
世界のトップ選手が宇都宮に集結、感動と別れに包まれたジャパンカップチームプレゼンテーション

せいちゃん
- 2025年10月18日
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10月17日、日本のサイクルロードレースシーズンを締めくくる「SUBARU LAYBACK presents 2025宇都宮ジャパンカップサイクルロードレース」のチームプレゼンテーションが、栃木県宇都宮市のオリオンスクエアで開催された。会場には世界トップクラスの選手たちが顔を揃え、華やかな雰囲気のなか、週末の激戦を前にした熱気と、複数のベテラン選手による感動的な引退発表が交差する夜となった。
今年で32回目を迎える今大会には、海外からUCIワールドチーム6チームを含む11チーム、国内からは7つのコンチネンタルチームや日本ナショナルチームなど9チーム(1チームはクリテリウムのみ)、合計20チームが参戦する。
スター選手たちが語る抱負と宇都宮への思い

プレゼンテーションには、今年のツール・ド・フランスでポイント賞(マイヨ・ヴェール)を獲得したジョナタン・ミラン(リドル・トレック、イタリア)や、グランツールで複数回のステージ優勝経験を持つサイモン・クラーク(イスラエル・プレミアテック、オーストラリア)など、世界的なスター選手が登壇した。

ミランは、「長いシーズンの後だが、コンディションは良い。ベストを尽くしたい」と力強く語った。一方、2026年1月のツアー・ダウンアンダーで引退予定のクラークは「キャリアの中でオーストラリア国外で走る最後のレースになる。この大会に来ることをチームにリクエストした」と明かし、プロ入り前のコンチネンタルチーム時代に優勝経験のある日本でのレースへの特別な思いを語った。

昨年大会で優勝したニールソン・パウレス(アメリカ)が所属するEFエデュケーション・イージーポストや、若きスター選手レニー・マルティネス(フランス)を擁するバーレーン・ヴィクトリアスなど、強豪チームがずらりと並び、週末のレースへの期待感を高めた。

感動を呼んだベテランたちの引退発表

この夜のハイライトの一つは、複数の選手による現役引退の発表だった。特に会場を感動で包んだのは、地元チーム「Astemo宇都宮ブリッツェン」の小野寺玲の引退表明だった。小野寺は、病気からの復帰を支えてくれたファンへの感謝を述べ、「期待に応えられず申し訳ないという気持ちよりも、これまでの感謝の言葉を伝えたい」と語り、チームメイトの岡篤志とステージに上がった妻から花束を受け取った。


また、シマノレーシングの野寺秀徳監督は、チームの主力である入部正太朗と冨尾大地がSNSで引退を発表したことを前夜に知り、「眠れなかった」とユーモアを交えて語り、2人のための勝利を誓った。

さらに、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニのクリスティアン・ズバラーリ(イタリア)とダヴィデ・バルダッチーニ(イタリア)も今大会での引退を表明し、チームリーダーの新城幸也がイタリア語で「幸運を祈る」を意味する「イン・ボッカ・アル・ルーポ!」とエールを送り、会場全体で2人の門出を祝いました。


日本の期待を背負う地元勢と若き才能

地元ファンの大きな声援を受けたのは、やはりAstemo宇都宮ブリッツェンだった。岡篤志キャプテンは、最近の体調不良から回復し、この重要な地元レースに臨む決意を語った。 また、UCIワールドチームで活躍する留目夕陽(EFエデュケーション・イージーポスト)も凱旋出場を果たし、「チームと一緒に走るのが楽しみ」とコメントした。

さらに、今シーズン好調のヴィクトワール広島や、将来が期待される若手選手を中心に構成された日本ナショナルチームなども紹介され、日本の自転車界の未来を担う選手たちに温かい拍手が送られた。


32年目の伝統と地域に根差した情熱
宇都宮市の佐藤栄一市長は、1992年に始まった大会の歴史を振り返り、「多くの皆様に支えられてきた大会です」と感謝を述べた。今大会では、高校生を対象とした「ホープフル クリテリウム」や新たに女子選手による「ウィメンズクリテリウム」が開催されることも発表された。
また、Astemo宇都宮ブリッツェンの選手たちによる観戦マナーを呼びかける映像も上映され、コースに体を乗り出さない、ゴミは持ち帰るなど、安全でクリーンな大会運営への協力が求められた。
スター選手たちの野心、引退するベテランたちの最後の走り、そして日本の若き才能の挑戦。様々な思いが交錯する宇都宮で、集団スプリント勝負もしくは小集団での逃げ切りが予想される土曜日のクリテリウム、そして過酷な山岳コースが待ち受ける日曜日のロードレースへの期待は、最高潮に達している。
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- CREDIT :
- 編集:バイシクルクラブ編集部 文:相原晴一朗 写真:三井至
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PROFILE

稲城FIETSクラスアクト所属のJプロツアーレーサー。レースを走る傍ら、国内外のレースや選手情報などを追っている。愛称は「せいちゃん」のほか「セイペディア」と呼ばれている