にアルビーはトップギヤに落ちないと言われている。なので、ホイールを組み直し、アルビーの動きに合わせてフリーの位置を調整。メカの駆動域をフル活用する作戦だ。何とめんどくさいメカだ。
そして中国製の古典的6段ボスフリーをインストール。こういう廉価な補修パーツが、アマゾンで手軽に入手できるようになったので、ランドナーのクラシカル運用は格段にハードルが下がった。
フリーの幅は、6段のサンツアー・パーフェクトと同じ。歯は、チェーンの移動をサポートするような加工は一切なしの古典ボスフリーだ。動かしてみると6段をスムーズに変速した(といってもガラガラガチャンという感じだが、これが本来の性能)。
アルビー6段シフトは地味にスゴい!
独特なパンタグラフの動き! スラントパンタ以前に、フリーの歯に沿って斜めに動く機構を実現していたのだ。


アルビー最終型は6段ギアを変速できるということが実証された。ガラガラと変速音をこだまさせ、峠を上るぜ! 次回「ランドナーアクセサリーオーガニック大作戦」に続く。
※この記事はBicycle Club[2025年8月号 No.462]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
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