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「古地図」が変える自転車の景色 「第8回 ソーシャルx散走 企画コンテスト」でIAMASがグランプリ獲得

2025年12月13日(土)、シマノは大阪・堺市のシマノ自転車博物館にて「第8回 ソーシャルx散走 企画コンテスト」の最終審査会を開催した。全国24チームから選ばれた6チームが、「散走(さんそう)」による社会課題解決のアイデアをプレゼンテーション。100年前の地図を手に街を巡る「古地図散走」を提案した情報科学芸術大学院大学が大賞に輝いた。「散走」とは、日常の中の小さな気づきや出合いを見つけに、散歩のようにゆったりと、気の向くままに自転車を走らせる楽しみ方のことだ。

全国24チーム115名の頂点へ 社会課題を解決する「散走」の新たな可能性

今年で8回目を迎えた本コンテストは、勝敗を決めるだけでなく、学生たちが自転車を通じて社会とどう向き合うかを問う場として定着している。テーマは「ソーシャル×散走」。日常の小さな発見を楽しむ「散走」を地域活性化やメンタルヘルス、オーバーツーリズムといった現代の課題解決につなげる企画が求められた。

会場となったシマノ自転車博物館にはファイナリストたちが集結したが、北海道からの参加となった北海道科学大学と藤女子大学チームは、折からの悪天候による飛行機欠航のため急遽オンラインでの参加となるハプニングも。しかし、画面越しに熱意を伝える姿は、まさに「どんな状況でも道を見つける」自転車乗りの精神に通づるものがあった。

大賞:時空を超えるライド「古地図散走」

見事大賞を受賞したのは、情報科学芸術大学院大学(IAMAS)メディア表現研究科のチーム「古地図散走」。

彼らが着目したのは、均質化し個性を失いつつある郊外都市の風景だ。スマートフォン上で明治時代の古地図と現在の地図を重ねて表示できる「今昔マップ」を用い、今はなき水路や建物、変わらない神社の位置などを確かめながら走るスタイルを提案した。

彼らは実際に岐阜県大垣市や福島県浪江町、そして開催地である堺市でもフィールドワークを実施。「目的地への移動」ではなく、「土地の記憶」を探索すること自体を目的にすることで、見慣れた街が宝探しのようなフィールドに変わると主張した。

審査員の神保正彦氏(シマノ自転車博物館 学芸員)は、「地図はその時代を表すものだが、そこから現代の我々の暮らしを問い直すことができる。場所を選ばず展開できる普遍性と、自分の意思で道を選ぶという散走の根幹を捉えた素晴らしい企画」と高く評価した。

ソーシャル賞・散走賞:心と感覚へのアプローチ

社会課題への鋭い視点が評価される「ソーシャル賞」は、北海道科学大学 未来デザイン学部の「散走×方程式」が受賞した。

現代社会のストレスに対し、自転車移動のリズムと「香り」を組み合わせたコーピング(ストレス対処)を提案。サイクリング中に感じた匂い(土や植物の香りなど)を「香りの切符」として持ち帰り、日常に戻った際にその香りで旅の記憶とリラックス状態を呼び起こす(プルースト効果)という、心理学的アプローチと情緒が融合したアイデアだった。

また、散走の楽しさを表現した「散走賞」には、京都芸術大学大学院 芸術研究科の「わたしが撮る風」が選ばれた。

SNSでの「映え」や他者評価に疲れた現代人に対し、「目に見えない風」を写真に撮るという詩的なテーマを設定。画一的な構図ではなく、自分だけの感覚を取り戻すアンチテーゼとしての散走を提示し、その哲学的かつ美しいアプローチが評価された。

学生たちのアイデアが社会を動かす

その他、奈良女子大学は「五感」をテーマにオーバーツーリズム解消を狙うルートを、京都芸術大学大学院(文化デザイン)は近江八幡の「水」をテーマにした散走アプリ開発を、そして藤女子大学は石狩川の歴史を「文明」と捉え直す壮大なリバーサイド散走をそれぞれ発表。いずれも実現可能性が高く、地域への愛着に溢れた内容だった。

シマノの津崎祥博副社長は冒頭の挨拶で、「今日発表されたアイデアが、この場限りで終わるのではなく、いつか社会で実現されることを願っている」と学生たちを激励した。実際、過去の大会の入賞企画が自治体と連携してイベント化された事例も生まれている。本コンテストは単なるアイデア出しの場を超え、散走がサイクリングの枠を超えたソーシャルな「気づき」を与えてくれる場となることが期待される。

来年も開催が予定されている本コンテスト。自転車が持つ「社会を良くする力」を、学生たちがどう引き出すのか。次回の展開にも期待したい。

最終審査結果

【大賞】

「古地図散走」
情報科学芸術大学院大学 メディア表現研究科

【ソーシャル賞】

「散走×方程式」
北海道科学大学 未来デザイン学部人間社会学科

【散走賞】

「わたしが撮る風」
京都芸術大学大学院 芸術研究科芸術環境専攻

【ファイナリスト】

「感彩走」
奈良女子大学 きたまちアドベンチャーズ

「水から知るまちの記憶と風景」
京都芸術大学大学院 文化デザイン・芸術教育領域

「石狩文明in2025」
藤女子大学 人間生活学部人間生活学科

シマノWEBサイト

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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