
タデイ・ポガチャルがロード2連覇 難コースを66km独走でレムコら振り切りTTの雪辱|UCIロード世界選手権

福光俊介
- 2025年09月29日
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2025年シーズンのロードレース世界王者を決める、UCIロード世界選手権は9月28日に最終種目の男子エリートロードレースを実施。初のアフリカ開催としてルワンダ・キガリを舞台に行われた戦いは、タデイ・ポガチャル(スロベニア)による驚異の独走劇で大きなインパクトを残して終えることとなった。ポガチャルはフィニッシュまで104kmを残した登坂区間で攻撃に出ると、最後の66kmを独走。個人タイムトライアルを勝ったレムコ・エヴェネプール(ベルギー)らの追い上げをかわし、ロードレース2連覇を果たした。
史上最高難度とも言われた獲得標高5475m
初めてアフリカ大陸へと上陸したロードレースの祭典は、最後の大一番へ。大会後半に入ってからは男女ジュニア、アンダー23各カテゴリーでロードレースの世界王者を決めてきたが、大トリとして男子エリート種目が設定された。

レース距離は267.5kmに設定。獲得標高は5475mとグランツールの山岳ステージをも超えるレベルのコース設定がなされた。スタート後、まずは15.1kmのメイン周回を9周。コート・ド・キガリ・ゴルフ(登坂距離0.8km、平均勾配8.1%)と石畳のミュール・ド・キミハーウラ(1.3km、6.3%)が重要区間に。
中盤では周長29.1kmの大周回を1周。モン・キガリ(5.9km、6.9%)、これまた石畳のミュール・ド・キガリ(0.4km、11%)がそびえる。その後メイン周回に戻って6周回。全体を見通すと平坦区間がほとんどない、アップダウンが連続するセッティングとなっている。

フィニッシュまで100km以上残してポガチャルがアタック
リアルスタート直後に複数のアタックから6人の先頭グループが形成。メイン集団ではフランス勢が繰り返し活性化を図り、ジュリアン・アラフィリップが飛び出す場面も。アラフィリップはその後集団へと戻ると、ペースを落とし脱落。体調不良でスタートラインについていたことがのちに判明し、早々にレースを離脱している。
やがてメイン集団ではベルギーがコントロールを開始。スロベニアも数人を前方へ送り出し、両国のペーシングによって先頭グループとの差を2分40秒ほどにとどめた。

レース前半のメイン周回を走り切って大周回に移ると、メイン集団は徐々にペースアップ。モン・キガリの上りで集団の形状が縦長になっていくと、スロベニア勢の牽引によってポガチャルが前方へ。そして頂上手前で大きな局面を迎える。
ポガチャルが猛然とペースを上げ、番手にいたレムコらを一瞬で引き離す。ここに追随できたのはフアン・アユソ(スペイン)だけ。逃げ残っていたジュリアン・ベルナール(フランス)をパスすると、フィニッシュまで104kmを残してポガチャルらが先頭に立った。頂上通過後の下りでイサーク・デルトロ(メキシコ)が合流し、新たな先頭グループは3人に。それも、日頃UAEチームエミレーツ・XRGで走るチームメートが並ぶ形になった。
その先のミュール・ド・キガリでアユソが続けず、トップを行くのはポガチャルとデルトロの2人に。後方では、いくつかに分裂していた追走パックがひとつにまとまり、実質のメイン集団に。ここに加わったレムコは、メイン周回に戻ったところでバイクを交換している。

昨年に続くポガチャルの独走劇 レムコはバイクトラブルに泣く
協調しながら先を急ぐポガチャルとデルトロは、集団に対して約1分のリード。その集団では散発的に前を追う動きがみられるが、スロベニアはプリモシュ・ログリッチを送り込み、追撃の芽を摘んでいく。さらには、レムコに再びのバイクトラブルが発生。しきりにサドル位置を気にする仕草を見せ、ついには耐え切れずストップ。チームカーの到着を待つのに時間を要し、3台目のバイクにまたがるまでに前を行く選手との差が広がっていった。
タイミングを同じくして、メイン集団から3選手が抜け出し追走グループを形成。また、先頭ではデルトロが後退。フィニッシュまで66kmを残してポガチャルが独走態勢に入った。

ひとりで突き進むポガチャルの約1分後ろでは、メイン集団に復帰したレムコが攻撃に出てマティアス・スケルモース(デンマーク)らと追走グループに合流。さらに上りでペースを上げて、スケルモースとベン・ヒーリー(アイルランド)だけが続く。
独走となってからのポガチャルは、上り区間で踏み込んで後続とのタイム差を拡大。残り2周となったところで追走メンバーからレムコがアタックしたが、その状況にもポガチャルは動じず、1分30秒近いリードをしっかりとキープした。
そして、ポガチャル勝利の瞬間。最終周回こそわずかに苦悶の表情を浮かべての逃げとなったが、フィニッシュまでの上りを終えると、ついに笑顔。最後の100mはウイニングライドになって、キガリのコースを征服。2年連続のマイヨ・アルカンシエル獲得を決めた。

最終盤は2番手を走り続けたレムコは1分28秒差でのフィニッシュ。表彰台最後のひと枠をかけた争いはヒーリーが制して、銅メダルを獲得した。
前週に行われた個人タイムトライアルではレムコが圧勝。そのときにはポガチャルがペースに乗せられず、1人後ろでスタートしていたレムコに追い抜かれる衝撃的なレースとなったが、みずからが“本番”に据えたロードレースでねらい通りに雪辱。さらに1年間、世界王者としてアルカンシエルをまとって走ることとなる。

このレースには164選手が出走し、完走したのは30人。過去30年で最小の完走者数で、改めて過酷さを示すものに。日本から唯一の参戦となった留目夕陽は中盤にメイン集団から遅れ、その後リタイアとなっている。
これをもって、ルワンダ・キガリ大会は閉幕。2026年はカナダ・モントリオールで開催される。
優勝 タデイ・ポガチャル コメント

アタックしたときは集団が絞られることを望んでいた。フアン(アユソ)とデルトロと3人になったときは完璧だと思ったし、このメンバーで逃げられることが夢のようだった。ただ、フアンは石畳でトラブルを抱えていて、デルトロも胃の調子を崩していた。結果的に私が早い段階で独走することになったけど、自分との戦いに打ち勝つことができた。
周回を経るたびに上りが苦しくなって、下りでもペダリングを必要とするコースだったから、終盤はエネルギーが尽きてしまっていた。最後の数周回は本当に苦しくて、フィニッシュできることを願いながら走っていた。
何より、ルワンダでの経験は素晴らしいものになった。この1週間は大成功だ。
UCIロード世界選手権2025 男子エリートロードレース 結果
1 タデイ・ポガチャル(スロベニア)6:49:46(Avg. 42.089km)
2 レムコ・エヴェネプール(ベルギー)+1’28”
3 ベン・ヒーリー(アイルランド)+2’16”
4 マティアス・スケルモース(デンマーク)+2’53”
5 トムス・スクインシュ(ラトビア)+6’41”
6 ジュリオ・チッコーネ(イタリア)+6’47”
7 イサーク・デルトロ(メキシコ)ST
8 フアン・アユソ(スペイン)
9 アフォンソ・エウラリオ(ポルトガル)+7’06”
10 トーマス・ピドコック(イギリス)+9’05”
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