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“遊び人”を名乗るデザイナー・アソビビトさん|低山トラベラー、偏愛ハイカーに会いに行く #17

山の愛し方は人それぞれ、とはいうけれど。十人十色の偏愛ワールドを覗いてみれば、これからの山の愛し方とその先の未来が見えてくる、かもね。

これまでの連載はこちらから

今回の偏愛さん

アソビビト
グラフィックデザイナー。ハイカー。イヤーモフをきっかけに自身のブランド「アソビビト」を立ち上げる。アソビビトでは「あったらいいな」と思う山道具の企画からデザイン、モデルまでを手がける
Instagram:@asobibito_lv19
YouTubeチャンネル:「あそぶアソビビト」

アソビビト・ワールドへ、ようこそ!さっぱりした人柄と、ちょっとクセになる世界観

3年前の夏のことである。栃木の嘉右衛門町にあるお寺の参道に、テンプルマーケットという画期的なフリマイベントが出現し、話題になった。僕は出店者として参加。日ごろは人の通らない参道に、出店仲間たちの持ち寄った色とりどりの衣類や山道具があふれる不思議な雰囲気。ハイカーによる、ハイカーのためだけじゃないフリマ、というコンセプトがまたおもしろい。僕はジーパンなんかも持っていった。

その出店者の並びの先頭に、見覚えのある女性がいた。テキパキと動く姿はイベントに慣れたようすで、彼女のブースを訪れるお客さんは明らかに〝そこをめざす〟人たちだった。人の波が落ち着いたころに、僕はおなじ出店者としてごあいさつへ出向いた。そのときのやり取りは、とてもシンプルなものだったと記憶している。印象的な色使いの手ぬぐいが目にとまり、僕はそれを1枚購入した。

それが、アソビビトさんとの初めての邂逅(かいごう)。インスタではたびたび見かけていたし、こちらが一方的に知っている人でもあった。実際に会ってみて、山の話で盛り上がるとか、それぞれの道具好きをアピールし合うとか、そういう熱い感じは皆無。お互いにサラリと、でも礼節をもって言葉を交わし、とてもさわやかな印象の人だった。

そんなサラリとあいさつを交わしただけの人と、山に行ったり、飲みに行ったり、いろいろな話ができる間柄になるのだから、人生っておもしろい。いまではブランド「アソビビト」からリリースされているモックネックドライTを着て、おじさんモデルを僕が務めているのだから、なおさら不思議。つまり、僕にとってとてもよい縁のある人だということだ。そんなわけで、今回の偏愛ハイカーにオファーをした。これ以降は、ふだんどおり「アソビさん」と呼びたい。親しみを込めて。

▲結果的に最初に完成した商品。初めて自分の商品が売れたときは感激だった
▲パッケージにもこだわりたくて、色のイメージに合わせた絵を自分で描いた
▲自分がほしくて作っている商品の一番の愛用者は自分だと思う(笑)
▲イベント出店は毎回ドキドキするけれど、お客さんの反応を直に感じられるのがうれしい

アソビさんでなければ、こうはならないよね!という独自的な活動、ポジション、その秘密

その人でなければこうはならないという、独自的な世界観。視点とかセンスとか、取り組み方とか掲げるテーマとか。とにかくどこかに〝らしさ〟があること。アソビさんには、それがある。日ごろの山歩きも、ブランドアイテムのデザインや遊び心も、インスタグラムやYouTubeも、ああアソビさんだなあという志向性がある。

だからだろうか、僕はてっきり美術や音楽といった表現系の部活動出身者だったのかなーと想像していた。ところが、球技系の運動部出身だというから驚きだ。それも、なかなかの実績。失礼ながら、これはちょっと予想外。

その経験が現在の創作活動にどれほど影響しているのかは、わからない。しかしながら、僕はスバ抜けた胆力の持ち主だと感じている。胆力とは、個人で行なう表現活動や事業において欠かすことのできない、極めて大事な力のことだ。たとえば、胆力がなければコツコツとなにかを積み重ねることを続けられない。そうなると観察眼は磨かれず、強固な基礎は身につかず、なにをやっても中途半端になり、はたしてなにもモノにできない。運よく世に注目されることはあっても、自分ならではのポジションをつくれずに、他と多に埋もれていく。その脱却に必要な力こそが胆力だと、僕は信じている。

言い換えれば、忍耐力と決断力の併せ技一本。これ、最強の武器でしょう。アソビさんと接していると、その外見とは裏腹に、迫力というか覚悟のようなものを感じることがある。それこそが、強豪運動部で培われた胆力なのではないかと思うのだ。

▲なにかを表現したくて、思いついたことをとにかくやってみた時期。アイデアを発散する場を求めていた

▲大好きなドラクエのイベントへ。キャラの被りものを作って周りを巻き込んで、とことん楽しむ!
▲幼少期に家族と行った登山の思い出は、帰りの慣れない山道で車酔いしたことだけ(笑)
▲昔からよく絵や習字で賞を貰うことが多かった。手を動かすことが好きな子どもだった

強豪運動部の抑制から脱した“冒険心”で、主たる仕事を持ちながら自分の道を勝手に歩む“遊び人”

アソビさんは、いつ会ってもおしゃれを楽しんでいる。自身のプロデュースするブランド「アソビビト」は、自分が作りたいものだけの混じり気なき聖域。モデルは自らが務める。僕はここ数年のことしか知らないけれど、いたずらにアイテムを増やさないスタンスは、まさしく〝胆力〟の成せる業だろう。あせって流行りのなにかをつくるのではなく、好きなものを好きなときに好きな量しかつくらない。それもニッチな道具が多い。創造的な遊び心の持ち主だ。

興味深いのは、ちらほらとゲームの要素が感じられるところ。ゲーム好きは幼少期からのことで、家族もゲーム好きだったと、当時を思い出して笑う。そう懐かしそうに話すアソビさん、屈託のないさわやかさとマニアックな〝癖〟が同居する、とても魅力的なオーラを醸し出している。本名を出さない方針もまたミステリアスでよい。

ちなみに、アソビさんはブランドだけで食べているわけではない。主たる収入はデザイン業にあり、ほぼ毎日をクライアントワークに向き合う。最近では山に関わるデザインの依頼が増えているそうだ。自分の本分をわきまえることがなにより大切であり、それが柱となって初めてブランドオーナーという軸も成り立つ。

なーんて、堅実そうな人のように書いておきながらちゃぶ台をひっくり返すけれど、じつは思いつきでやってみる冒険心が強い人だったりする。大事にしたいのは「いま、ここ」なのだ。山に初めて登ったときも、グラフィックデザイナーとして独立したときも、エイヤッ!で飛び込んだ冒険心の賜物。そんなアソビさん、いまも熱中しているゲームはドラクエ。そして「アソビビト」の由来も、ドラクエの職業〝遊び人〟から。そんなアソビ心満載のアソビビトさんに、今後も要注目である。

▲ひとり旅で行った利尻山。まだ見ぬ世界で、さまざまな出会いがある山旅は現代の冒険
▲東京最高峰への挑戦はとてもキツくて、日暮れ前に山荘が見えたときはとても安堵した
▲友人たちと登った韓国岳。みんなが山を好きになってくれてうれしい
▲市販のレインコートをカスタムして挑んだ北八ヶ岳縦走。天気や体力と相談してコースを変更しながら進むのがリアルRPGのようでおもしろかった
▲山にハマるきっかけとなった燕岳。登山の「と」の字も知らないころ、綿のTシャツで登った

 

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PROFILE

大内征

ランドネ / 低山トラベラー、山旅文筆家

大内征

歴史や文化をたどって日本各地の低山を歩き、ローカルハイクの魅力を探究。NHKラジオ深夜便、LuckyFM茨城放送に出演中。著書に『低山トラベル』など。ライフワークは熊野古道。

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歴史や文化をたどって日本各地の低山を歩き、ローカルハイクの魅力を探究。NHKラジオ深夜便、LuckyFM茨城放送に出演中。著書に『低山トラベル』など。ライフワークは熊野古道。

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