
学生たちの感性が集結、東京サイクルデザイン専門学校「卒祭2026」
Bicycle Club編集部
- 2026年03月06日
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東京サイクルデザイン専門学校で開催されている卒業制作展示「卒祭2026」を訪問。学生たちが手掛けた個性豊かなハンドメイドバイクの中から注目の6台を紹介。カーゴバイクやミニベロ、ピストなど多彩な作品とともに、フレームビルディング教育の現在地をレポート。今週末開催されており、自転車好きなら足を運ぶ価値あり!
東京サイクルデザイン専門学校「卒祭2026」を訪ねる

自転車ビルディングの未来を担う学生たちの作品が一堂に会する展示会「卒祭2026」が、東京サイクルデザイン専門学校(TCD)で開催されている、3月8日まで。
本イベントは同校バイシクルクリエーションコースの卒業制作発表を中心とした展示会であり、毎年、学生たちが手掛けたオリジナルフレームやコンセプトモデルが披露される。ハンドメイド自転車の世界では、若いビルダーの感性や挑戦的なアイデアが見られる場としても注目されており、近年は国内外のビルダーや関係者が足を運ぶイベントとして定着しつつある。
会場には、フレーム設計から製作までを学生自身が手掛けた個性的なバイクが並び、クラシカルなラグフレームから現代的な設計思想を反映したモデル、さらには物流やエネルギー利用をテーマにしたコンセプトバイクまで、多彩な作品が展示されていた。
単なる卒業制作という枠を超え、実際に走行可能なフレームとしての完成度を追求した作品も多く、ハンドメイド自転車の文化を担う新しい世代の可能性を感じさせる内容となっていた。
その中でも、特に注目を集めた6台を紹介していこう!
ベスト賞 「RIDGELINE」

まず最も大きな賞となるTCDアワードの グランドプライズに輝いたのは、山田雅一さんによるミニベロロード「RIDGELINE」だ。
細径のクロモリチューブを三次元的に組み上げた構造が最大の特徴で、見る角度によってフレームのシルエットが変化する独特の造形を持つ。
構造体としてのフレームの魅力を視覚的に強調しながらも、観賞用のオブジェではなく実際の走行を前提とした設計となっている点も印象的だ。
フレームの内部空間を活かした立体的な構成は、フレームビルディングの構造美を改めて意識させるものとなっており、ミニベロというジャンルの可能性を広げる一台といえる。
山田さんは58歳、元ヤマハでPASやYPJなどの開発にも携わった設計者だ。「自分の手でモノづくり」をしたいと早期退職してTCDへ入学。「ロウ付けはまだまだ下手なんですけれど」と謙遜するが大きな夢を実現させたと言える。卒業後は、フレーム工房の手伝いの声がかかっているという。
ナイスな旅雰囲気「ivy」

コンセプトモデルカテゴリーで評価されたのは、黒田琉仁さんによるミニベロ「ivy」。
このバイクのテーマは“拡張性”だ。ミニベロというコンパクトな車体をベースにしながらも、荷物の積載能力を活かすことで、日常の移動手段からツーリング、自転車キャンプ、さらには長期の旅まで幅広い用途を想定している。
特筆すべきは、クラシカルな雰囲気を持つラグフレーム。しかもこのラグは既製品ではなく、すべてブランク材から手作業で削り出されたものだ。
ハンドメイドフレームの伝統的な技法を現代的な用途と組み合わせたこの作品は、実用性と美しさを兼ね備えた一台として会場でも注目を集めていた。
3つの賞に輝いた、運ぶリカンベント「CYCLOADER」

セカンドプライズに加え、ゴールデンツリーアワード、インスタグラム投票によるベストスピンザフューチャーの3つの賞を獲得したのが、加藤大夢さんの「CYCLOADER」だ。
この作品のテーマは物流。「自転車で運べるモノ」の範囲を広げるという発想から生まれたカーゴバイクで、1930年代のフランスに存在した運搬自転車のアイデアをベースにしながら、現代の都市環境で求められる機能性を取り入れている。
大きな荷物を運ぶための設計でありながら、扱いやすさや汎用性にも配慮されており、実際の街中でも活躍しそうな現実的なコンセプトを持つ。
「自転車界のトラック」を目指したというこのモデルは、近年世界的に注目されているカーゴバイクの可能性を学生の視点から再提案した作品といえるだろう。
完成度高いピスタ「RELAVIA」

プロダクションモデルアワードとゴールデンツリーアワードを受賞したのは、岩崎大河さんによるトラックバイク「RELAVIA」。
そのデザインの着想源となったのは、カワセミの学名「alcedo atthis」。川辺を飛ぶ翡翠色の鳥の優雅さと、獲物を捕らえる瞬間の鋭い動きを一本のフレームに表現することを目指したという。
フレームはスチールとステンレスを組み合わせ、さらにISP(インテグラルシートポスト)やステムまで自作。細部まで一体設計された構造は、フレームビルディングの技術力を感じさせる仕上がりとなっている。
素材の魅力と造形美を高い次元で融合させた、完成度の高いピストフレームだ。
もっともカッコイイと思った「THRONES」
編集部が会場で最も目を引いたのが、篠宮秀虎さんの「THRONES」。
このトラックバイクは、伝説的フレームビルダーにして学長の、今野真一氏によるブランド「CHERUBIM」の名作“Hummingbird”から着想を得て設計されたものだ。今野学長の意見を聞きつつ、「もっとこうすればよかった」という反省点までも聞き取って、完成度を高めた。
リスペクトを形にしつつ、走る姿の美しさや佇まいの魅力、そして構造の必然性を重視するという思想が込められている。競技で勝つための機材ではなく、バンクを走る体験そのものに価値を置く。道具でありながら同時に作品でもあるという、トラックバイクの美学を提示する一台だ。
もっとも乗ってみたいと思った士「C-Nexus」
もっとも乗ってみたいと思ったのはコチラ。今回の展示の中でも、技術的な発想のユニークさで印象に残ったのが本田貴士さんの「C-Nexus」。
このコミューターバイクは、走行中のエネルギーを再利用するというアイデアを取り入れている。例えば下り坂で加速したあと、信号で停止すると、そのエネルギーは失われてしまう。
そこで車体中央にフライホイール、下部にラチェットホイールを配置することでエネルギーを蓄積し、必要なタイミングで放出できる構造を採用した。
都市部での移動を前提とした実験的な試みであり、学生作品ならではの自由な発想が光るモデルだ。
学長が語る、学生作品の進化
展示を総括する形で、東京サイクルデザイン専門学校の今野真一学長は今年の作品について次のように語る。「本年度の自転車フレームビルディング展示会は、過去に比べて非常に高いレベルの作品が集まりました」特に印象的だったのは作品の多様性だという。
「従来の一般的な自転車だけでなく、荷物運搬用のリカンベントなど、新しい形状の作品が複数の賞を受賞しています。学生たちの創意工夫が十分に発揮されています」
昨年から同校では「真似してもいい」という文化的転換を導入。過去の作品や先輩の設計を参考にしながら、自分自身の個性を加えることで学生たちがより自由に創作できる環境を整えたという。
さらにインスタグラムなどを通じて世界中のビルダーに作品を発信する取り組みも始めた。
「海外のビルダーから評価を受けることで、学生たちは学校の中だけでなく、世界的な視点でフレームビルディングの価値を理解するようになっています」
こうした取り組みは学生のモチベーション向上にもつながり、ハンドメイド自転車文化への関心を大きく高めているという。
フレッシュなビルダーたちの自由な発想と確かな技術。その両方を感じることができる「卒祭」は、日本のフレームビルディングの未来を垣間見る展示会でもある。ここから新たな自転車にまつわる業界人やクリエイターが生まれ、次の時代の自転車文化を形作っていくことに期待したい!
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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。
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