
パナレーサー・アジリストファストクリンチャー、その名に相応しい一級品のスピード

安井行生
- 2025年08月31日
2022年、それまでのレースシリーズからアジリストシリーズへとロードバイク用タイヤを完全刷新した日本のパナレーサー。発売当初は万能モデルのアジリスト、軽さを重視したアジリストライト、耐久性に優れるアジリストデューロの3モデルがラインナップされていたが、2023年に「アジリストファスト」という派生モデルを追加する。「さらなる性能を追求したフラッグシップタイヤ」という位置づけで、他のアジリストシリーズより3000円弱高価となる。
ノーマルモデルとの違いは素材。コンパウンド、ケーシング、耐パンクベルトが「Fマテリアル」と呼ばれる新素材となり、エレクトロンビーム(電子線照射)という技術も採用された。これは、高速の電子を物質に照射し、電子が持つエネルギーによって物質内に化学反応を起こして分子同士の結合を強固なものとし、対象物質の耐熱性や強度などを向上させる処理のこと。タイヤにおいては、耐熱性、強度、転がり抵抗等に好影響が期待できるそうだ。
それら設計変更の結果、転がり抵抗はノーマルアジリスト比で約20%低減。グリップや快適性も向上しているという。チューブレスレディとクリンチャーが用意されるが、今回試乗するのはクリンチャーの28Cである。

AGILEST FAST(アジリストファスト)
価格:9,900円(税込)
- サイズ(重量):700×25C(230g)、700×28C(250g)
試乗レビュー ライター安井行生✕TRYCLE田渕君幸
ここではサイクルショップTRYCLE田渕君幸代表とライター安井行生が試乗レビューをお届け。TRYCLE LODGE MIYAGASE 相模原市を拠点にツアー・オブ・ジャパン相模原ステージでも使われる宮ケ瀬湖周辺のアップダウンのあるコースで試し、その感じたところを対談形式でお伝えする。

田渕:アジリストファストは発売当初にチューブレス版に乗っていたことがあります。そのときの印象は「ふわふわモチモチしたグリップ感のある高性能タイヤ」という印象でしたが、クリンチャーになるとちょっと性格が変わりますね。TPUチューブを使ったということもあるんでしょうけど、チューブレスよりやや硬さを感じます。ただし、硬いといわれているタイヤに比べれば快適性は悪くない。そのぶん、高速巡航時の抵抗は少なく感じました。すごくよく進むタイヤです。
安井:僕も同じ印象です。チューブレスに比べると芯のあるアルデンテ的な乗り味になりますが、サイドウォールとトレッドが分厚いタイヤのゴツゴツ感とはまったく違います。だから高耐久タイヤにありがちな不快なドタバタ感はなく、振動がすぐに収束してくれます。これくらいの差なら、取り扱いの容易さを優先してTPUチューブでのクリンチャー運用はありだと思います。
田渕:性能ですが、スピードは一級ですね。その名に相応しく、シンプルに速いタイヤ。

安井:はい。ノーマルアジリストより重いはずなのに、加速や登坂では不思議と重さは感じません。転がりも軽くなってます。世界的なブランドのトップレベルに迫る性能だと思います。
田渕:グリップにも安心感があります。クリンチャーなら1万円以下ですし、使い勝手もいい。サイズが豊富で、日本での入手性がいいこともパナレーサーのメリットです。
安井:アジリスト以前のレースシリーズもいいタイヤでしたが、ライバル他社がどんどん進化をするなかで、相対的に後れをとっていました。アジリストシリーズのデビューでその差を一気に縮めたわけですが、アジリストファストというハイエンドタイヤで肩を並べるくらいになったと感じます。そういう意味では、日本の自転車界にとって記念すべきモデルです。
問:パナレーサー https://panaracer.com/
- BRAND :
- Bicycle Club
- CREDIT :
- 撮影:橋本謙司 協力:TRYCLE https://trycle.net
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