
雨の吉野川で熱く語り合った! 「Setouchi Vélo協議会 吉野川ミーティング」が徳島県で初開催
Bicycle Club編集部
- 2026年03月25日
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2026年2月25日(水)、徳島県吉野川市の日本フネン市民プラザにおいて、「Setouchi Vélo(セトウチヴェロ)協議会 吉野川ミーティング」が開催された。瀬戸内周辺地域を世界に誇るサイクリング推進エリアへ育てることを目的とする同協議会だが、徳島県内で市町村ミーティングが開催されるのは今回が初めて。当日は雨天のため予定されていたライドがバス視察へと変更されたものの、行政・民間・学術の垣根を越えた活発な議論が交わされた。その模様をレポートする。
雨の吉野川と「お遍路文化」、そして心温まる「そば米汁」

午前中に予定されていた吉野川沿いのライドは、鴨島公民館駐車場から江川・鴨島公園までの約12.2kmを走る予定だったが、あいにくの雨のためバスツアーへ変更された。それでも車窓からは、吉野川市ならではのサイクリング楽しめる環境が十分に感じられた。

ハイライトは潜水橋で、日本最大の川中島である善入寺島周辺の吉野川に6本の潜水橋がかかる。 増水時に水面下に沈む構造のため欄干を持たない潜水橋は、自転車で走れば水面を滑るようなスリルを味わえる絶好のロケーションだ。
また、第8番札所・熊谷寺などを訪れ、四国特有のお遍路の「お接待」文化がサイクリストを温かく迎え入れる土壌として機能していることも実感できた。


そしてエイドステーションでは、地元の「トコデリキッチン」が調理した郷土料理「そば米汁」が振る舞われた。地元で採れた野菜がたっぷり入った温かいスープが、冷えた参加者の体を優しく温めてくれた。

「自転車まちづくり」へ懸ける想い(ミーティング冒頭挨拶)

午後からのミーティングでは、まず開催地を代表して吉野川市の原井敬市長が登壇。市のキャラクター「ヨッピー・ピッピー」が自転車で山を登る手作りの帽子を被って登場し、「自転車の利活用を進めてまだ1年余りだが、今回のミーティングでさまざまな知見を得て今後の戦略に生かしたい」と語り、熱意を示した。
続いて、本州四国連絡高速道路の森田真弘取締役常務執行役員(Setouchi Vélo協議会事務局)が挨拶。「徳島県内で初のミーティング開催。加盟団体はこの3年で89団体まで広がり、島根県の参加によって中国・四国全域を網羅した」と協議会の発展を報告するとともに、安全啓発活動「シェア・ザ・ロード」への協力を呼びかけた。

産官学で進む、環境整備とフルアテンドツアー(開催地発表)

続く開催地発表では、行政、民間、大学それぞれの取り組みが紹介された。
まず、吉野川市産業経済部商工観光課の原井慎司課長補佐から、市が進める環境整備について報告があった。市の木材を活用したサイクルスタンドの設置や、市内店舗を「おもてなしスポット」として年間10件程度登録していく制度の開始など、受け入れ体制の整備が着実に進められている。
また、鴨島駅を中心としたレンタサイクル事業の実証実験(2025年度は5カ月間で5台を運用)を行い、今後の運用について検討していることや、職員自らがガイド養成講座を受講していることも紹介された。
さらに、昨年10月に第1回を開催した「Mt.高越ヒルクライム2025」では、悪天候ながら130人が参加。今年も9月に開催を予定しているという。

続いて、徳島大学総合科学部副学部長の矢部拓也教授は、マスツーリズムによるオーバーツーリズムを避け、ニッチな客層に特別な体験を提供する「フルアテンドツアー」こそが地域経済を循環させると学術的視点から解説した。
民間からは、眞鍋商会の眞鍋裕樹代表取締役が登壇。自転車業界の要人を招いた「ミニベロアドベンチャーツーリズムサミット」から、オリジナル自転車ブランド立ち上げに至る産業創出の軌跡を紹介した。


「吉野川市の自転車活用について」識者たちが語った“勝ち筋”

プログラムの最後には、「吉野川市の自転車活用について(自転車を活用して吉野川市のにぎわいをつくることについて)」をテーマにパネルディスカッションが行われた。
コーディネーターを務めたのは、コイデルの門田基志代表取締役。パネリストには、吉野川市の原井敬市長、眞鍋商会の眞鍋裕樹代表取締役、徳島大学総合科学部副学部長の矢部拓也教授、一般社団法人イーストとくしま観光推進機構の渡辺隆仁専務理事、サイクルスポーツ編集部の迫田賢一 統括編集長、バイシクルクラブ編集部の東宏祐マネージャーが登壇し、それぞれの立場から吉野川市における自転車活用の可能性について意見を交わした。
コーディネーターの門田代表は「過去一濃いメンバーの議論をまとめていきたい」と語り、ディスカッションは冒頭から白熱した展開となった。
吉野川市はターゲットを主に市外(県外、インバウンドなど)に定め、大鳴門橋自転車道からの流入だけでなく、高松方面など多方面からの誘客を狙っている。ここで重要となるのが、「来る人の量より、ニッチでも質の高い人に来てほしい」というスタンスだ。
この方針に対し、矢部教授は「マスツーリズムではなく、自分が来てほしい人に向けてカスタマイズする少人数のフルアテンドツアーが重要。一般的な解はない」と、ターゲット設定の重要性を強調した。
また、眞鍋代表も「ターゲットを絞り込み、“この人に来てもらう”という強い意志でツアーを組む。付加価値を高め、産業として継続させていくことが大切」と同調した。

ヒルクライムとポタリング、潜水橋の風景の可能性

レースの認知度向上について、迫田統括編集長は「ヒルクライム大国において、練習に訪れる層を取り込むことが経済効果を生む」と指摘。眞鍋代表も「ヒルクライムレースをきっかけに高越山で練習する人が増えれば、それが新たな芽を育てる循環になる」と語った。

一方、ポタリングについては東マネージャーが「潜水橋は、そこで写真を撮るだけでも価値がある」とコメント。地域が本来持つ景観の魅力を再定義し、発信していく重要性を指摘した。

また、インバウンドやポタリング客の受け入れに欠かせない「ガイド育成」について、渡辺専務理事は「まずはBtoB(旅行会社など)でプロの目線を満たし、評価を高めてからBtoCへ広げていく順序が良い」と実践的な提言を行った。
ここで門田代表も「自転車はスポーツであり、命を守るためのプロの技能が必要」とガイドの重要性を強調。そのうえで「ガイドや環境整備は『お客さんが来るから行う』という前提で進めるべき」と語り、ターゲット設定の重要性を改めて示した。
これに対し眞鍋代表は、自身のツアーで実際の住職がサポートに入っている事例を紹介。「長年かけて信頼できるパートナー(ガイド補佐)が地域に育つことで、さまざまな展開が生まれる」と、独自の人材育成の可能性を示した。

最後に矢部教授は「地方自治体の取り組みにおいて最大の強みは担当者。吉野川市は担当者が主体的に動いており、その姿勢こそ重要」と行政の姿勢を高く評価。
門田代表は「吉野川市の自転車活用はまだ始まったばかり。Setouchi Véloの他自治体の成功・失敗例を吸収し、最短距離で進める可能性を秘めている」とエールを送り、ディスカッションは締めくくられた。
【原井市長コメント】日常に自転車が溶け込むまちへ

原井市長は「外から見た方々の意見は本当に大事。中からでは見えていない吉野川市の魅力を再発見できた」と語る。
吉野川市の魅力については「吉野川の壮大な風景や善入寺島の季節の花々、そして潜水橋を自転車で走り抜ける光景は非常に絵になる」と自信を見せた。
今後は近隣市町との広域連携も見据えつつ、まずは市内で成功事例を積み重ねていく方針だ。
そして最後に市長は次のように語った。
「サイクリストの誘致だけでなく、お年寄りの移動手段や買い物、市民の健康増進など、日常の生活スタイルに自転車が溶け込むまちづくりを目指したい。そのためにもレースなどの主要イベントで、市民がプロに触れる機会も大切にしていきたい」
「量より質」を掲げ、自転車を軸とした地域活性化へ力強く漕ぎ出した吉野川市。産官学が強固に連携するこのまちが、今後どのようなサイクルカルチャーを育んでいくのか、引き続き注目していきたい。
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