
自転車の安全な走行空間確保を!超党派の自転車議員連盟総会が開催、金子国交相が決意表明
Bicycle Club編集部
- 2025年12月02日
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12月1日、超党派の国会議員で構成する自転車活用推進議員連盟(自転車議連)が年末総会を開き、令和7年度予算の重点項目と第3次自転車活用推進計画(案)の骨子をめぐって議論を深めた。注目は来年4月から本格導入される“青切符制度”で、あらためて安全教育と走行環境の整備は間に合っているのか?といった質問や提案が議員から行われた。
国土交通大臣に就任した自転車議連の金子恭之幹事長が決意表明

自転車議連は1999年に設立された超党派議員連盟だ。議員立法による自転車活用推進法の成立をはじめ、車道通行空間の整備やサイクルツーリズムの拡大など、国の自転車政策の背骨を支えてきた存在でもある。
総会は自転車議連の橋本聖子会長に続き、この秋に国土交通大臣となった自転車議連金子恭之幹事長が挨拶をした。金子恭之幹事長は「これまで皆さん方と一緒にこの自転車活用推進をやってきた人間が、この法律に基づいた自転車活用推進本部の本部長になったということで、非常に重責を担う、非常にプレッシャーがあるところでございます。しっかりと責任を持ってお受けさせていただく」とし、その決意を表明した。
自転車活用推進本部事務局が示した第3次計画の“5つの目標”

総会の中心となったのは、国土交通省道路局長で自転車活用推進本部事務局長を務める沓掛敏夫局長による第3次自転車活用推進計画(案)の説明だ。沓掛局長は、現行の第2次計画では「目標1」としていた「良好な自転車利用環境の形成」が多くを包含し、走行環境・駐輪環境・利用促進といった論点が一体化していたと説明。そこで第3次では、施策を整理し直し、下記5つの目標に再構成する方針を明らかにした。
- 目標1:安全で快適な良好な自転車利用環境の実現 自転車ネットワーク整備を軸に、子ども乗せや大型車など多様化する駐輪ニーズへの対応を含めて進める。
- 目標2:自転車事故のない安全・安心な社会の実現 自転車利用者・自動車運転者双方への安全教育を強化し、事故を減らす走行環境づくりを一体で推進する。ここで沓掛局長は「来年4月1日から青切符制度が本格導入されることも踏まえ、安全環境をさらに強化する」と述べ、制度開始を見据えた“教育と環境の同時強化”を強調した。
- 目標3:自転車交通の役割拡大による地域の良好な移動環境の形成 地域公共交通計画との連携も含め、自転車を“地域の足”として位置づけ直す。
- 目標4:自転車利用促進による活力ある脱炭素・健康長寿社会の実現 自転車利用を通じてCO₂削減と健康づくりの両面で社会に貢献する狙いだ。
- 目標5:サイクルツーリズム等の推進による観光・地域活性化の推進 サイクルツーリズムの拡大やVelo-city関連の情報発信など、地域の魅力を走りながら体験する文化の定着を図る。
今回は具体的なロードマップが示され、有識者会議は今年3月から進めており、現在は骨子案をまとめた段階にあるという。今後、この総会での自転車議連の意見を踏まえ、12月中に第4回有識者会議を開催して文章化を進め、その後パブリックコメントを実施。そして年度内には計画策定し、来年度早期の閣議決定を目指すという。
議員からの発言では青切符対策のほか、山道の利用、サイクルトレインなどが注目を集めた

討議では、実際に自転車を楽しむ議員らによる現場感のある提起が相次いだ。
奈良を拠点に活動する斉藤健一郎議員は、マウンテンバイクの安全確保を問題提起。日本ではオフロード環境が整っていない、全国にある里道・赤道など公共の山道の管理が曖昧なまま宙づりになっている現状を整理し、利活用を進めれば安全な走行空間確保と災害時の迂回路にもなり得ると提案。所管の明確化と自治体への後押しを求めた。
また、ビワイチで知られる守山市の市長として自転車活用を推奨してきた経験をもつ宮本和宏議員は、自治体運営の視点から4点を要望した。
- 自転車ネットワーク形成のガイドライン整備 狭い車道事情でも取り組みやすい選択肢を国が示すべきだ。
- サイクルトレインの推進 欧州のように鉄道と連携し、通学や観光で自転車を積みやすい環境を広げたい。
- 災害時の自転車活用 渋滞や燃料不足下で機動力を持つ自転車の政策的位置づけを求めたい。
- Velo-city愛媛誘致と日本版サイクルエンバシー構想 国際会議Velo-cityを契機に産官学が結集し、日本型の海外展開体制づくりを進めるべきだと提起した。
一方、コロナ時期に自転車で国会へ通勤していた高村正大氏は青切符制度導入への不安を率直に語った。逆走や信号無視などルール逸脱が依然多い中、罰則だけが先行すれば反発が出かねない。なかでも「路上駐車が一番怖い」とし、通行帯を塞ぐ違法駐車がある限り、車道走行の徹底は現実的でないと訴えた。駐車せずに済む環境と取締りの徹底を、警察・国交省双方に求めた形だ。
このほか多数議員からも質問があり、その後沓掛局長が代表して回答をした。「今回、目標の中で利用環境と安全・安心を第1・第2の柱に位置づけました。自転車活用の基盤として、この2点を特に重視して進めてまいります。また観光・地域活性化の観点での活用についてもご意見がありました。サイクルトレインについては観光だけでなく、日常生活の移動手段としても位置づけていきたいと考えています。インバウンドの方々へのルール周知についても、これまで取り組んできましたが、さらに配慮を強めていきます。事故防止や道路維持管理の課題についても、全体のメリハリをつけながら、しっかり対応できるようにしたいと思います」とし、具体的な数値などの答弁は控えたが、今後の対応を検討する旨とした。
愛媛開催の国際会議Velo-city2027では参加者2000人規模を目指す

続いて愛媛県からVelo-city(自転車国際会議)2027の概要、状況説明が行われた。Velo-city2027は2027年5月25日から28日までの4日間、松山市にある愛媛県武道館をメイン会場として、学術会議、展示会、自転車パレードなどが行われる。特に学術会議は、講演会やパネルディスカッション、ワークショップが行われ、健康・生きがい、都市計画として安全な自転車走行空間、さらに日本における自転車文化の紹介を予定している。また、自転車パレードは、市民参加のイベントとして愛媛ならではのコースとして松山市中心部を10km程度サイクリングする模様だ。最終的にイベント全体での参加者は国内外2,000人を目指すとした。

愛媛県のVelo-city担当の河上 芳一氏は「我々としても開催すること自体が目的ではなく、開催後に何をするかという視点で検討しております。将来、日本の都市政策や交通政策を見直す機会になればよいと考えており、さらに、アジアやオセアニア諸国との交流拡大も目指しており、アジア・オセアニア版のベロシティのようなものができればいいと考えております」と説明した。自転車文化推進をしてきた愛媛県として、国内外に発信するとともに、さらにVelo-cityは国内の自転車活用を推進する機会であることを自転車議連に対して説明し、Velo-city開催のための支援を求めた。
自転車走行環境やヘルメットの普及率向上が課題

今回、一般社団法人自転車協会、自転車を活用したまちづくりを推進する全国市区町村長の会、全国自転車施策推進自治体連絡協議会、一般社団法人自転車物流イノベーション協議会、一般財団法人自転車産業振興協会、日本シェアサイクル政策研究会、一般財団法人日本自転車普及協会といった団体の代表が参加し、それぞれの状況報告、要望をおこなった。

最後は橋本会長がコメント「特に自転車を活用したまちづくりを推進する全国市区町村長の会の方にはお願いしたいのですが、やはり小学校・中学校・高校生のヘルメット普及率は、ぜひ100%にしていただきたいと思います。これはサイクリストとして私も長く競技をやってきましたけれども、そういう立場からすると、自転車に乗るときにヘルメットをつけていないということはあり得ない、という感覚なんですね。ただ、事故を起こしたりした人には分かるんですけど、『自分は大丈夫だ』と言ってしまうケースの方が実は多いんです。それだけ自転車というのは、ある意味で危険な乗り物でもありますし、ルールを守るということ、そして人の行動をしっかり見るということの視野を広げる教育が大切だと思っています」とし、結びの言葉とした。
「自転車はどこを走ればよいのか?」を法律をよりわかりやすくしてほしい

自転車活用推進法の成立以降、自転車の走行空間の整備に関しては国土交通省の資料では平成28年の1,247 kmから令和6年度で9,841kmへとかなり向上しており、自転車議連による影響は大きいといえる。ただしいまだに課題は多い。
わかりやすい例では「自転車がどこを走ればいいのかがわからない交差点」は依然として存在する。これは時代の状況に合わせて「対処療法的な成り行き」で対応してきた複数の法律やガイドライン、道路整備のため、専門家でもその解釈に苦慮するところもある。こうした法整備は正直限界を迎えているともいえる。
自転車の安全利用を考えると、青切符導入を迎え、「自転車利用者の違反」を問うと同時に、道路交通法、道路法、道路構造令などの複数の関係法令についても「自転車が安全に走るにはどうすべきか」という観点から整理すべきなのかもしれない。自転車議連の次のステップとして官民が連携して議論することが期待される。
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- 写真、文:BicycleClub
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