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モーニングに始まり、ライブで締める「金山ブラジルコーヒー」で名古屋喫茶店カルチャーの深淵をのぞく[名古屋特集]

食事やデザートなど飲食店としても利用できる充実したメニュー、幅広い年齢層が日常的に利用できる雰囲気と常連客を大切にするもてなしの精神、”名古屋めし”に代表される「濃い味付け」に合わせた濃い味のコーヒー……。

高度成長期、比較的土地代が安価だったことと、企業の倹約精神を背景とした脱サラが、名古屋に個人経営の喫茶店が増え、独自の喫茶文化圏を形成した背景と言われる。

今や全国的に知られるようになった”モーニング”は名古屋発の喫茶文化の象徴、同地を訪れれば一度は現地のリアルな喫茶店カルチャーに触れたいと誰もが思うはずで、駅地下から下町の商店街まで、ある意味どこにでもそうした味わいのある喫茶店が存在するのだが、名古屋・金山地区にある「金山ブラジルコーヒー」は名古屋の喫茶文化をより濃厚に味わえるスポットだ。

中部エリア屈指のターミナル駅で半世紀以上にわたり親しまれる老舗喫茶店

東海道新幹線「名古屋」駅からローカル線に乗り換えて約3分、名古屋駅から歩いても20分ほどの距離にある、名古屋・金山地区。JR(中央線、東海道線)、名鉄(名古屋本線)、地下鉄(名城線、名港線)の5路線が乗り入れ、1日約40万人が利用するターミナル「金山」駅を中心としたエリアは、中部国際空港へのアクセスも良好で、2026年に名古屋を中心として開催される「アジア・アジアパラ競技大会」を前に、さらなる盛り上がりを見せている。

「金山ブラジルコーヒー」はそんな金山駅至近の目抜き通りに面し、半世紀以上この地で営業を続けている老舗喫茶だ。

モダンな外観の雑居ビル1階に昭和の喫茶店らしい佇まいでブラジルコーヒーは入居している。店の前はターミナル駅に通じる幹線道路で人もクルマの往来も多い。

 

レジ前に置かれたロースター、3代目となる店主が瑞浪の「待夢珈琲」で勉強した後、自家焙煎珈琲に。

常連から観光客までゲストを魅了する王道モーニング

平日の午前10時、モーニング目当ての来客が落ち着いたタイミングで店を訪れると、店内はレジ前におかれた自家焙煎マシンから香ばしい珈琲豆の香りが漂っていた。間仕切りがなく、ラウンジハイトの低めのソファや椅子が並ぶ開放的な店内には、常連と思しき客が思い思いに過ごしている。

窓際に席を確保し、ブレンド(480円)をオーダーすると、ほどなくして店舗のロゴが刻まれたカップに注がれたコーヒーと、厚切りのトースト、ゆで卵にサラダ、小倉あんをのせたモーニングサービスが一緒に供された。トーストは外カリ、中フワでバターがたっぷり、後半は小倉あんで味変し、酸味と苦みが高バランスなコーヒーに添えらえたミルクがコーヒーフレッシュでなく生クリームなのも、名古屋喫茶の流儀に則っている。まさに名古屋喫茶王道のモーニングだ。

コーヒーを味わいつつ、11時以降からの提供となる「鉄板ナポリタンスパゲティ(900円)」を追加オーダー。しっかりとした味付けの太めのスパゲティと鉄板で焼かれた玉子焼きの香ばしさと共に、細切りのピーマン、赤ウィンナーの具材が良いアクセントになった定番ナポリタンですっかり満腹。

このナポリタンと双璧をなす「鉄板インディアンスパゲッティ(900円)」(※カレーをかけたスパゲティ)も、味わっておきたい”鉄板”メニューだ。

モーニングサービスは開店から10時半まで(※日・祝は11時まで)、通常ドリンクメニューの価格のままセットで提供。ピザトースト(+150円)、ホットドッグ(+300円)への変更も可能。
名古屋めしの代表格、鉄板ナポリタンは広く知られているが、カレーかけパスゲッティの「鉄板インディアン」も美味。

お腹が落ち着いたところで、改めて店内を見渡すと、日替わりメニューを書いた小さな黒板や、背表紙が日焼けした漫画本など喫茶店ならではの風景の中に、天井からつるされた巨大なミラーボールやドラムセットなど、一般的な喫茶店では見かけない佇まいが気になる。実はこの喫茶店、夕方から夜にかけて頻繁にライブが開催しているライブハウスでもあるのだ。

定食のお味噌汁をいただきながら見られるライブ空間

金山ブラジルコーヒーの創業は1971年。現在、店舗の代表をつとめる角田健太さんは創業者の孫にあたる人物で、名古屋を中心に音楽活動を行うミュージシャンでもある。老舗喫茶店がライブハウスとしての顔を持った理由も、当然、彼の存在が大きく関わっている。

「創業者である私の祖父は元々この場所で別の商売をしていたのですが、喫茶店のノウハウを持つ共同経営者に誘われる形でこの店をオープンさせました。それを私の父、その後私が引き継いでいます。学生時代から店を手伝っていたので、働き始めて約25年ほどになります。

ただ、15年程前、今池(名古屋市東部、千種区にある繁華街)にあるライブハウス『得三(Tokuzo)』で、3年ほど修業、というわけではないのですが、実家の手伝いも続けながら働かせてもらったんです。実はその当時から家業と並行して音楽活動もしていて、得三のライブにも出演経験があったこともあり、どういう店なのか以前から興味がありましたし、当時店舗の代表だった父も『もう少し外の世界を見た方がいんじゃない』と気持ちよく送り出してくれました。

レジ周辺には、出演者などミュージシャンのフライヤーや、当月のライブ予定を記載した店長手書きの開催スケジュールなどが置かれている。

で、働いてみたら、本当に面白い店で夜は毎日のようにライブがあり、ライブ後の深夜から早朝の5時までは居酒屋になるんです。自分はそれまで家業を継ぐことに対して、どこか気持ちが明確ではない部分もあったのですが、得三で働いたことで、自分でも(こんな)店をやってみたいという気持ちが固まりました」

地元を拠点にカルチャーを発信する人気ライブハウス兼居酒屋である「得三」での経験は、喫茶店経営と音楽活動の両立を模索していた角田氏に明確なビジョンを与えた。

「約3年間の修行を経て、しっかり食事がとれる昔ながらの喫茶店という姿は残しながら、ウチも得三のようにライブをやりたいと父に進言し、戻ってすぐの2010年から、始めは月1回ほど、やるからには無理のないペースで継続することをルールに夜のライブハウス営業を始めたら、徐々にクチコミで広がっていった感じです。

お店のある金山という街は、様々な路線が交わるいわゆるターミナル駅で、いろんな人が集まりやすく、帰りやすいという地の利もあったのかもしれません。先日はハードコアパンクのライブがあったのですが、そういう日はフロアの椅子をどかしてスタンディングで楽しんでいただく一方、着座してライブを聞きながら食事を楽しめる日もある、その日のライブの方向性に合わせ、喫茶店営業は夕方前に一旦締めて、その日のライブに適したレイアウトに変えてから夜の営業が始まる感じです。

基本的に、メニューは喫茶店営業中もライブ中も変わらないので、喫茶店メニューはもちろん、日替わりの定食もオーダーできるようにしています。たぶんお味噌汁を出せるライブハウスってここしかないと思います、というかそれを売りにしたい(笑)」

”モノよりコト”消費が重要視される現在、名古屋ローカルの音楽シーンはどのようなものなのだろう。

「名古屋の音楽シーンって独特で、印象として生まれてからずっと名古屋に住んでいる人が、ブレずにやり続けているような、良くも悪くも尖った音楽が多い(笑)。東京のようにシーンも広くなく、活動範囲も限られているので交わる接点も多い。それは、音楽に限らず美術でも飲食でも共通で、自然とそれが好きな人たちが集まってくるようなところがありますね。現在では、おかげさまで概ね月10本ほどライブを開催しています」

名古屋めしをいただきながら、地元ミュージシャンのライブも楽しめる喫茶店。カフェはカルチャーの発信拠点とも言われるが、ブラジルコーヒーはまさにそれを地で行く店なのである。

進化を止めずに、真価を保ち続ける喫茶店

 

ライブイベントの導入以外にも、三代目の角田氏に代替わりしたことによる変化は少なくない、メニューやコーヒーの味へのこだわりは先代までのブラジルコーヒー以上だ。

「店で出す料理も、祖父や父の代のブラジルコーヒー時代からの蓄積をいかしつつも今風のものを少しずつ加えています。実は鉄板メニューは自分が復活させたものです。先代の代ではなかなかオペレーションが難しいこともあって中止していたのですが、自分は名古屋の喫茶店を名乗る以上はメニューに加えたい、なと。ただ、復活にあたっては先代の味を踏襲するのではなく、自分なりに納得いくものにしたいと考え、色んな店を食べ歩き、そこで得た最終結論の味としてお出ししています。

コーヒーも実は自家焙煎するようになったのは7年程前からで、岐阜・ 瑞浪にある『待夢珈琲店』で自分が勉強させてもらって導入しました。ただ、私自身が朝のモーニングから厨房もやって、ライブの段取りやPAもやるのですが、この間、自分がライブ出演する日にリハーサルの合間に焙煎もやったら、両方うまくいかなくて流石に無理でしたね。

コーヒーは待夢珈琲での経験を活かし、スペシャリティコーヒーをブレンドし、健康で香り高いコーヒーで提供しています」

変化を恐れず新たな試みを次々に打ち立てる三代目。ただ、あくまで元々の純喫茶として提供する価値にブレはない。

「喫茶で昔から来店いただいているお客様が一番大事なことに変わりはありません。そういう方にとっての居心地の良さや時間、場所を提供しつつ、ブレないところはブレずに好き勝手に遊びたいなと思ってますね」

取材時も、入店直後からお客とスタッフの間で度々会話が交わされる様子が散見された。平日の午前、店内には地元の常連と思しき年配者もいれば、PCを開いてメールを確認する若いサラリーマンやリラックスした格好の学生の姿もあった。どこにでもある喫茶店の景色がある一方で、夜にはどっぷりローカルのライブを定食と美味しいコーヒーとももに堪能できる。名古屋の喫茶店カルチャーは、かくも奥深き、日本が誇る文化財なのだろう。

 

 

 

infromation

自家焙煎の店 ブラジルコーヒー

住所:愛知県名古屋市中区金山4-6-22 金山コスモビル 1階

営業:月~木9~ 21時、金9~22時、土8~ 22時、日・祝8~18時 ※イベント開催日は閉店時間に変更有り

 

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『タビノリ』は、旅の楽しさは、旅のはじまりである「移動」から、旅前の準備、ふとした寄り道、車窓から見つけるお気に入りの風景など、旅の余白に目を向け発信していくメディアです。また、旅をその周縁のものと組み合わせ、定番の旅先や新しい旅の提案などを仕掛けていきます。

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