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「長く使う」を、デザインする。アークテリクス「SYSTEM 0」とスペーロSVが変えるプロダクトの一生

一着の服は、どこまで長く生きられるのか。

山で使う服は傷つく。雨に打たれ、岩に擦れ、何年も使えばファスナーや生地に不具合が生じる。それでも、手入れをし、直しながら使い続けることで、一着の服は持ち主の道具として時間を重ねていく。

アークテリクスが新たに発表した「SYSTEM 0(システム・ゼロ)」と、その第一弾プロダクト「Sperro SV Jacket(スペーロSVジャケット)」は、単に環境に配慮した素材を採用しただけのジャケットではない。素材を選び、製品をつくり、使い、壊れ、修理する。そして、製品寿命を迎えたのちに素材へと戻す。そのすべてをひとつのプロダクトライフサイクルとして捉え直している。

文◉VINAVIS

アークテリクス「SYSTEM 0」。“長持ちする服”から、その先へ

アークテリクス「SYSTEM 0」のキャンペーンビジュアル

アークテリクスは創業以来、可能な限り長く使える製品をつくることを、ものづくりの根底に置いてきた。「SYSTEM 0」はその延長線上にありながら、視点をもう一段階広げている。

素材調達から製造、使用、ケア、修理、そして回収から再生に至るまで、服が生まれてから役割を終えるまでのすべてを対象とする。それは単に「再生素材を使った環境に優しい服をつくった」という意味ではない。製品のライフサイクルそのものを設計の対象に置いたということだ。

現代のハイエンドなアウトドア製品においては、高いパフォーマンスが求められる。「SYSTEM 0」は、その技術的な卓越性と環境への責任を二者択一にするのではなく、両立させるというブランドの意志を示している。

スペーロ SVから始めた理由。なぜ、いちばん難しい服を選んだのか

アークテリクス「スペーロ SV ジャケット」のファスナーと生地のディテール

この「SYSTEM 0」から生まれた第一弾プロダクトとして、彼らはゴアテックスプロを採用したマルチスポーツ対応の本格的な登山ハードシェル「スペーロSVジャケット」を選んだ。

アークテリクスにとって、ゴアテックスのジャケットは数ある製品のなかでも構造が複雑であり、熟練した職人の技術を必要とする。パーツ数も工程数も多く、製造には高度な技術が求められる。

容易な道のりではないが、あえてもっとも複雑な製品を最初のターゲットに据えた。このハードシェルで循環の課題を解決できれば、ブランドのほかのあらゆる製品にもそのシステムを応用できるからだ。簡単なものから始めないという選択に、ブランドのものづくりに対する姿勢が表れている。

「スペーロSV」は、終わりから逆算してつくられた

山岳救助の現場でヘリコプターから活動するスタッフ

アークテリクスのスペーロSVは、単に環境に配慮した素材を採用しただけのジャケットではない。その構造には、長く使い続け、最後に素材へ戻すための設計が組み込まれている。

第一に、長く使えること。開発にあたっては、アスリートや捜索救助隊といった山岳のプロの協力を得て徹底的なテストが繰り返された。そこで判明した摩耗しやすい箇所にはあらかじめ補強が施されている。環境配慮のために耐久性や性能を妥協することはしていない。

第二に、壊れても直せること。頻繁に故障が起きやすいファスナー部分には、アークテリクスとして初めて交換しやすいスライダーを採用した。「壊れない服」を目指すだけではなく、「壊れても直せる服」を設計段階から意図している。

そして第三に、直せなくなったあとまでを考えること。表地と裏地には、アクアフィル社とのパートナーシップによるECONYL(エコニール)再生ナイロンが使われている。製品寿命を迎えたジャケットは、ケミカルリサイクルプロセスを経てナイロン素材が分離され、再び新しい糸へと再生される仕組みが整えられた。

つくり、使い、直し、最後には戻す。「スペーロSV」は、終わりから逆算された一着と言える。

修理する場所が、次の製品をつくっている

アークテリクス「ReBIRD Service Centre」でウエアを扱うスタッフ

こうした循環を支えているのが、アークテリクスの修理・ケアプログラム「ReBIRD(リバード)」である。これは製品のケアや修理を担うプログラムだが、単なるアフターサービスにとどまらない。

ユーザーが実際にフィールドで使い、修理窓口に持ち込まれた製品からは、「どこが擦れるのか」「どのような壊れ方をするのか」「どの部分が直しにくいのか」というリアルなデータが得られる。ReBIRDを通じて蓄積されたそれらの知見は、次の製品デザインへとダイレクトにフィードバックされている。

使用し、故障し、修理し、そこから学習して次の設計へ生かす。「SYSTEM 0」は、すでに存在していたこのサイクルの先に、製品寿命後の素材の循環をつなぎ合わせたものとして捉えることができる。

アークテリクスが取り組むサーキュラーエコノミープログラム、ReBIRD

アークテリクスが取り組むサーキュラーエコノミープログラム、ReBIRD

2023年08月29日

一着の情報を、服そのものからたどる

アークテリクス「スペーロ SV ジャケット」のデジタル製品パスポート用QRコード

スペーロSVには、アークテリクスとして初となるデジタル製品パスポート(DPP)が採用されている。ウエアにレーザー刻印されたQRコードを読み込むことで、使用されている素材や適切なケア方法、修理に関する情報にアクセスできる。

製品を販売して終わりではなく、購入後にユーザーがその一着とどう付き合っていくかまでを視野に入れた仕組みだ。

“新しい”だけが、いい道具ではない

黒背景に展示されたオレンジのアークテリクス「スペーロSVジャケット」

アウトドアウエアは、新品の状態だけが価値のすべてではない。フィールドで使い込まれ、汚れ、傷つき、必要に応じて手入れと修理を繰り返すことで、次第に持ち主自身の道具になっていく。

新素材や新しい機能は、たしかにものづくりを前進させる力をもつ。しかし「新しいこと」だけが、製品の価値を決めるわけではない。

長く使えること。直せること。使い続けたいと思えること。そして、製品としての寿命をまっとうしたあとの行き先までが考えられていること。「SYSTEM 0」という概念は、プロダクトの価値を「発売時点の新しさ」から、「時間のなかでどう存在し続けるか」という視点へと拡張しようとしているのではないだろうか。

完成形ではなく、ここが出発点

アークテリクス「SYSTEM 0」とスペーロ SV ジャケットの構造を示すプレゼンテーション

この新たなフレームワークは、まだ完成された答えではない。アークテリクスは、「スペーロSVジャケット」というもっとも難易度の高い製品を通じて、新しい仕組みの実践を始めたばかりだ。

この循環の考え方が、今後どのような製品へと広がり、アークテリクスのものづくりをどう変えていくのか。「SYSTEM 0」は、その未来へ向けたひとつの出発点である。

【プロダクトインフォメーション】

アークテリクス「スペーロ SV ジャケット」のメンズ・ウィメンズ5カラー

Sperro SV Jacket(スペーロ SV ジャケット)

  • ¥198,000
  • サイズ:S〜XL(メンズ)、XS〜M(ウィメンズ)
  • カラー:カスミ / ムーンストーンAC(上段左)、レネゲード / ダークレネゲード(上段右)、クラウド / ブラック(下段左)、ブレイズ / ダークブレイズ(下段中)、バイタリティ / ブラックサファイア(下段右)
  • 重量:506g(メンズM)、450g(ウィメンズS)

アークテリクス公式
SYSTEM 0特設サイト

スペーロSVを「山の道具」として見る

2026年10月15日発売の山岳雑誌『PEAKS』では、「スペーロSVジャケット」を登山とテクノロジーの視点からご紹介。ゴアテックスとの共同開発による素材や独自の構造、山岳フィールドで求められる機能など、VINAVISとは異なる角度からこの一着を掘り下げます。あわせてご覧ください。

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VINAVIS 編集部

VINAVIS 編集部

アウトドアフィールドへ誘うメディア、そして自然のなかにいるような心地よさと冒険心をもって生きる人々を応援する新メディア。厳しい自然環境で磨かれた「機能美」や「哲学」を、都市生活というフィールドにマッチするシーンにを訴求します。またアウトドアで使われる機能やアイテムに触れることで、意識せずに自然とフィールドへと近づいていく気運を醸成します。

VINAVIS 編集部の記事一覧

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