
モデル・透子さん「自然のなかに行くと、自分をちょっとずつ取り戻せる」【街と自然を行き来する|BOUNDLESS Vol.2】
VINAVIS 編集部
- 2026年09月08日
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街と自然。そこに特別な境界線はなく、どちらも日常の一部として軽やかに行き来するライフスタイルには、自分らしく生きるためのヒントが詰まっている。
「BOUNDLESS」は、そんな毎日を送る人々に迫る連載。
第2回は、すぎていく日々のなかで自分を見失いかけたとき、自然のなかに身を置くことで自分を取り戻しているというモデル・透子さんに話を伺った。
文◉平野美紀子
写真◉吉本悠哉
編集◉VINAVIS
休日は好奇心の赴くままに

会社員として4年間働いたのち、現在は介護の仕事に携わる透子さん。2025年ごろ、知人に声をかけてもらったことをきっかけにモデル活動もスタート。ファッション誌やアウトドアブランドの広告など、少しずつ活動の幅を広げている。
そんな透子さんの休日は、街で好きな場所をめぐるか、自然豊かな場所へ行くことがほとんどだ。
「休日も、ずっと家にこもっていることはあまりなくて。カフェへ行ったり、喫茶店やラーメン店をめぐったり。最近は美術館や展示を見るのもすごく好きです」
最近足を運んだのは、イギリスを拠点に活動するアーティスト、ロン・ミュエクの展覧会。カラフルな作品や、ひと目見て感覚的に楽しめる展示に惹かれるのだとか。旅行も好きで、お気に入りの台湾へは何度も足を運んでいる。
ただ最近、時間ができたときに向かう先といえば、もっぱら山だ。
「街ですごす時間も好きですが、友達といっしょに山へ行ったり、自然のある場所を旅したりする時間がどんどん増えてきました。多いときには週に2回ほど山に登っていますね」
真っ白な景色、他愛もない会話。初めての山は、すべてが楽しかった

透子さんが本格的に登山を始めたのは、2023年ごろ。
もともと海や山など自然のある場所が好きで、山にも登ってみたいと思っていたものの、周囲には山へ行く友人があまりいなかった。そんなとき、Instagramを通じて知り合った友人が登山をしていることを知る。
「なんとなく『私も山に行きたい』って話したら、『じゃあ今度いっしょに行こう』って誘ってくれたんです。それが始まりでした」
初めて向かったのは、南アルプスの日向山。いっしょに登ったのは6人で、透子さんにとってはほとんどが初対面だった。
「みんなと仲良くなりたい、喋りたいという気持ちが強くて、ずっと話しながら登っていたら、あっという間に山頂に着いちゃったんです。登っているときの辛さは、ほとんど覚えていません(笑)」
気づくとたどり着いた山頂には、一面の白い砂が広がっていた。
「山頂は花崗岩が風化してできた真っ白な砂に覆われていて、まるで天空のビーチ。こんな山があるのだと、シンプルに感動しました」
この一日をきっかけに、少しずつ登る山が増えていく。奥秩父の瑞牆山へ足を運び、日向山にはその後、撮影でも再訪。その年の冬には、初めての雪山にも挑戦した。
いろいろな山を登るようになってから、いっしょに歩く人たちとすごす時間は透子さんにとって大切なものになっていった。

「山頂に着いたときはもちろん気持ちいいんですけど、私は登っている途中とか、下山中にする“生産性のない会話”が好き。くだらないことを話しているうちに、友達との仲が深まっていく感じがするんです」
街では周囲の会話や音、目に入ってくるものなど、絶えずたくさんの情報が入ってきてしまう。一方、自然のなかで聞こえてくるのは、いっしょに歩く人の足音や声、生き物の音だけ。そんな環境に身を置くと、肩の力が抜け、普段よりも素直に話せるようになるという。
「日常で感じたモヤモヤも、友人に話しているうちに解けていくような感じがする。登りながら他愛もない会話を交わす時間は、私にはとても大事なことだと感じています」
自然のなかで、自分をちょっとずつ取り戻す

登山を始めるよりずっと前から、透子さんにとって自然は身近な存在だった。
「生まれ育ったのは、宮城県の田舎の町。もっと田舎の祖母の家に遊びに行っては、よくセミを捕まえたり、トンボを追いかけたりして、幼少期は自然のなかですごすことが当たり前でしたね」
その後、20歳で上京。街ですごす時間が長くなるにつれて、自然を求める気持ちが少しずつ強くなっていったという。
「街で忙しなくすごしていると、ふと自分はどんな人間だったっけ?なにが好きで、どうしたいんだっけ?と、自分がわからなくなったりして、息苦しく感じることがあります」
だからこそ、定期的に自然のなかへ行き、深呼吸する時間が必要なのだと透子さんは続ける。
「自然に触れていると、自分はこういうものが好きだったなとか、こういう人間だったなって思い出せるんです。自分をちょっとずつ取り戻せるような、そんな感じがします」

呼吸も、考えるスピードも、ゆっくりと。自分にも相手にも、普段より少しおおらかになれる。
「街にいると、自分にも相手にも厳しくなって、いろんなことを求めてしまいがち。そんなときに自然のなかへ行き、深呼吸して、きれいな景色を見ると、『みんなそのままでいいんだ、そのままで最高なんだ!』って思えるんです」
心が折れかけた、冬の谷川岳。それでも、もう一度

これまで登ったなかで、もっとも印象に残っている山を尋ねると、「冬の谷川岳」と返ってきた。登山を始めた年の冬、初めて挑戦した雪山だ。
「とにかく道のりが長くて、寒くて、風もものすごくて。アイゼンで歩くことにも慣れていなかったので、本当にしんどかったです」
あと少しで山頂というところで心が折れかけたものの、仲間たちに励まされてなんとか登頂。想定以上に時間がかかったぶん、帰りはみんなで急いで下山したという。大変だったことも含めて、いまでは忘れられない思い出だ。

「天気には恵まれて、本当に異世界のように美しい景色でした。だから、雪山登山はしんどかったけど、それでもまた行きたい。
もう少し自分の体力やスキルを上げて、今年も再チャレンジしたいですね。前回より心に余裕をもって景色を見ることができたら、山の見え方がまた変わるんじゃないかと期待しています」

山の景色が、仕事での会話を広げてくれる

山ですごした時間は、介護の仕事にも活きている。
「利用者さんのなかには、なかなか外出できない方もいらっしゃるので、山へ行ったときの写真をお見せするんです。すると、『若いころは私も登山したのよ』とか、『富士山に登ったのよ』と話してくださることもあって。写真をとおして少しでも自然を感じてもらえたり、そこから会話が広がったりするのがうれしいですね」
透子さんにとって、施設を利用する人たちは家族のように大切な存在。好きな山の話は、そんな利用者とのコミュニケーションにも一役買っている。
「山でも街でも着られるかな?」が服選びの基準に

山へ行くようになってから、普段の服選びにも少しずつ変化が生まれた。
もともと好きなのは、身体を締め付けず、思い立ったときにすぐ動ける服。ゆったりとしたパンツにTシャツやシャツなど、肩まわりを動かしやすいスタイルが多いという。
「気になるものを見つけたら、すぐそっちへ行きたいんです。街を歩いていて気になる建物を見つけたらサッと見に行きたいし、大好きな猫を見かけたらすぐ写真を撮りたい。だから、服も動きやすいものが好きです」
最近では古着屋で買うTシャツなどに加え、アウトドアブランドのアイテムを日常着として選ぶことも増えてきた。
「山へ行くようになってから、『これ、山でも着られるかな?仕事でも着られるかな?』と考えるようになりました。軽い、乾きやすい、生地が薄くて持ち運びやすい。そうした機能的なものを選ぶことも増えましたね」
透子さんの愛用品
山でも街でも、気負わず使えるもの。ここからは、そんな透子さんが日々愛用している3つのアイテムを紹介。
台湾で購入した太極拳パンツ

台湾を訪れた際、太極拳用品を扱う道具店で購入。雑誌で太極拳パンツを見かけたことをきっかけに興味をもち、現地の人たちが街で太極拳を楽しむ姿を見て、「いつか参加するときに穿きたい」と手に入れた。
太極拳パンツらしいゆったりとしたシルエットと裾のゴム仕様が特徴で、ラフなデザインは普段のコーディネートにも取り入れやすい。さまざまな素材があるなかで、透子さんが選んだのはポリエステル製。軽くて速乾性もあり、街だけでなく山でも重宝している。
「普段着としても使えるし、山でも何度も穿いていて大活躍しています。ゆったり穿けるシルエットや、可愛いタグも気に入っています」

TERREX CLIMACOOL MULTI BACKPACK

アディダスのアウトドアカテゴリー「TERREX」のバックパック。透子さんがまず惹かれたのは、リップストップ生地の格子柄だとか。
「私、格子柄が好きなんです。それで一目惚れしました。すごく軽いのに丈夫ですし、外付けのポケットが深くてボトルや小物がたくさん収まって使いやすい。背面には本や書類を入れられるポケットもあるので、山だけじゃなく通勤にも使っています」
背面には汗を素早く逃がすCLIMACOOLパネルを採用。汗をかきやすい山でも背中が蒸れにくく、快適に背負える。日常使いから登山まで出番が多く、山で同じものを持っている人をあまり見かけないところもお気に入りだという。


ALTRA OLYMPUS 6

友人にすすめられたことをきっかけに購入し、いまでは山へ行くときの定番となったALTRAの「OLYMPUS 6」。
「軽くて、厚いソールのおかげで足が疲れにくいんです。私自身、足幅が広めなんですが、ALTRAはつま先周りにゆとりがあって歩きやすいのも気に入っているポイント。最近はどの山へ登るにも、このシューズで行っています」
山ではモノトーンのコーディネートが多い透子さん。服の色をを選ばず合わせやすく、私服にも取り入れやすいところも気に入っているそう。

この先も、自分が心地よくいられるペースで、仕事と自然のどちらも楽しんでいきたいという透子さん。
「いま、仕事と自然のなかですごすバランスがちょうどよく取れていて、すごく心地いいんです。このバランスをこれからも大事にしていきたいですね。そして、山の楽しみ方ももっと広げていきたい。次はテント泊に挑戦して、きれいな日の出を見てみたいですね」

透子
1998年、宮城県生まれ。20歳で上京し、会社員として4年間勤務したのち介護職へ。2025年ごろからモデル活動を始め、ファッション誌やアウトドアブランドの広告などに出演する。2023年に登山を始め、現在は多いときには週2回ほど山へ。カフェや喫茶店、銭湯、美術館巡りのほか、旅行も好き。なかでも台湾は何度も足を運ぶほど愛着のある場所。廃墟や古い団地など、独特の雰囲気を持つ建物にも惹かれ、各地を訪ねて写真に収めている。
Instagram:@tokoriet_
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PROFILE
VINAVIS 編集部
アウトドアフィールドへ誘うメディア、そして自然のなかにいるような心地よさと冒険心をもって生きる人々を応援する新メディア。厳しい自然環境で磨かれた「機能美」や「哲学」を、都市生活というフィールドにマッチするシーンにを訴求します。またアウトドアで使われる機能やアイテムに触れることで、意識せずに自然とフィールドへと近づいていく気運を醸成します。
アウトドアフィールドへ誘うメディア、そして自然のなかにいるような心地よさと冒険心をもって生きる人々を応援する新メディア。厳しい自然環境で磨かれた「機能美」や「哲学」を、都市生活というフィールドにマッチするシーンにを訴求します。またアウトドアで使われる機能やアイテムに触れることで、意識せずに自然とフィールドへと近づいていく気運を醸成します。



















