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済州島の、知らなかった山の魅力。漢拏山をめぐる緑と風の旅【前編】|登山口から山頂へ

海を渡った先で見つけたのは、どこか懐かしく温かな緑の世界。韓国最高峰・漢拏山の雄大な自然を歩き、澄んだ空気と歩くぜいたくをじんわり噛みしめる、済州島トレッキング旅。
前編は、出発から山頂に立つまでの道のりをご紹介します。

韓国の最高峰・漢拏山(ハルラサン)へ

私が歩いた海外の山は、ほんの数えるほど。それに加え、子どもが生まれてからは山から少し足が遠のいていた。だからだろうか。仕事という心地よい口実で、久しぶりに海の向こうの緑を歩きたいと密かに願っていたところへ、編集長から「済州島のロケに行ってみない?」と声がかかった。

済州島といえば、どこか南国のリゾート島というイメージが強い。けれど調べてみると、そこには韓国の最高峰・漢拏山(ハルラサン)がどっしりと深遠な裾野を広げていることを知った。行程こそ長丁場なものの、登山道は美しく整えられ、日本の山の環境にもよく似ているという。海外の山歩き初心者にもぴったりだと知り、私は弾む声で「行きます!」と答えていた。

成田空港から済州島までは、ほんのわずかな空の旅。バックパックに忍ばせておいた本のページをめくっているうちに、あっという間に機体は青い海に抱かれた島へと降り立った。

済州島(チェジュトウ)

済州島(チェジュトウ)は朝鮮半島の南側に浮かぶ韓国最大の火山島。その島の中央にどっしりとそびえ立っているのが、標高1,947mを誇る韓国最高峰の漢拏山(ハルラサン)。

旅をしたのは

ランドネ編集部 にのみや

海を渡った先で出会った、どこか懐かしい緑の気配

今回は済州特別自治道・済州観光公社からの案内ということもあり、登山には現地のガイドさんが同行してくれることになった。ガイドさんによると、済州島は韓国のなかでもっとも多様な植物が生息する場所だという。東西南北のエリアや標高によって異なる表情を見せ、自生する植物は約2000種にもおよぶ。毒をもつ植物も多いから気をつけてね、と笑うガイドさんの教えに、島の自然が生々しい生命力に満ちていることを実感する。

また、この島は国内でもっとも雨が多い恵みの地でもある。とくに島の東側と南側には豊かな雨が降り注ぎ、「両手を広げると、片方の腕だけが濡れて、もう片方は濡れない」という不思議なウワサもあるほどだ。まるで日本の屋久島の深い森を思わせるエピソードに、胸が高鳴る。登山当日はすっきりとした快晴とはいかなかったけれど、しっとりと水分を含んだ空気は優しく、雨が降らなかっただけでもこの島から歓迎されているように思えた。

▲ガイドさんが用意してくれた行動食はじつに豪華。特産のみかんジュースや新鮮なキュウリ、バナナや高カロリーなお菓子がずらり

今回歩くのは、上りに城板岳(ソンパナク)コースをとり、下りに観音寺(クァヌムサ)コースへと抜けるルート。行動時間は8時間から10時間ほどにおよぶロングルートだ。入山申請を済ませゲートをくぐると、静けさに包まれた深い樹林帯が私たちを迎えてくれた。

▲事前申請したゲートをくぐり、緑深き森へ

▲足元や頭上には、タマアジサイやヤマボウシ、静かに息づく地衣類といった、日本の山でも見慣れた植物たちが迎えてくれ、初めての海外登山に優しい安心感を与えてくれる

少し湿り気を帯びた森には、木々や土が醸し出す濃厚な香りが立ちこめている。一歩踏みしめるたび、足元から森の呼吸が伝わってくるようだ。ふと視線をやると、ヤマボウシの白い花弁や、シャクナゲの青々とした葉、優しい佇まいのアジサイが芽を覗かせていた。見慣れた顔ぶれたちにあいさつしながら歩いていると、ここが海外であることをふと忘れてしまいそうになる。

▲親切な標識で現在地や標高を把握しやすい登山道。森のなかには木道や天然素材のマットが敷かれ、とても歩きやすい。しっかりとした頑丈なつくりの休憩所やトイレなども整備されており、万が一の際にも心強い環境が整っている

やがて傾斜が増し、木道の階段がどこまでも続いていく。「つらいな」と感じるよりも先に、「よくもまあ、これほどまでに美しく繊細に道を築いてくれたものだ」と、山への深い愛情に感心してしまう。静けさのなか足音だけを響かせながら、ひたすら緑のトンネルを進む。

数時間の上りを経て樹林帯を抜けると、ふっと視界が開けて稜線へ出た。森林限界を迎えた世界には、生き生きとしたチョウセンシラベの緑と、ゴツゴツとした大きな岩が織りなすダイナミックな景観が広がる。溶岩の荒々しい岩肌と、力強く咲く高山植物の対比。どこかで見たような景色だと思いをめぐらせて、膝を打った。八ヶ岳の蓼科山にとてもよく似ているのだ。

地球の息吹を感じさせる雄大なパノラマに圧倒されながらも、ふと足元に目を凝らせば、厳しい岩の隙間から小さな高山植物たちがかわいらしく顔を覗かせている。さわやかな風が頬を撫で、疲れた体を優しくあと押ししてくれた。

▲標高約1,500mのつつじ畑待避所をすぎて、標高1,600m付近にかかる木道階段を上るあたりから背の高い木々が消え、山頂へ続く見晴らしのよい稜線へと飛び出す


遠くのようで近かった、心ほぐれる済州の山歩き
――山頂で待っていたのは、日本の名峰にも似た神秘的な火口湖と、忘れられないランチ。後編では、山頂でのひとときから下山、そして日本からのアクセス情報までをお届けします。(公開は9月25日12:00)

済州島の、知らなかった山の魅力。漢拏山をめぐる緑と風の旅【後編】|山頂ランチから下山、旅支度ガイドまで

済州島の、知らなかった山の魅力。漢拏山をめぐる緑と風の旅【後編】|山頂ランチから下山、旅支度ガイドまで

2026年09月25日

 

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