
ウィリエール Filante SLR ID2発表 エアロ性能を突き詰めたTTバイク譲りの意欲作|Wilier Triestina
Bicycle Club編集部
- 2025年10月24日
イタリアの老舗ブランド、Wilier Triestina(ウィリエール・トリエスティーナ)が、同社のフラッグシップエアロロード「Filante SLR」をフルモデルチェンジし、第2世代となる「Filante SLR ID2」を発表した。マーク・カヴェンディッシュのツール・ド・フランス通算35勝という歴史的記録を支えた初代の優れた軽量性と剛性は維持しつつ、TTバイク「Supersonica SLR」で培った知見を惜しみなく投入し、エアロダイナミクスを徹底的に追求。風洞実験では、バイク単体で従来比-13.6%という驚異的な空気抵抗削減を達成した、次世代のレースバイクだ。
すべては「速さ」のために — エアロダイナミクスへの完全なる傾倒

初代Filante SLRは、軽量性と高い剛性によってトッププロから高い評価を得て、あらゆるコースプロファイルに対応できるオールラウンドなエアロロードとしての地位を確立していた。7kgを切る軽さを実現しながら、スプリンターのパワーをも受け止める剛性を備えていた。
しかし、ウィリエールの開発陣は「軽さと剛性は既にトッププロの要求に必要十分なレベルに達していた」と判断。UCIレギュレーションの変更を好機と捉え、第2世代の開発では、”エアロダイナミクス”という一点に、その情熱とリソースを集中させた。


その開発プロセスは凄まじい。TTバイク「Supersonica SLR」で得た知見を活かし、初代の実に3倍にも及ぶ膨大なCFD(数値流体力学)シミュレーションを実施。フレームのあらゆるチューブ形状、そしてフォーク、ハンドルといった各コンポーネントに至るまで、徹底的にブラッシュアップを重ねた。

その成果は、イギリス・シルバーストーンの風洞実験施設で、シミュレーションの予測を上回る結果となって現れた。バイク単体では、CFDの推定値(-12%)を上回る-13.6%の空気抵抗削減を達成。さらに、ウィリエールが重視する、ライダーが乗車した状態での実走環境においても、-4.5%の空気抵抗削減を実現した。

この数値をワットに換算すると、40km/h走行時に14.15ワットものパワーセーブに相当する。70kmのレースであれば、約1分45秒ものタイム短縮につながるという、レースの勝敗を文字通り左右する決定的なアドバンテージだ。ワールドツアーで使用されている主要競合5社のトップモデルとの比較でも、平均CDA(空気抵抗係数)で2.42%優れているという結果が出ている。
フレームに完全統合された「Aerokit」と、グルパマ・FDJと共同開発した新型ハンドル「F-Bar ID2」

この圧倒的なエアロ性能向上の核心をなすのが、フレームと一体化した専用のエアロボトル&ケージ「Aerokit」だ。ウィリエールと、ハイドレーションシステムの世界的リーダーであるElite社が共同開発したこのシステムは、ダウンチューブとシートチューブに装着され、フレームの一部として機能。ボトル周辺の気流を整える“アレッタ(フィン)”のような役割を果たし、乱気流の発生を劇的に抑制する。CFD解析では、従来の丸ボトルと比較して、空気抵抗を実に3分の2以上も削減するという結果が出ている。


レース中の補給で一般的な丸ボトルを使用する状況も想定されており、専用ケージが一定の整流効果を発揮するよう、その形状まで計算され尽くしている。

コックピットには、ワールドツアーチーム、グルパマ・FDJとの共同開発で生まれた新型のステム一体型エアロハンドル「F-Bar ID2」を採用。ブラケット部がドロップ部よりも3cm狭い「O.E.F. (Optimized Ergonomic Flare)」コンセプトを取り入れ、エアロポジションの維持と、下ハンドルを握った際のコントロール性を両立。ステムの固定ボルトを完全に隠す、ウィリエール初となるエアロカバーも採用し、細部までエアロを突き詰めている。

TTバイク譲りのディテールと、現代のレースシーンへの最適化

新型Filante SLR ID2には、TTバイク「Supersonica SLR」から受け継いだ、エアロダイナミクスへの執念とも言えるディテールが随所に見て取れる。

ボリュームアップし、空力性能を高めたスーパーエアロフォークは、ブレーキキャリパー周辺にTTバイク譲りのエアロフィン形状を採用し、キャリパーが生む乱気流を抑制。さらに、右側のスルーアクスル貫通穴をなくすことで、よりクリーンな外観とエアロ効果を追求している。

また、現代のレースシーンへの最適化も徹底されている。リアディレイラーハンガーは、整備性と将来性を見据えUDH規格に対応。タイヤクリアランスは、近年のトレンドであるワイド化に対応し、最大34mmまで拡大された。これにより、荒れた路面への対応力と快適性が向上し、リアのホイールベースがわずかに延長されたことで、直進安定性も高まっている。

さらに、シマノDi2バッテリーの搭載位置を、従来のシートポスト内部からBB後部へと移設。これは、より薄くエアロになったシートポストの形状によるものだが、結果として低重心化によるハンドリングの安定性向上と、飛行機輪行やトラブル時のメンテナンス性向上という、副次的なメリットももたらした。
Wilier Triestina Filante SLR ID2
価格:
フレームセット: 1,045,000円(税込、F-Bar ID2、専用エアロボトル&ケージ付属)
完成車:
アルテグラDi2 / MICHE クレオスRD50:1,727,000円(税込)
デュラエースDi2 / MICHE クレオスRD50:1,936,000円(税込)
スーパーレコード13s / MICHE クレオスRD50:2,640,000円(税込、受注発注)





- カラー:グロスカーボン、グレー、ホワイト(アップチャージ)、パールブロンズ(アップチャージ)、ロイヤルブルー(アップチャージ)
- ロゴデザイン:ミニマル、レーシングの2種類
- タイヤクリアランス:最大34mm
- ディレイラーハンガー:UDH
マーク・カヴェンディッシュの歴史的偉業を支えた名車が、エアロダイナミクスという新たな、そして最強の武器を手に、さらなる高みへと進化した。Filante SLR ID2は、スピードを求める全てのレーサーにとって、新たなベンチマークとなることは間違いないだろう。
問:服部産業 https://wilier-jpn.com/
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