
パタゴニアは、なぜビールをつくり続けるのか。新作ラガーとカーンザの話
VINAVIS 編集部
- 2026年08月03日
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仕事を終えた夜の食卓や、フィールドから戻った夕暮れ。よく冷えたラガーは、日常の輪郭を少しだけゆるめてくれる。
パタゴニアの食品事業「パタゴニア プロビジョンズ」のラインナップに、2026年8月、新たな「オーガニックラガー」が加わった。
パタゴニアにとって、ビールづくりは初めての試みではない。これまでも、土壌の健全性に役立つと考えられている多年生穀物「カーンザ」を使ったビールを展開してきた。今回登場するのは、その取り組みの延長線上にある、軽やかで食事にも合わせやすいラガースタイルだ。
一杯の原料をたどっていくと、地中約3メートルまで根を伸ばす穀物と、その根が支える土壌へ行き着く。なぜアウトドア企業であるパタゴニアは食品を手がけ、ビールをつくり続けるのか。新作ラガーの背景から、その理由をひもといていく。
文◉VINAVIS
ビールという、農業への入口

パタゴニアが食品事業「パタゴニア プロビジョンズ」を手がける背景には、衣服は数年に一度しか買わなくても、人は毎日食事をする、という創業者イヴォン・シュイナードの考えがある。
環境へ働きかけるうえで、食はだれもが日々繰り返す営みだ。そしてビールもまた、加工された飲料であると同時に、大麦やホップ、そのほかの穀物から造られる農産物でもある。
一般的なビールの原料には、化学肥料を用いて栽培された大麦やホップが多く使われている。原料をオーガニック穀物や多年生穀物へ置き換え、その市場を広げることができれば、どのような作物や農法に需要を生み出すかという部分から、農業に働きかけられる。
パタゴニアプロビジョンズが目指しているのは、オーガニックビール市場の成長を促し、カーンザやリジェネラティブ・オーガニック認証穀物の栽培面積を増やすことだ。
ビールをつくり続けるのは、ブランドの世界観を食品へ広げるためだけではない。日常的に親しまれている飲み物を通じて、土壌や水質に配慮した原料への需要を生み出すためでもある。
エール中心のラインナップに、軽やかなラガーを

これまでパタゴニアプロビジョンズは、エール系のビールを中心に展開してきた。そこへ新たに加わるのが、2024年に全米で発売され、2026年8月1日から日本でも販売されたオーガニックラガーだ。
クラフトビールでは、華やかな香りや個性的な味わいをもつエール系が長く人気を集めてきた。一方で近年は、軽快で食事に合わせやすく、日常的に楽しみやすいラガーにも改めて注目が集まっている。
今回の新作は、既存のエール系商品に取って代わるものでも、ブランドの方向性を切り替えるものでもない。これまでの取り組みを、食卓になじみやすいスタイルへと広げる、新しい選択肢である。
軽やかな一杯を支える、地中3メートルの根

このオーガニックラガーを特徴づける原料が、多年生穀物「カーンザ(Kernza)」だ。
小麦や大麦をはじめ、現在広く栽培されている穀物の多くは、収穫のたびに植え直す一年生作物である。それに対し、カーンザは多年生の中間小麦草から採れる穀物で、一度植えると毎年植え替える必要がない。
大きな特徴は、地下約3メートルまで伸びる深い根にある。根が土壌を固定することで表土の侵食を防ぎ、土壌の構造を改善する働きがあるとされている。また、水質汚染の原因となる窒素を吸収する役割も果たす。
水や農薬、エネルギーの使用量を抑えて育てられることも特徴だ。根の浅い一年生穀物と比べ、より多くの炭素を土壌中に蓄える可能性もあり、気候変動への対策という面からも注目されている。
環境面だけでなく、ナッツを思わせる香ばしい風味も、ビールの個性を形づくっている。
カーンザだけではない。原料から組み立てたラガー

オーガニックラガーに使われているのは、有機大麦麦芽、有機カーンザ、有機ライ麦麦芽、有機ホップだ。
そのうち、カーンザは米国農務省(USDA)のオーガニック基準・認証に従って栽培されている。一方、有機ライ麦麦芽に使われるライ麦は、リジェネラティブ・オーガニック認証を取得したものだ。
また、カーンザは日本の酒税法上、ビールの副原料として認められていない。そのため、日本国内での酒類区分は「発泡酒」となる。ただし、製法は一般的なビールと同様だ。
大地の香ばしさを、ラガーらしいキレへ

醸造を手がけたのは、アメリカ・オレゴン州ベンドに拠点を置くデシューツ・ブルワリーだ。1988年に、地域の人々が集うブリューパブとして創業。アウトドア文化が根づく土地で、自然やコミュニティとのつながりを重視しながらビールを造ってきた。
アメリカから日本までは、フレッシュな味わいを保つために冷蔵輸送される。手元に届いたあとは冷蔵で保管し、できるだけ早く楽しみたい。
食事に合わせやすいラガーだけに、単体で味わうだけでなく、さまざまな料理に寄り添う食中酒としても楽しめそうだ。
ビールを選ぶことは、農業を選ぶことでもある

一杯のビールを飲んだからといって、農業や気候をめぐる問題がすぐに解決するわけではない。
それでも、ビールを農産物として捉え直せば、そこに使われている穀物が、どこで、どのように育てられたのかを考えることはできる。なにを選ぶかは、どのような作物や農法に需要を生み出すのかという意思表示にもなる。
パタゴニアがビールをつくり続ける理由は、飲み物としてのビールを届けることだけにあるのではない。その向こうにある農地や土壌へ、日常の選択から働きかけるためでもある。
今回のオーガニックラガーは、これまで続けてきた取り組みを大きく転換するものではない。長く育ててきた思想を、より軽やかで、日常に近い飲み口へ翻訳した一杯だ。
冷えた缶を開ける、その一瞬から、地中深く伸びる目に見えない根の先へ。飲み終えたあと、足元の土の見え方が少し変わる。それもまた、このラガーが残す余韻なのかもしれない。
パタゴニア プロビジョンズ オーガニックラガー
- 価格:¥930
- 内容量:355ml
- 販売場所:パタゴニア直営店、パタゴニア公式オンラインショップ、FOOD&COMPANY全店、信濃屋の一部店舗、福島屋秋葉原店、ヤマダストアーの一部店舗、AMEKAZEの一部店舗、あつみエピスリー浜松、コープ自然派ほか
オンラインセット
- 6缶セット:¥5,577
- 24缶セット:¥22,308
- 12缶セット・オリジナルガラスコップ付き:¥11,154
※オリジナルガラスコップは、使用済みガラスびんを主原料とした日本製。使用後は通常のガラスびんと同様にリサイクルできる
- BRAND :
- VINAVIS
- CREDIT :
- 文◉VINAVIS
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PROFILE
VINAVIS 編集部
アウトドアフィールドへ誘うメディア、そして自然のなかにいるような心地よさと冒険心をもって生きる人々を応援する新メディア。厳しい自然環境で磨かれた「機能美」や「哲学」を、都市生活というフィールドにマッチするシーンにを訴求します。またアウトドアで使われる機能やアイテムに触れることで、意識せずに自然とフィールドへと近づいていく気運を醸成します。
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