BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • VINAVIS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • FUNQ NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • Kyoto in Tokyo
  • タビノリ

STORE

  • FUNQTEN ファンクテン

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ

山で出会った光を、もう一度見つめ直す――美術家・山西ももさん|だから、私は山へ行く#37

溶かした金属を鋳型に流し込み、かたちを生み出す「鋳金(ちゅうきん)」。東京藝術大学でその技術を学んだ山西ももさんはいま、「光を鋳造する」というテーマで写真作品を発表している。世界の山々を歩く彼女が、唯一無二の表現にたどり着くまでの物語。

「だから、私は山へ行く」
記事一覧を見る

山を歩くと“自分”が消えていって、土地の声が聞こえやすくなる

2025年に写真集『光の王国』を発表した山西ももさん。舞台となったのは、ネパール領内の自治王国として2008年まで存続したムスタン王国だ。ヒマラヤ山脈の奥深くにあるこの地を訪れた彼女は、現地で集めたダンボールなどを使ってピンホールカメラを手作りし、風景や人物、動物などを撮影している。ピンホールカメラとは、レンズを使わずに針穴(ピンホール)から光を集め、内部に像を映し出すカメラのことだ。

「現地のものを使って鋳型を作るようにカメラを作り、そこに土地の光を取り込んで写真として定着させる。鋳金を学んできたこともあって、『光の鋳造』が私にとっての大きなテーマなんです」

まっすぐな眼差しで話すももさんの作品には、被写体と淡い光が溶け合うような美しさがある。だれかの夢に迷い込んだような、土地の記憶を覗き込むような……。独特の空気感をもつ写真は、どのようにして生まれたのだろう?

山と鋳金と写真と

大阪で生まれ育ったももさんが、山と出合ったのは小学校2年生のころ。父とともに歩いた木曽駒ヶ岳がきっかけだった。

「舗装されていない道を歩いたり、湧き水を飲んだり、稜線の強風で息が詰まりそうになったり……。都会育ちの私にとって、初めての山歩きは『これが地球か!』と衝撃を受けるような体験でした。その後も父とは北岳に登ったりしたのですが、山にいるときの自由な感覚が楽しくて……。しんどさはあったけれど、すごくいい思い出として記憶に残っています」

▲4歳のころ、家族で訪れた屋久島の紀元杉

中学生以降は部活などで忙しくなり、山に行くことは少なくなったというももさん。再び山に登るようになったのは、東京藝術大学に入学したあとのこと。工芸科で鋳金を専攻するいっぽうで、山岳部に所属。モンベルでアルバイトを始めたこともあって、国内外のさまざまな山を歩くようになった。

「普段の私は、けっこう思考が散漫としているんです。でも、山を歩いていると、余分なものが削ぎ落とされていく。歩いて、食べて、寝る……。シンプルな行為のなかで、思考が整理されて本質的なものが見えてくる感覚が、私にとっての山の大きな魅力です」

写真を始めたきっかけも、山だった。ある年の春の唐松岳で、山岳収集家の鈴木優香さんと偶然出会い、彼女の影響でフィルムカメラを撮るようになったという。

山と鋳金と写真と――。現在の作品を構成するこれらの要素が交差したのは、卒業制作として手がけた作品だった。

「自分のなかで一番気合いが入っているのは登山! だから、山で得た経験を作品にしたい」と考えたももさんは、テントを担いでアラスカの大地を歩き、野生のムース(ヘラジカ)を観察。その姿をオブジェとして制作し、写真とともに発表した。

「写真を学ぶために、写真家の石川直樹さん、石川竜一さん、野口里佳さんのワークショップに参加したことも大きな経験でした。とくに印象的だったのが、『1枚の写真が世界の価値観をひっくり返すことがある』という考え方。生活を豊かにする工芸よりも、実用性はなくても世界の価値を変換できるような作品をつくりたいと考えるようになりました」

▲学生時代に挑んだアマ・ダブラム(6,856m)。初めて高所登攀を経験し、高所登山の厳しさなどを学んだという
▲ムスタンのローマンタン村近郊に残る洞窟式住居。「作品は、旅で出合った風景や人々の営みへの関心から始まります」

光の王国と出合う

大学卒業後は大学院に進み、その後も国内外の山々を歩きながら自身の表現を模索していたももさん。転機となったのが2019年。ムスタン王国との出合いだ。

「カクベニ村という場所を訪れたのですが、アンモナイトの化石がゴロゴロ転がっていたり、古代の洞窟群があったり……。とても不思議な場所で、感動しました」

ムスタンでの日々は、ももさんの思考に化学変化をもたらした。割れた石の中から現れた化石は〝時間の鋳造物〟のように感じられたし、無数の洞窟はピンホールカメラを連想させた。そうした経験はやがて「光を鋳造する」という発想につながり、数年間の制作期間を経て『光の王国』として実を結ぶ。鋳型に金属を流し込むことでかたちが生まれるように、カメラの小さな穴から光を取り入れてフィルムに定着させる……。それは、大地に堆積する光や時間を記録し、未来に運ぶような試み。鋳金と写真を行き来しながら作品をつくってきた彼女だから生まれた表現に違いない。

▲“疑問”が創作の原動力だというももさん。「最新のカメラで撮る写真は、なにを写しているのか」と感じたことや工芸的な視点から、現地の素材でカメラを自作するようになったそう

さまざまな出合いを経て、「光を鋳造する」というテーマにたどり着いたももさんは、この春、標高6190mのデナリにソロで登頂を果たす。アラスカの旅は、創作と向き合う日々でもあったという。大きな荷物を背負って極寒の大地を歩き、研ぎ澄まされていく感覚のなかで、思索をめぐらせる。そこには喜びだけでなく、孤独や迷いもあるはずだ。ももさんを新たな旅に向かわせる原動力とは。

「自分自身が経験した世界のあり方や構造を、作品を通じて可視化したいという思いがやっぱり強いです。もちろん不安はあるけれど、やってみないとわからないから、やるしかない! 三姉妹の末っ子なので、負けず嫌いなんです(笑)」

山西もも
1995年大阪府生まれ。美術家。2021年に東京藝術大学美術研究科鋳金専攻修了。学生時代は山岳部に所属し、日本の山々をはじめ、キリマンジャロやアラスカ、ヒマラヤやカラコルムの山々を歩く。2025年にネパールのムスタン地方を舞台とした写真集『光の王国』を発表。2026年11月19日〜2027年1月11日に開催される「東京都美術館100周年記念 あなたが世界を読むために」に作品を出品する。
https://www.instagram.com/momoyamanishi/

 

\ランドネ最新号はAmazonをチェック/

[itemlink post_id=”1088096″]

SHARE

PROFILE

ランドネ 編集部

ランドネ 編集部

自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

ランドネ 編集部の記事一覧

自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

ランドネ 編集部の記事一覧

RECOMMEND ITEM

[ 公式オンラインショップおすすめアイテム ]

No more pages to load