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Astemo宇都宮ブリッツェン、小野寺玲が涙の引退。難病と戦い、古巣で挑んだ最後の挑戦

栃木県宇都宮市を拠点とするプロサイクルロードレースチーム「Astemo宇都宮ブリッツェン」は10月17日、チームの功労者であり、ファンから“オノデライダー”の愛称で絶大な人気を誇ってきた小野寺玲が、今シーズンをもって現役を引退することを発表した。国の指定難病である再生不良性貧血と闘い、今シーズン、選手生活の原点ともいえる古巣で再起を期した末の苦渋の決断。また、チームは同時に、ルーベン・アコスタ、花田聖誠の2名も今シーズン限りで退団することを発表した。

栃木で育ち、愛された“オノデライダー”の軌跡と突然の病

栃木県鹿沼市出身。小野寺の12年間にわたるプロキャリアは、常に栃木と共にあった。2014年、同じく栃木県を拠点とする「那須ブラーゼン」でプロデビュー。2年間の活動を経て、2016年に「宇都宮ブリッツェン」へ移籍すると、その才能は大きく開花。チームの中心選手として数々の勝利に貢献し、“オノデライダー”の愛称で多くのファンに親しまれてきた。

順風満帆に見えたキャリアは、2024年に大きな転機を迎える。新天地を求め「ヴィクトワール広島」へ移籍。しかし、そのシーズンの後半、彼の身体を病魔が襲う。国の指定難病でもある再生不良性貧血の発症だった。血液を正常に作ることができなくなるこの病は、持久力が生命線であるプロアスリートにとって、あまりにも過酷な宣告だった。

「宝物のような12年」— 古巣復帰と、叶わなかった復活

病と闘いながらも、小野寺は再びレースの最前線に戻ることを諦めなかった。2025年、選手としてのキャリアを花開かせた古巣・宇都宮ブリッツェンに復帰。ファンが待ち望んだこの復帰は、彼にとって最後の望みをかけた挑戦だった。

しかし、懸命な治療とトレーニングにもかかわらず、病状は思うように回復せず、「今のままでは普通の生活すら満足にできない状況」だったという。発表されたコメントで、小野寺はアスリートとしての、そして一人の人間としての、赤裸々で痛切な胸の内を明かした。

「本当はまだ走りたい。走ればまた勝てる。レースシーズンを駆け抜けたい。その気持ちはありました。」

しかし、無情にも現実はそれを許さなかった。結果を追い求める日本トップチームとの契約交渉が困難であるという現実。そして、何よりも辛かったのは、自身の内面との闘いだった。

「今年のチームを輪の外から見ていて、羨ましくもあり、悔しくもあり。そして、チームに自分が選手としての価値が無いと判断されることも辛かったし、なにより自分がそれを一番分かっていて、活躍して順風満帆に過ごしているチームメイト達を、妬むような目で見てしまう自分がもっと辛いし嫌でした。」

それでも、彼の心を支え続けたのは、ファンの温かい声援だった。「僕の復活を信じて応援し続けてくれたファンの皆様がいました。その声に励まされ、復活への光を見つけたいと、夏の鈴鹿に出走しました。」一縷の望みをかけて挑んだレース。しかし、そこで目の当たりにしたのは、甘くない現実だった。

「復活を信じて応援し続け、待っていてくれたファンの皆様には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。」ファンへの謝罪の言葉を何度も繰り返しながらも、彼は12年間の選手生活を「宝物のような12年だった」と振り返る。
「選手として理想としていた引退はできませんでした。思い残すこと、悔いもたくさん残りました。それでも、選手として駆け抜けた日々、その日々の中で出会った人達、応援し続けてくれたファンの皆様、全てがかけがえのないものになりました。」

悲痛な決断の裏側で、彼が最後に紡いだのは、自らを支え続けてくれたすべての人々への、深く、誠実な感謝の言葉だった。

チームを去る二人の選手、それぞれの感謝と想い

同時に、チームの戦力として2年間活躍してきた花田聖誠とルーベン・アコスタの退団も発表された。

「知ってるよ、と言われても、この響きが大好きなので、あと数回だけ言わせてください。Astemo宇都宮ブリッツェンの花⽥聖誠です。」そう切り出した花田らしいコメントは、彼がどれほど「Astemo宇都宮ブリッツェン」というチームの一員であることを誇りに思っていたかを物語る。「こんなに早くこのチームを離れるとは思っていませんでした」と名残惜しさを滲ませつつ、「栃木で出会えたすべての⽅へ。たくさんの出会いと経験を、本気で誇りに思っています」と、2年間を過ごした土地と人々への感謝を述べた。

コロンビア出身のルーベン・アコスタもまた、日本での2年間の経験を振り返り、「新しいトレーニング方法を学び、とても貴重な経験をすることができました。共に過ごした時間は、自分にとって大きな学びと成長の時間になりました」とコメント。「日本のサイクリングを象徴するような努力と情熱」への尊敬の念を示し、チームメイトとファンへの感謝で締めくくった。

Astemo宇都宮ブリッツェンは、2026年の新体制について、12月中旬頃に発表する予定だとしている。チームの顔であり、魂であった小野寺玲の引退。そして、チームに新風を吹き込んだ二人の選手の退団。一つの時代の終わりを迎え、ブリッツェンは大きな変革の時を迎える。しかし、彼らが残した情熱と感謝の想いは、きっと次の世代へと受け継がれていくだろう。

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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