
自転車競技連盟とブリヂストンが連携し新チーム「HPCJC-BRIDGESTONE ANCHOR」発足 トラック&ロードで世界を目指す
せいちゃん
- 2025年12月23日
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2025年12月22日、公益財団法人日本自転車競技連盟(JCF)とブリヂストンサイクル株式会社は、東京都港区南麻布のブリヂストングローバル研修センターで記者会見を開き、新たな自転車競技チーム「HPCJC-BRIDGESTONE ANCHOR(エイチピーシージェイシー・ブリヂストンアンカー)」の発足と、2026年シーズンからの活動体制を発表した。
これまでの日本ナショナルチームの強化拠点であるHPCJC(High Performance Center of Japan Cycling)と、国内屈指の歴史を持つチームであるチームブリヂストンサイクリング(Team Bridgestone Cycling)がアライアンスを組み、世界で勝てる選手の育成と自転車競技の普及を目指す。
パリ後の新たな強化策、トラック&ロードの「クロス・ディシプリン」

2026年から始動する新チームの最大の特徴は、JCFの強化組織とブリヂストンサイクルが一体となり、「トラックとロードの種目横断(クロス・ディシプリン)」による強化を掲げた点だ。

会見に登壇したJCFの橋本聖子会長は、「HPCJCは2018年の発足以来、東京五輪での銀メダル(梶原悠未)や世界選手権での金メダル獲得など成果を挙げてきた。ブリヂストンサイクルとは東京大会に向けた機材開発でも協業してきたが、今後は新たな体制で共に歩み、自転車産業の創出と競技力向上を目指す」と挨拶。

また、JCFの中野浩一強化委員長は、昨今の世界的な潮流に触れ、「世界のエンデュランス系種目のトップ選手は、ロードとトラックの両方で活躍している。日本はロードに出るチャンスが限られていたが、ブリヂストンと連携することで、中長距離選手がロードレースでも脚を磨ける環境を作る」と新体制の意図を説明した。欧州のトップシーン同様、ロードレースの強度でフィジカルベースを作り、トラック中長距離でメダルを狙う強化パスを確立する。
目指すは「英国ナショナルチームとチームスカイ」の関係性

今回の新チーム発足の裏には、かつて世界を席巻した「英国モデル」への志向が見え隠れする。
チーム担当を務める清水都貴氏(ブリヂストンサイクル)によると、この新体制は「英国ナショナルチームが『チームスカイ(現イネオス・グレナディアーズ)』をメインスポンサーにしつつ、周囲を巻き込みながら変化・進化していったプロセス」をイメージしてもらえるとわかりやすいという。
かつて英国では、ナショナルチームの強化プログラムとプロチーム(スカイ)が密接に連携し、機材、指導理論、人材を共有することで、トラック競技での金メダル量産と、ツール・ド・フランス制覇という両輪の成功を成し遂げた。
短距離は「楽天」、中長距離は「ブリヂストン」へ 強化体制の明確な棲み分け

今回の新チーム発足に伴い、日本トラック競技界の勢力図も大きく整理されることとなった。注目すべきは女子選手のラインナップだ。
発表された女子メンバー5名(内野艶和、垣田真穂、池田瑞紀、水谷彩菜、岡本美咲)は、いずれもこれまで「チーム楽天Kドリームス」に所属していた選手たちである。今回の移籍により、今後はトラック短距離種目は「チーム楽天Kドリームス」が、中長距離種目は「HPCJC-BRIDGESTONE ANCHOR」が主体となって強化を担当するという、種目による明確な棲み分けが進むことになりそうだ。
これにより、伊豆ベロドロームを拠点とするHPCJCの活動の中で、エンデュランス班はブリヂストンのリソースやノウハウをフルに活用し、ロードトレーニングとトラックトレーニングをシームレスに行う体制が整う。
2026年はクラブチーム登録 UCIレースはナショナルチームで参戦

JCFでハイパフォーマンスディレクター(HPD)を務める三瓶将廣氏によると、2026年シーズンはUCIコンチネンタルチーム登録を行わず、クラブチームとして活動する。
活動の軸はあくまで「トラック&ロード」の強化だ。国内レースについては、JBCF(全日本実業団自転車競技連盟)のJプロツアーなどへ、この新チーム「HPCJC-BRIDGESTONE ANCHOR」として参戦し、レース勘とフィジカルを養う。
一方、「ツール・ド・九州」など国内で開催されるUCIクラス1以上の国際レースや海外のUCIレース、UCIトラックワールドカップなどについては、UCI規定によりクラブチームとしての出場ができない。そのため、これらのレースには「日本ナショナルチーム」として選手を派遣する形で出場を目指すことになる。
三瓶HPDは「まずは1年契約からのスタートだが、目線は2028年のロサンゼルス、2032年のブリスベン・オリンピックにある。トラック中長距離とロードをターゲット種目に、HPCJCの伊豆ベロドロームや岐阜サテライトなどの拠点を活用して強化を進める」と長期的なビジョンを語った。

欧州経験を持つ女子選手たち NIPPOとの連携で世界への扉は開かれている

女子チームの主力となる内野艶和、垣田真穂、池田瑞紀の3名は、2025年シーズン、株式会社NIPPOのサポートによりヨーロッパのUCIコンチネンタルチームに所属し、過酷な欧州レースを転戦してきた経験を持つ。
囲み取材で垣田と池田は来季の欧州での活動について「まだわからない」と言葉を濁したが、NIPPOは今後も女子UCIコンチネンタルチームとの提携を継続する方針を示している。そのため、国内ではHPCJC・チームブリヂストンアンカーのジャージを着て男子選手らと共に高強度のトレーニングを積みJBCFのレースなどに参戦しつつ、再び渡欧し、提携先チームから世界のレースへ挑む可能性も十分に高い。
垣田は「欧州での半年間は大変だったが成長できた。今後は国内の男子レースなどレベルの高い環境でロードも走れるのが楽しみ。いつかロードでもオリンピックに出たい」とコメント。池田も「欧州のレベルの高さを身に沁みて感じた1年だった。新チームではロードレースの強度で鍛えつつ、トラックでもポイント獲得を目指す」と語り、国内の新体制と海外挑戦の両輪で強化を進める意欲を見せた。
キャプテンは兒島直樹 ”三足のわらじ”で挑む新シーズン

チームキャプテンには、パリ五輪代表であり、現在は日本競輪選手養成所に在籍中の兒島直樹が就任した。
兒島は「新チームのキャプテンとして覚悟と責任を持って高みを目指す」と決意を表明。現在は競輪選手養成所に在籍中で来年3月に卒業予定だが、「オリンピックでのメダル獲得が一番の目標。ロードではJプロツアーでの優勝や、地元で行われるUCIレースの『ツール・ド・九州』も優勝を狙っていきたい。S級選手として競輪でも活躍したいが、まずはオリンピックに向けた活動を主体にする」と、競輪・ロード・トラックの”三足のわらじ”で世界へ挑む姿勢を見せた。
チームジャージは黒と白の「レーシングカラー」

お披露目されたチームジャージは、HPCJCのロゴとブリヂストンのロゴが胸に輝く、白と黒を基調としたデザイン。チームカーにはスバル・レヴォーグが採用され、機材は引き続きブリヂストンのトラックバイク「TS9」およびロードバイク「RP9」を使用する。

「2 wheels 1 goal」を合言葉に、日本自転車界の総力を結集し、種目と所属の垣根を超えて再編された新チーム「HPCJC-BRIDGESTONE ANCHOR」。ロサンゼルス五輪へ向けた新たな挑戦が、2026年から幕を開ける。
【HPCJC-BRIDGESTONE ANCHOR 2026年チーム体制】
JCF ハイパフォーマンスディレクター
三瓶 将廣
チームマネージャー
宮崎 景涼
所属選手(計13名)
兒島 直樹(キャプテン)
松田 祥位
梅澤 幹太
河野 翔輝
矢萩 悠也
岡本 勝哉
三浦 一真
木綿 崚介
内野 艶和
垣田 真穂
池田 瑞紀
水谷 彩菜
岡本 美咲
- BRAND :
- Bicycle Club
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PROFILE
せいちゃん
稲城FIETSクラスアクト所属のJプロツアーレーサー。レースを走る傍ら、国内外のレースや選手情報などを追っている。愛称は「せいちゃん」のほか「セイペディア」と呼ばれている
稲城FIETSクラスアクト所属のJプロツアーレーサー。レースを走る傍ら、国内外のレースや選手情報などを追っている。愛称は「せいちゃん」のほか「セイペディア」と呼ばれている



















