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驚きのフォルム最速のエアロロードバイク「ファクター・ワン」は驚くほど普通だった|FACTOR

イギリスのファクター・バイクスの話題作、新型エアロロード「ONE(ワン)」。衝撃的なバイオネットフォークを搭載し、業界の注目を集めた。ここではワンを試乗した安井行生、バイシクルクラブ編集長山口がそのレビューをお伝えする。

“形状的異端児”はフォークの後ろに脚を隠す構造から生まれた

「どのメーカーも風洞実験やCFD解析をしているから、最近のロードバイクはどれも似てくる」などとよく言われる。完全には間違いではないかもしれないが、少なくとも正確ではない。風洞実験やCFDは、あくまで「人間が考えた形の空力性能がいいのか悪いのか」を判断するものであり、「新しい形を考え出すもの」ではないからだ。

形を考え出すのは人間である。最近のエアロロードがどれも某社の某エアロロードにそっくりであり、最近の万能ロードがどれも某社の某万能ロードに瓜二つなのは、各社が某社の模倣をしているからだ。模倣と言って悪ければ、参考にしているからだ。要するに真似である。今後は「形を考える」のがAIをベースにした自動設計が担うようになるのかもしれないが、その前提条件を正しく設定しなければ正しい結果にはならない。下手をすれば自動設計は「離陸するレーシングカー」を作り上げる。設計において人間の責務は小さくならない。

エアロロードの分野において、ときどき形状的異端児が出現するのは、「形を人間が考えているから」である。おそらくサーヴェロ・S5もトレック・マドン7もコルナゴ・Y1RSも、<こんな形を思いついた→CFDや風洞実験にかけてみた→いい結果が得られた→この形で開発を進めよう>というプロセスで生まれたのだろう。

もちろん、ロードバイクはさまざまな状況で使われる乗り物だから、重量・ジオメトリやハンドリング・ポジション自由度・剛性感・動力伝達性・整備性・コストなども重視しなければならない。エアロロードがエアロに特化した空力オバケになれない理由は、UCIルール以外にもたくさん存在する。

2025年の暮れ、ファクターが新型ワンを発表し話題を呼んだ。見るからに“形状的異端児”である。話題を呼んでいるから、各メディアをはじめとしたウェブ上に膨大な量の情報が出ている。だからスペックや誰が使ってどのレースで勝ったかという情報の羅列を繰り返すことはしない。ここでは、これまで空力の専門家やメーカーの技術者に話を聞いて得た付け焼き刃の知識をもとに、素人なりにこのワンの空力設計を少しだけひも解くことに挑戦する。

ワンをよく観察すると、その異端っぷりはハンドル周りに集約されており、ヘッドチューブ以降は普通の形であることが分かる。手でヘッドから前を隠してワンを横から見てほしい。とたんにそこいらのエアロロードと見分けがつかなくなるはずだ。自転車の空力性能のほとんどを決めるのはハンドル~ヘッド~フォーク~前輪だから、「フロント周りには凝るが、後半はオーソドックスにまとめて済ませておく」というその判断は理論的に真っ当だ。

横から見ると「事故りました?」と聞きたくなるほどヘッドが立ってみえるが、これは錯覚。操舵軸は常識的な位置にある。そのコラム軸から前方にフィンを伸ばし、その直下からフォークブレードが生えている。コラム軸とフォークブレードが一直線上にないからヘッドが異様に立っているように見えるのだ。なぜわざわざこのような構造にしたのかは不明だが、おそらく

  • ヘッドチューブをできるだけ薄くしたかった
  • ヘッドチューブを前後に長くしたかった
  • フォークブレードとタイヤとの距離をとりたかった

などが理由だろう。もちろん、近年のプロレース界で主流になっている前乗りに最適化されたというジオメトリも理由の一つだと思う。

横から眺めるとつんのめったようなフォークが特徴だが、前から見ると異常なほどにワイドスタンスなフォークブレードが目を引く。上部では車速の倍のスピードで空気を切り裂くホイールとフォークブレード周辺の相互干渉による空気抵抗悪化を抑えることに加え、このフォークには「人間込みで空気抵抗を下げる」という意図もあるはずだ。

空気抵抗とは「圧力の差によって生まれる抵抗」である。物体が空気中を進むと、物体が空気をかき分けるため、物体の後方に圧力が低いエリアができる。その負圧エリアに物体が引っ張られる。ざっくり言うとこれが空気抵抗の正体である。

人間が空気中に曝露されている自転車の場合、人間が空気抵抗の70~80%を占める。いくら機材の空気抵抗を下げても、人間が乗っている限り、自転車の空力性能には限界があるのだ。

2本の脚がなければ自転車は前に進まないが、空気抵抗的には脚なんか最悪の存在である。円柱状なので空力的には非常に不利な形状であり、走行中はペダリング動作によって空気をかき乱す。それに風が当たると後方に大きな負圧エリアが発生し、自らの体を後ろに引っ張り続ける。

解決策がないわけではない。体の前に小さなものを置いて予めある程度の負圧エリアを発生させておき、その負圧エリアで体を包んでしまうことだ。こうすることで、体から出るはずだった負圧エリアが小さく抑えられる。これはレギュレーションで縛られているモータースポーツの世界でも用いられる手法である。

さて、この新型ワンのフォークブレードは、そんな2本の脚の直前にある。

左右に大きくせり出したフォークブレードによって負圧エリアを発生させておき、空気抵抗の大きな発生源である2本の脚をそれで覆ってしまう。このフォークの意図はそれではないか。

事実、本国サイトには以下のような記述がある。

「ワンのフロント周りの設計は、単に空気を切ることだけが目的ではありません。空気がどのように流れていくかを指示し、システム全体でよりスムーズな流れを確保します」

しかし、こうして書くのは簡単だが、それを実際に有効に機能させるのは難しい。先述のような空力効果を狙ったと思われるエアロロードはこれまで数台存在するが、風洞実験でスモークを流して観察すると、全く思い通りに働いていない(むしろ悪さをしている)ことがある。

この新型ワンの実際の性能はどうなのか。この異端の形がどこまで扱いやすく仕上がっているのか。残念ながら試乗車のサイズが大きすぎたので、山口編集長の助けを借りながら評価した。

驚くほど普通のハンドリング、誰でもわかる走りの軽さ

山口:一番の驚きは「普通」という……。

安井:いやー。ちょっとこれはびっくりですね。「こんな形してるんだから、まともに走んないんだろうな」「ハンドリングはメタメタでフレームはガチガチなんだろうな」なんて思ってたんですが、いい意味で普通。トラックバイクに変速機付けましたー!みたいなバイクですが、すごいナチュラルに扱えますね。僕にはフレームサイズが大きかったので、ちょい乗りしかできませんでしたが、それでも分かる。癖がほぼない。ハンドリングが自然で、下手なエアロロードよりも扱いやすいかもしれない。

山口:そうですね。こういうフレームって、コーナーで倒すときに癖がありますよね。倒すきっかけ作りがしにくくて、無理やり倒してようやく曲がる、みたいな。このバイクはそんな違和感がない。ハンドリングの素直さにびっくりです。かといって上りが苦手じゃない。

安井:軽量バイクほど上るわけじゃないですが、普通のエアロロード同じくらいの感覚で上れますよね。フォームに制限があるので、この乗り方に合わせられるかというところは考えたほうがいいとは思いますが、フレーム剛性も見た目ほどの癖はない。たぶん誰もが普通の感覚でペダリングできます。

山口:そうですね。かなりの前乗り前提のポジションなので、このフレームに合わせた乗り方をしてみたんですが、ロードバイクなのに自然にTTバイク的な乗り方ができるんですよ。前傾になるから臀筋が使いやすくなる。その結果、なんと言えばいいのか……新しい走り方に開眼できるというか。

安井:で、肝心な性能ですが、平地速くないですか?

山口:速いです。明らかに。

安井:ですよね。30km/hちょいくらいから「他のバイクより速いかもしれない」って感じられる。上の文章でも書いた「人間の体を含めたマン-マシン系のシステム」として空力を磨かないとここまでにはならないんじゃないかと思います。しかも、その空力性能だけじゃなくて、ジオメトリ、ハンドリング、フレームの剛性感含めて、すごくきっちり磨いてきた。

山口:隅々まですごい考えてますよね。こう見えて空力一発勝負の自転車じゃない。

安井:キワモノじゃないですね、これは。すごい真面目に作ってる。形だけじゃなくて、目に見えないところまで煮詰めてきてる。選手なら楽しくてしょうがないでしょうね。これに乗れる選手は幸せでしょう。

山口:この前乗りが実際のレースや長い目で見たときにどういう影響が出るのかはちゃんと判断しないといけませんが、これは衝撃でした。久々にここまで楽しいバイクに乗りましたよ。これに追随するメーカーが出てほしいですね。

安井:いやもう各社マジの追走体制に入ってるでしょう。

山口:エアロロードの行方を変える一台になりますね。

国内展開でのラインアップ

日本国内での価格はフレームセットが1,155,000円(税込)。完成車はシマノDura-Ace、Ultegra、スラムRED AXS、Force AXS、カンパニョーロSuper Recordなど豊富なラインアップが用意される。また、シマノ完成車にはアップチャージでCeramicSpeed製OSPW(ビッグプーリー)へのアップグレードオプションも用意される。

カラーラインアップは、「Blush(ブラッシュ)」、「Nimbus Grey(ニンバスグレー)」、「Onyx Black(オニキスブラック)」、「Silverstone(シルバーストーン)」の4色展開。サイズは47、52、54、56、58の5サイズが用意される。

FACTOR ONE

価格(すべて税込)
フレームセット:1,155,000円
フレームセット(Black Inc 62ホイール付):1,562,000円
シマノ Dura-Ace 完成車:2,090,000円
シマノ Ultegra 完成車:1,815,000円
スラム RED eTap AXS 完成車(PM付):2,145,000円
スラム Force eTap AXS 完成車(PM付):1,848,000円
カンパニョーロ SUPER RECORD 完成車:2,200,000円

※シマノ完成車はCeramicSpeed OSPWアップチャージ(+82,500円税込)が可能

  • フレーム素材:テキストリーム・カーボン、ピッチ系ファイバー、ナノレジン
  • フレーム重量:900g(サイズ54)
  • フォーク重量:540g
  • タイヤクリアランス:実測34mm(公称28mm)
  • サイズ:47、52、54、56、58
  • カラー:Blush、Nimbus Grey、Onyx Black、Silverstone
  • ハンドル:専用インテグレーテッドバーステム(サイズ:1/2/3/4/5/1H/2H/3H)

問:トライスポーツ https://www.trisports.jp/

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PROFILE

安井行生

安井行生

大学卒業後、メッセンジャー生活を経て自転車ジャーナリストに。現在はさまざまな媒体で試乗記事、技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半を自転車につぎ込んできた。

安井行生の記事一覧

大学卒業後、メッセンジャー生活を経て自転車ジャーナリストに。現在はさまざまな媒体で試乗記事、技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半を自転車につぎ込んできた。

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