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日本を味わう! 黄金KAIDOチャレンジライド550km

2025年10月11日(土)~14日(火)の4日間、日本海から太平洋までを走り抜ける「黄金(おうごん)KAIDOチャレンジライド」が開催された。黄金KAIDOとは、徳川家康公が開発に力を注いだ、佐渡金山、土肥金山、そしてその道中にある湯之奥金山、金鶏(きんけい)金山を結んだルートのこと。新潟・長野・山梨・静岡の4県が共同して整備を進めており、サイクリストが走り、自然や歴史に触れ、楽しめるコースが設定されている。

中央日本4県を結ぶスケールの大きなコースに挑む

中央日本4県 黄金KAIDOサイクルルート 全長550km(輪行区間含む) 獲得標高7,908m

中央日本四県 黄金KAIDO
サイクルルート

「旧街道を巡る自然と歴史・文化に満ち溢れた自転車旅の道」というコンセプトのもとに生まれた黄金KAIDOは、全長約550km(輪行区間含む)、獲得標高7,908mと壮大なスケールをもつ。かつて、塩や海産物、生活物資を運ぶ人々が多く往来した主要道や裏道をつないでいて、ルート沿いには歴史や文化の香りを感じるスポットが点在している。
今回は、その黄金KAIDOを4日間かけて走破したツアーの様子をお届けする。初日はグループライド、2~4日目はフリーライド形式で3名のサイクリストが参加した。順路は新潟県から長野県、山梨県を通って静岡県に向かっている。(*ツアーではルートを一部変更して実施しています)

Day.1 佐渡ゴールデンアイビスの選手がサポート

きらりうむ佐渡~直江津港 61km 獲得標高840m

初日は新潟県佐渡市にある、きらりうむ佐渡からスタート。本州と海を隔てた佐渡島から4日間の長丁場が始まる。この日は、佐渡を拠点に活動する自転車チーム「佐渡ゴールデンアイビス」の重田倫一郎選手と鈴木道也選手が、島内の黄金KAIDOのルートを案内。地理に明るい両選手のおかげでライドがスムーズに進む。

佐渡ゴールデンアイビス

スタートは佐渡金銀山のガイダンス施設、きらりうむ佐渡。参加者3名と佐渡ゴールデンアイビスの重田倫一郎選手(右から2番目)、鈴木道也選手(右)の5名でサイクリング

Day.1 小木港(佐渡市)に到着。フェリーで直江津港(上越市)へ

5名は佐渡島の西側を通って南へ。島の突き出した海岸線を回ると、山と海の景色が一変して走っていて飽きない。適度なアップダウンが心地よく、重田・鈴木両選手から「地元ならではの話」を聞くこともできて、雰囲気は和やかだ。佐和田(さわた)海水浴場のあめやの桟橋、田切須(たぎりす)のヤブツバキ林、宿根木(しゅくねぎ)の集落を見て回りながら、小木港を目指した。

佐渡島の西側、真野湾に面した佐和田海水浴場。あめやの桟橋
佐渡では各所にヤブツバキ林がみられる。田切須のヤブツバキ林は新潟県下最大級で天然記念物に指定されている
北前船の寄港地として発展した小木海岸の入り江にある宿根木集落。静かな時間が流れる
佐渡のほぼ中央、新穂地区にあるトキの森公園。黄金KAIDOから少し離れるが余裕があればこうした寄り道も◎
佐渡島の南東部にある小木港に到着。参加者はフェリーを使って本州の直江津港へ。約2時間半の船旅だ

Day.2 元アテネ五輪ロードレース代表の田代恭崇さんが参加

出発前に直江津港で田代さん(左)からルートの説明を受ける。山田さん(中央)、GARRYさん(右から2番目)。SHOKOさん(右)

直江津港~信濃大町駅 133km 獲得標高2,779m

2日目は、直江津港(新潟県上越市)から信濃大町駅(長野県大町市)までの133kmのルート。獲得標高は2,779mで、この日が最も上りが多い。各自が自由に走るフリーライドで、ゲストとして元アテネ五輪ロードレース代表の田代恭崇さんが加わった。ときに一緒に、ときにそれぞれがマイペースに走りながらゴールを目指していく。

参加者のひとり、紅一点のSHOKO(ショーコ)さんは、「オリンピックに出た人と一緒に走れるのは感激」と笑顔で話す。夫で自転車好きのGARRY(ゲーリー)さんとアメリカのカリフォルニアに住んでいて、このイベントに合わせて帰国した。

もうひとり、新潟県南魚沼市から参加した山田 剛さんは、県内のサイクルイベントに参加しようと役所の地域振興課に問い合わせたところ、たまたまこのイベントを知ったとのこと。地元のゴールデンサイクルルート(GCR:全長193km)を走るのが好きで、もっと長い距離もチャレンジしたいとエントリーした。<

Day.2 坂を上って、また上る!

序盤は上越市の平野部をグループで走っていく。左右に田園が広がっていて稲穂がたなびく。黄金KAIDOの由来は4つの金山にちなんだものだが、稲穂の美しい景色もある意味、黄金KAIDOの「金」の一つといえる。南に向かって20kmほどペダルを漕ぎながら、妙高高原へと続く北国(ほっこく)街道を使って野尻湖へ。標高654mまで上る坂道は、平均勾配こそ5%に満たないものの距離は25kmと長めだ。

平野部の田園風景。4日間のルート沿いには米の産地も多く、美しい景色を見られる
北国街道は佐渡で産出される金銀の江戸への輸送路としての歴史をもつ。新潟県と長野県の境を流れる関川のトンネルをくぐって長野県へ
長野県側から見た関川の関所。道の歴史館があり、当時の金銀輸送などがうかがえる
野尻湖。透明度が高く、太陽の光によって湖面がさまざま色に変化する

野尻湖でひと息入れたのち、北国街道から信濃信州新線(県道36号)に入って戸隠山と飯縄(いいづな)山の間を抜けていく。木々が生い茂る静寂な空間に包まれたヒルクライムはどこか神秘的でもある。戸隠(とがくし)神社に至る約20kmの道中には勾配10%超の区間がいくつかあり、「この上りが29kmも続くとさすがに脚にきますね」と山田さんは苦笑する。4日間の行程のなかで、ここが一番印象に残っていると振り返る。

戸隠神社の奥社を訪れたSHOKOさんは、「樹齢400年を超える杉の参道や、森の奥深くに静かに佇む神社を見て、日常からの解放感を得られた」と話してくれた。

野尻湖の湖畔沿いで見かけた野菜の直売所
勾配のきつい坂が多い信濃信州新線(県道36号)。黒姫や戸隠などの観光ルートにもなっている

Day.2 北アルプスのふもと白馬村から信濃大町へ

この日は本当に上りが多く、白馬村に向かう途中には大望(だいぼう)峠と白沢峠がある。大望峠は、戸隠と鬼無里(きなさ)の境にあり、上りは約3km。頂上付近の展望台からの眺めがいいことでも知られている。予定通り13時ごろまでに全員が旅の駅 鬼無里に到着し、それぞれランチ休憩をとった。

大望峠の頂上付近からの眺め。美しい自然が目に飛び込んでくる
大望峠の展望台。戸隠連峰や北アルプスを一望できる絶好のロケーション
旅の駅 鬼無里のそば屋の十割そば。鬼無里地区を中心とした長野市のそば粉だけを使用していて風味が豊か
旅の駅 鬼無里のすぐ近くにある、いろは堂 鬼無里本店のおやき。もちもちの食感がおいしい

ランチを早めに済ませた山田さんは、「上りは苦手だから」とひと足早く白沢峠へと向かっていく。県道406号を約15km上って白馬村へとつながる白沢洞門をくぐると北アルプスが出迎えてくれる。ここまで走り抜いてきたサイクリストへの自然からの贈り物のようだった。

周囲を山々に囲まれた鬼無里地区。裾花川(すそばながわ)沿いにひっそりと佇む
白沢洞門。鬼無里と白馬村結ぶ白沢峠のルート上にある

白沢峠を下るとあとは平坦路がメイン。17km先にある2日目のゴール地点、信濃大町駅に向かって白馬村市街、木崎湖、中綱湖、青木湖の湖畔沿いを走っていく。市街に入ったときに時刻は16時を迎えようとしていたが、この先に長い上り区間はないので気持ちは楽になる。信濃大町駅には山田さんが先にフィニッシュし、しばらくして青木湖のカフェに立ち寄っていたGARRYさんとSHOKOさんが姿を現した。2~4日目はフリーライドだから参加者は気になった場所に自由に立ち寄って楽しめる。フレキシブルな行動が可能なので、日の入り前のゴールを目指せば問題ない。

2日目は朝の6時15分に出発し、日の入り直前まで時間を活用してゴールへ

Day.3 果樹園を抜けて塩尻峠へ

3日目の起点は信濃大町駅。空が明るくなる日の出の時間に合わせて出発

信濃大町駅~櫛形総合公園 144km 獲得標高1,534m

3日目、みなさんに昨日の疲れが残っていないかを確かめるように田代さんが集団の先頭に立って走りだす。この日の最初の目的地は50km先にある道の駅、今井恵みの里。ルートは、国道147号線の西側を通る、日本アルプスサラダ街道。クルマの通りが少なく、サイクリストが安心して走れる道だ。黄金KAIDOは、そんな走りやすいルートを選んで設定されている。

朝の気温は20℃。安定しない天候でときおり雨がポツポツと降り出す
街道沿いには果樹園が多く、美味しそうなリンゴが実っていた
買い物を楽しむSHOKOさん。お土産はサポートカーが預かってくれる。台湾生まれ、アメリカ育ちのGARRYさんは、万屋(よろずや)の品物に興味をそそられる
長野県はフルーツ王国、リンゴやブドウ、ナシなどの生産量は上位を占める

松本市から塩尻市に入り、塩尻峠を越えて諏訪湖へ下っていく。日本列島を南北に横断する旅では天候の変化はつきものだが、この日の塩尻峠の頂上付近は霧に包まれていて幻想的な雰囲気が漂っていた。距離は約6kmで平均勾配は約4.5%、勾配が10%を越える区間も一部にある。

GARRYさんはSHOKOさんを気づかいながらも、時折ペースを上げて先行。上り区間をしっかり楽しんでいた
山田さんは、昨夜ぐっすり眠れたおかげで体力もほぼ回復。ペダルを踏む足取りも軽やかだ

Day.3 日本一の山、富士山が見えてきた

塩尻峠を越えて諏訪湖に近づくと空が明るくなり、ときどき雲のなかから晴れ間がのぞく。気温も上昇して、いいサイクリング日和になってきた。諏訪湖のサイクリングロードは自転車と歩行者の道が分離していて走りやすい。おたがいの安全性を高める配慮がなされている。

諏訪湖で待ち合わせして4人で湖畔沿いを気持ちよくサイクリング
長野県の塩尻市、諏訪市、茅野市、富士見町などを通る国道20号。茅野市の金沢地区に金鶏金山の鉱山跡がある

諏訪湖から国道20号を南下すると、ゆるやかな上りが約10km続く。やがて道は高原の町・富士見町に入り、そこから下りへ。気づけば3県目の山梨県に突入だ。北杜市や韮崎市では、正面に富士山、背後に八ヶ岳、右手には南アルプスの鳳凰三山――まるでサイクリストを歓迎するような雄大な景色が、「よく来たね」と語りかけてくるようだった。

韮崎市内の国道20号から西の裏道に入り、小武川大橋(こむかわおおはし)を渡る
富士山に向かって走っていくような感覚を味わえる

Day.4 富士川沿いを南へ

GARRYさんの出発前のルーティンは、SHOKOさんと自身の自転車の空気圧のチェック。走行中のトラブル防止に努める

櫛形総合公園~沼津港 106km 獲得標高1,120m

いよいよ最終日。3日目のゴール地点である南アルプス市の櫛形総合公園に集まって、静岡県の沼津港へ。当初は清水港から駿河湾フェリーを利用して土肥金山に向かう予定だったが、フェリーが故障で運航できないためゴールを変更して実施した。

出発後、富士川大橋を渡り、県道9号と国道300号(本栖みち)を使って身延町へ、この区間は心地よい下り坂が続きペースも快調だ。途中に短い距離の峠があるものの、2日目に60km近い上りを経験しているので苦にならない。下部温泉を通過し、まるで駆け抜けるように一気に40kmの道のりを進んだ。

富士川大橋を渡る。昨日まで間近に見ていた南アルプスが少しずつ遠のく
国道300号。山の緑と川のコントラストが綺麗だ
日本の名湯100選に選ばれている下部温泉。近くには黄金KAIDOの4つの金山のうちの一つ、湯之奥金山の博物館がある
JR身延駅前のしょうにん通り。瓦屋根と白壁づくりの建物が並ぶ

Day.4 太平洋岸自転車道で沼津港へ

身延町からは静岡県富士宮市を結ぶ県道10号(富士川身延線)を利用して県境を目指す。引き続き富士川沿いを20kmほど下ると、苔むした緑の道が印象的な小さな峠があらわれる。そこを越えれば静岡県だ。富士宮市から富士市に向かうにつれて平野が広がり、富士川の河口に差し掛かると太平洋が見えてくる。初日に見た日本海とはまた趣の異なる、荘厳な海だった。

この日は雨が降ったり止んだりの安定しない天気。とはいえ、みんな楽しそう
県境へと続く峠の上り。交通量が少なく静かな時間を過ごした
こちらは別カット。雨に濡れてしっとりした苔の法面(のりめん)が美しい

心地よい潮風が吹き抜ける太平洋岸自転車道。ゴールの沼津港まで残すは平坦な道20kmだ。日本海から山々を越え、歴史を刻む道を走り継いでついに駿河湾へ――いよいよ4日間の旅路の集大成、中央日本4県を縦断する黄金KAIDOの制覇が目前に迫った。3人とも元気な姿で無事にフィニッシュし、おたがいに喜び、健闘をたたえながら幕を閉じた。

駿河湾を眺めながらゴールの沼津港へ
ベテランサイクリストの山田さんは、「思ったよりも大丈夫で問題なかったです。明後日まで仕事を休みにしていましたが、この調子なら出勤できそう(笑)」、と4日間の長距離ライドを完走した自信を語る
旅を終えてSHOKOさんは、「このルートは日本を味わっている。いいところをたくさん巡ることができました」と心からの満足を表現。GARRYさんもまた「日本アルプスの眺めが素晴らしかった」と、旅の感動を振り返った

「中央日本4県黄金KAIDOサイクルスタンプラリー」を開催中!

「たのしいがゴール」を合言葉に、サイクリストを応援するツール・ド・ニッポンは、2025年9月19日(金)~12月28日(日)の期間、「中央日本4県黄金KAIDOサイクルスタンプラリー」を開催している。これはサイクルルートの周辺にある史跡や飲食スポットをスタンプラリー形式で集めていくイベントで、スポットを巡って獲得した地域通貨は県産品が当たる抽選に応募できる。中央日本4県(新潟・長野・山梨・静岡)の魅力に触れながら、ぜひスタンプラリーで黄金KAIDOを制覇しよう!

スタンプラリーについて
詳しくはこちら

黄金KAIDO公式サイト

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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