高校生のヘルメット着用、着用を阻むのは「周囲の目」 オージーケーカブトが意識調査結果

2026年4月から導入される自転車の「青切符」制度を前に、オージーケーカブトが高校生のヘルメット着用に関する調査結果を発表した。死傷者数が全年齢平均の4倍に達する高校生世代。着用率が伸び悩む背景には、機能面での不満よりも「周りが被っていないから」という心理的なハードルがあることが浮き彫りとなった。

2025年12月2日、ヘルメットメーカーのオージーケーカブトは、高校生の自転車ヘルメット着用と安全意識に関する調査結果を公表した。来春（2026年4月）から16歳以上を対象とした交通反則通告制度（いわゆる青切符）の運用が開始されることを受け、自転車通学が主となる高校生の安全対策に注目が集まっている。

死傷者は全体の4倍、しかし着用率は1割

警察庁のデータ（2024年）によると、自転車乗用中の死傷者数（10万人当たり）において、15〜19歳の高校生年代は218人に上る。これは全年齢平均の53人と比較して約4倍という極めて高い数値だ。

一方で、ヘルメット着用率には大きな乖離がある。事故時の中学生の着用率が約70%であるのに対し、高校生はわずか11%。中学校までは校則で義務付けられていたヘルメットが、高校進学とともに「任意」や「努力義務」に変わることで、着用習慣が途絶えてしまう現状がある。

「機能的な不満はない」が9割。着用を阻むのは”周囲の目”

オージーケーカブトが大阪・兵庫・福岡で自転車通学時にヘルメットを着用し始めた高校生4,440名に行ったアンケートからは、意外な実態が見えてきた。

実際に着用している生徒の95%が「頭部を守るために有効」と回答し、さらに90%が「着用する上での課題はない」と答えている。現在の高校生世代は幼少期からヘルメット着用が当たり前だった世代であり、ヘルメットそのものへの抵抗感は想像以上に低いようだ。

では、なぜ着用が進まないのか。浮き彫りになったのは「周りが着用していないから恥ずかしい」という心理的バリアだ。

愛知県で開催された「ヘルメット着用を考えるシンポジウム」に参加した高校生からは、「着用者が少数派であるため、周りに合わせて着用を避ける」という声が上がった。興味深いのは、多くの生徒が「県内で統一して校則化してほしい」と望んでいる点だ。自分だけが目立つのではなく、ルールとして全員が被る状況になれば、抵抗なく着用できるという高校生の本音が垣間見える。

「青切符」導入と安全意識の変容

2026年4月からは、改正道路交通法に基づき、16歳以上の自転車利用者に対して反則金を求める「青切符」制度がスタートする。高校生も取り締まりの対象となるため、これまで以上にルールの遵守が求められることになる。

アンケートでは、ヘルメットを着用し始めた高校生の85%以上が「交通安全への意識が高まった」「慎重な運転を心がけるようになった」と回答している。ヘルメットを被るという行為自体が、安全運転へのスイッチ（行動変容）につながっていることが示唆された。

先進自治体の取り組みと今後の展望

現在、公立高校で自転車通学時のヘルメット着用を義務化している都道府県は全体の1割強にとどまる。しかし、福岡県では県立学校での義務化に踏み切り、愛知県でも生徒主体による啓発活動「命を守るヘルメット着用促進グランプリ」が開催されるなど、地域単位での動きは活発化している。

また、自転車活用推進議員連盟の橋本聖子会長も、12月の総会にて「自転車に乗るときにヘルメットをつけていないことはあり得ないという感覚を」と述べ、小中高生の着用率100%を目指すべきだと訴えた。

「かぶるきっかけが事故では遅い」

オージーケーカブトはそう警鐘を鳴らす。青切符制度の導入を数ヶ月後に控えた今、高校生の命を守るためには、個人の自主性に任せるだけでなく、「被ることが当たり前」となる環境づくりやルール作りこそが、大人が果たすべき責任なのかもしれない。

問：オージーケーカブト　https://www.ogkkabuto.co.jp/