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アジアの舞台へ――名古屋・小幡緑地でMTBプレ大会 地域レガシーと五輪への道筋を描く

第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)に向けたマウンテンバイク(MTB)競技のプレ大会が、名古屋市・小幡緑地で開催された。

アジア競技大会は日本開催としては3回目となるが、過去2回の日本開催時にはマウンテンバイク競技そのものが存在せず、アジア競技大会におけるMTBは今回が初開催となる。

その歴史的な初舞台となるのが、ここ小幡緑地だ。本大会の舞台となる特設コースで行われた今回のプレ大会は、単なる事前テストにとどまらず、競技運営やコース設計、安全対策、そして地域との関係性までを実地で確認する、極めて重要な機会となった。

舞台となった小幡緑地は、アジア競技大会のために整備された特設フィールドであり、大会後は現状復旧を行う案が基本とされている。一方で、競技の手応えや地域の反応を踏まえ、レガシーとしての活用も選択肢として検討されているという。国際大会は、開催そのものがゴールではない。競技をきっかけに、地域に何が残るのか――その問いが、ここ名古屋でも現実のものとして浮かび上がってきた。

第一線で活躍してきた選手たちが先導/地元に“ばえる”ファンライド

競技終了後、会場の空気は一変した。トップアスリートが競い合った直後の舞台で、ファンライドが行われた。

先導を務めたのは、日本のマウンテンバイクシーンを長年にわたって支え、現在も第一線で走り続ける選手たちだ。岡本紘幸、塚本岳、柳原康弘、清水一輝、佐藤聖司、櫻井孝太、江崎孝徳、鈴木雷太――世代や立場を越え、日本MTBを象徴する存在が揃い、地域の家族連れや、この日のために集まった自転車ファミリーとともにコースを走った。

トップアスリートが全力で競い合った直後のコースを、憧れの選手たちの背中を追いながら体験する。その光景は、競技の迫力だけでなく、この場所に積み重なってきた日本MTBの時間そのものが地域に可視化された瞬間でもあった。

現状復旧か、レガシーか――大会後を見据えて

小幡緑地のコースは、アジア競技大会終了後に現状復旧を行う計画が想定されている。ただし、今回のプレ大会とファンライドを通じて示された地域との親和性は高く、大会レガシーとしての継続活用も一案として現実味を帯びてきた。

優勝・沢田時、プレ大会翌日は小学校へ

Photo: Astemo宇都宮ブリッツェン

プレ大会で優勝を果たした沢田時は、大会翌日、会場近隣の小学校を訪問。児童たちに挨拶を行い、自転車競技、そしてマウンテンバイクの魅力を直接伝えた。

競技会場を飛び出し、次の世代と向き合うトップアスリートの姿は、第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)が、単なる国際大会の開催にとどまらないことを物語っている。

Photo: Astemo宇都宮ブリッツェン

UCIポイントと国際カレンダー

プレ大会から伊豆、そしてアジア選手権へ

このプレ大会はUCIカテゴリー3に位置づけられ、獲得できるポイントは10ポイントと限られるものの、本大会を見据えた実戦の場として重要な意味を持つ。  

一方、静岡県伊豆市・修善寺サイクルスポーツセンターで開催されるジャパン・マウンテンバイク・カップはUCIカテゴリー1。優勝者には60ポイントが付与される高ポイントレースであり、名古屋から続けて参戦する海外勢にとっても、競技的な優先度は高い大会となっている。

さらにACC(アジア自転車競技連合)の発表により、2027年アジア選手権マウンテンバイクが同じ修善寺で開催されることも決定している。名古屋で行われるアジア競技大会がUCIポイント獲得の場であるのに対し、来年のアジア選手権は大陸枠獲得という点で、より直接的にオリンピックへ結びつく大会となる。

【解説】アジア競技大会とアジア選手権はどう違い、オリンピックにどう関わるのか

マウンテンバイク競技において、アジア競技大会アジア選手権は性格が異なる。

アジア競技大会は総合競技大会として開催され、UCIポイントを獲得できる一方で、オリンピックの出場枠を直接付与する大会ではない。ただし獲得したポイントは世界ランキングに反映され、将来的なワールドカップや世界選手権でのスタートグリッドにも波及するため、強化や遠征戦略の文脈では小さくない意味を持つ。

一方のアジア選手権は、各国にとって意味合いがさらに濃い。大陸選手権は「大陸枠」という形で、オリンピックへの道筋により直接触れる大会として位置づけられる。世界ランキング(国別ランキング)で枠を取りにいくルートとは別軸で、“一発で流れが変わり得る”ターゲットレースになる。

そしてオリンピックの選考は「ある一大会」ではなく、原則として一定期間におけるUCIポイントの積み上げ(国別ランキング)で争われる。集計期間や締切は正式発表に基づくが、各国はその“選考期間”を逆算し、ポイント獲得機会を戦略的に組み立てていく。

つまり、カテゴリー3で10ポイントの名古屋プレ大会、カテゴリー1で60ポイントの伊豆、そして翌年のアジア選手権――この一連は、目先の勝敗だけでなく、ランキングと大陸選手権という二つのルートを見据えた「前哨戦の連なり」として意味を持っている。

カザフスタン代表チームコーチ アレクサンダー氏インタビュー

――アジア大会に向けたコースについて、どのような印象ですか? 技術的に難しいコースでしょうか。  

土曜日、実際にコースを確認しました。  

技術的に非常に難しいという印象ではありません。どちらかというとスピードの出るコースです。ただし、3〜4か所ほど注意すべきテクニカルな要素はあります。  

今回のレースはアジア大会前のテスト大会なので、私たちの目的はコースをしっかり研究し、テクニカルセクションの特徴を把握することです。

――カザフスタンのMTBチームの体制について教えてください。  

私たちのマウンテンバイク部門の選手は、定期的にロードレースにも出場しています。  

また、ジュニアのナショナルチームもあり、現在は国内でトレーニングとレース活動を行っています。  

U23(アンダー)カテゴリーの選手たちは、エリートのナショナルチームと統合された形で活動しています。基本的に、全員がロードレースにも取り組んでいます。

――今後の国際大会への参戦計画は?  

シーズンを通して、アジアとヨーロッパの両方で国際レースに出場する計画です。  

私たちのチームは、アジアとヨーロッパを組み合わせたシーズン構成で経験を積んでいく方針です。

――ヨーロッパのトップチームとの差については、どのように見ていますか?  

ヨーロッパのプロ選手たちは、より高性能なバイクに乗り、プロフェッショナルな環境で活動しています。  

一方で、私たちの選手はまだ若く、最近U23カテゴリーから上がってきた選手たちです。  

大きな違いのひとつはチームの予算です。ヨーロッパのプロチームは、ナショナルチームよりもはるかに大きな予算を持っています。

――今後、必要だと考える取り組みは何でしょうか。  

私は、コンチネンタルチーム、あるいはプロフェッショナルなマウンテンバイクチームを立ち上げる必要があると考えています。  

チームがあれば、選手一人ひとりにより多くの時間と注意を向けることができますし、国際大会への参加機会も増やせます。  

本格的なチームには、マッサージ師、メカニック、セラピストなどの専門スタッフ、そして質の高い機材が必要です。

――オリンピックについての目標と選考システムを教えてください。  

前回のオリンピックでは、カザフスタンはマウンテンバイクに選手を送り出すことができませんでした。  

そのため、まず第一の目標は、オリンピックへの出場権を獲得することです。  

選考システムとしては、  

  • アジア選手権での優勝(直接的な五輪出場枠)  
  • 2026年から2028年までの国別ランキングで世界トップ21に入ること  

この2つの道があります。

今は国別では厳しい為、アジア選手権を狙うことになると思う。

――アジア全体のレベル向上について、意見はありますか?  

これはあくまで個人的な意見ですが、日本もカザフスタンと同様に、もっとヨーロッパでレースをする必要があると思います。  

ヨーロッパのマウンテンバイクはレベルが非常に高く、競争も激しい。そこでの経験が不可欠です。

――若手選手の育成についてはいかがでしょう。  

シーズンはまだ始まったばかりです。  

私はコーチとして、すべての選手を信じていますし、良い走りをしてほしいと思っています。  

ただ、ジュニアからU23に上がる際、最初に直面するのがレース時間の違いです。  

ジュニアは約1時間ですが、U23やエリートは通常1時間半走ります。この時間差に適応することが、大きな課題になります。

――最後に、ファンの皆さんへ。  

コースに来て応援してくれているファンの皆さんに感謝したいです。  

レース中の声援は、選手たちにとって大きな力になります。

愛知アジア競技大会プレ大会を終えて  

斎藤嘉隆(自転車活用推進議員連盟所属/大会会長/愛知県自転車競技連盟会長/参議院議員

――本日はプレ大会という形で、アジア競技大会に向けたテストイベントが行われました。9月の本番に向けて、現時点での手応えをお聞かせください。  

今回の大会を通じて、コース整備を含め、安全性やコースクオリティについて一定の確認ができたと感じています。 

プレ大会という位置づけだからこそ、実際に運営してみて見えてきた課題や反省点もありましたので、そうした点は今後、関係者の皆さんとしっかり検討していきたいと思います。

観客の皆さんの安全対策も含めて、より万全な体制を整えたうえで、本番ではさらに質の高いレースをお届けできるよう努めていきたいですね。多くの方に会場へ足を運んでいただき、安心してレースを楽しんでいただける大会にしたいと思っています。

――本番のアジア競技大会では、名古屋や愛知県内だけでなく、東京や関西など全国、さらには海外からも多くの方が訪れると思います。レース観戦以外で、おすすめできる魅力はありますか。 

この周辺は、実は歴史的な史跡や遺跡が非常に多い地域でもあります。

また、ここ森山のエリアは自然も豊かで、名古屋市内にありながら、ゆったりとした環境を感じられる場所でもあります。

名古屋や愛知全体を見ても、伝統や歴史に触れられる見どころが数多くありますので、ぜひ全国、そして世界中から訪れる皆さんに、この地域の魅力を感じていただきたいですね。

レースとあわせて、愛知・名古屋、そして森山の地域そのものも楽しんでいただけたら嬉しいです。

フリーライド参加者の声  

宮田さん一家

「フリーライドと聞いて、正直なところ周辺の安全な場所を少し走る程度なのかなと思って参加しました。

でも、実際には想像以上にコースの中を走ることができて、とても楽しかったです。

さすがに全区間をそのまま残すのは安全面を考えると難しいと思いますが、一部でもコースが残ってくれたら、また走れる楽しみがあっていいなと感じました。

母親としては正直かなり大変でしたが(笑)、子どもたちは2人とも『すごく楽しかった』と満足していて、家族として参加して本当に良かったと思えるフリーライドでした」

“開催”のその先へ

第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)に向けて、会場は確実に輪郭を帯びてきた。だが、プレ大会が浮かび上がらせたのは、コースの出来栄えや運営手順の確認だけではない。

競技の熱量が地域へと届き、海外チームが明確な戦略をもって日本のレースを渡り歩き、行政・政策の側もまた「大会後」を見据えて言葉を重ねる――その交点に、いま小幡緑地は立っている。

アジアの舞台は、もう目の前だ。  

そしてその舞台が、終わったあとに何を残すのか。名古屋で始まった“問い”の行方は、本番へ向かう時間の中で、さらに鮮明になっていく。

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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