
手放して、初めて見える景色。登山と人生の軽量化
宇宙HIKE
- 2026年09月22日
「思い切ったことをする人だよね」と言われることがある。長年勤めた会社を辞め、まったく違う業界へ転職したからだ。けれど、自分ではそんな大層な人間だとは思わない。パッとその場で飛び出すような瞬発力は持ち合わせていないし、普段衝動に駆られて買いものをするようなこともほとんどない。
私の「思い切り」の正体

私が「思い切った行動」を起こすとき、それは風のように軽やかなものではない。悩んで、ためらって、それでも「これだ!」と心が決まった瞬間、自分でも驚くほどの勢いで突っ走ってしまう。我ながら、なんとも不器用な話だと思う。

そうやって突き詰めていくうちに、ようやく気づく。本当に手放せないものが何か。本当に向かいたい場所はどこか。その答えが見えた瞬間、あとは自然と体が動いているのだ。

思い切りとは、瞬発力じゃなかった。「これだ」と心が決まるまで諦めない、ただそれだけのことだったのかもしれない。そうやって私が「思い切って」始めたことのひとつが、登山だ。山を歩く人たちはきっと知っている。重い荷物を背負い続けた先に、なにが自分に不要なものなのかが見えてくるということを。
山が教えてくれた、手放すということ

思い返せば、私が山を歩き始めたころもそうだった。あれもこれもとバックパックに詰め込み、重い荷物に押しつぶされそうになりながら歩くことで精一杯だった。けれど、経験を重ねるうちに「これはいらない」「これだけは譲れない」という基準が見えてくる。

無駄なものを削ぎ落として軽くなった体で歩くとき、空気がたっぷり肺に入ってくる感じがする。荷物の重さから解放されて、どこまでも歩いていけそうな気分。自然と視界が広がり、足元の小さな花や天気の移り変わりにふと気づく。その瞬間がたまらなく愛おしい。

この感覚は、日々の暮らしや人生の選択にもよく似ている。かつての肩書きやプライドという名の荷物を抱えたままでは、息が詰まってしまう。だからこそ、思い切ってしがらみを手放し、勇気を出してまったく別の世界へ飛び込んでみたのだ。
窓を開け放した部屋のように

新しい挑戦は、ときおり強い風が吹くこともある。それでも、空気が淀んだ場所で息苦しさを感じていた頃に比べれば、窓を開け放した部屋に風が通り抜けていくいまのほうがずっといい。

気づけば、東京の空も捨てたもんじゃないなと思うようになっていた。自分の生活の中に仕事が溶け込んでいて、空の移ろいをふと眺めながら、一日を自分の意思で歩んでいる。
手放したからこそ、見えてきた景色がある

山を歩くたび、バックパックの中身を洗練していくように、人生も少しずつ軽くしていくことができるのだと思う。行き詰まって身動きが取れないとき、それはもしかしたら荷物が重くなりすぎているサインかもしれない。しがらみでも、プライドでも、時にはずっと使っていたモノでも……少し手放してみると、余裕が生まれて本当に大切なものが見えてくる。そしてそれが見えたとき、人は自分でも驚くほど自然に動き出せる。
あなたのバックパックの中も、見直してみてはいかがだろうか?見える景色が変わるかもしれない。
写真&テキスト◎朝比奈 杏咲美(宇宙HIKE)
https://www.instagram.com/sami_yama.tab
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PROFILE
宇宙HIKE
Photographer 松本茜主催、山と写真のコミュニティー。 宇宙を旅するように山へ登り、旅や写真を使って「自分」にフォーカスする。 ユーモア溢れるメンバーが集まり、日々楽しみながらいろんなフィールドで活動を続けている。
Photographer 松本茜主催、山と写真のコミュニティー。 宇宙を旅するように山へ登り、旅や写真を使って「自分」にフォーカスする。 ユーモア溢れるメンバーが集まり、日々楽しみながらいろんなフィールドで活動を続けている。
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