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夏の終わりとオン・ザ・ロードの始まりVol.3──予期せぬ出会い

ロッキー山脈で、滝の横壁を登ることになるなんて、想像もしなかった。
一通の予期せぬ連絡が、旅の流れを変えていく。
偶然か、それとも必然か──。
北米で交差した縁が、私の旅に新しい道を生んだ。

文・写真◉寺井杏雛
編集◉PEAKS

ロッキーの麓へ。そして、予期せぬ連絡

▲キャンモアに向かう道中。

ケローナを発ち、ロッキーへと近づく道のり。
移り変わる景色がつねに私を楽しませ、飽きる暇もない。

ロードトリップといえば、思い浮かぶのはジャック・ケルアックの『オン・ザ・ロード』。
同作では、変わらぬ景色のハイウェイを延々と走る描写が印象的で、北米のロードトリップはどこも「行けども行けども同じ風景」なのだと思っていた。

ところが、現実はまったく違った。
車窓には険しい山並み、氷河、切り立った岩壁、深い谷。
視界いっぱいの針葉樹林が、絶え間なく姿を変えていく。
退屈とはほど遠い、ぜいたくなドライブだ。

道はロッキーの懐に抱かれるように続き、景色はさらに雄大に。
やがて、目的地バンフの隣町にたどり着いた。

じつはその前に、もうひとつ寄りたい場所があった。キャンモアだ。
ここには一度会ったことのあるクライマー仲間が数人いる。
彼らに会おうと立ち寄った矢先、バンフの友人から思いがけない連絡が入った。

「急遽、日本に一時帰国することになってしまった! 本当にごめん」

事情を聞けば、外せない急用とのこと。
友人不在のバンフへひとり向かうか迷っていると、キャンモアの知人たちが「いっしょに遊ぼう」と声をかけてくれた。

偶然集う必然性

▲ヨーホー国立公園内にあるタカカウフォール(Takakkaw Falls)。氷河由来の水が豪快に流れ落ちる。

翌日、私たちはタカカウフォールへ向かった。
カナダで2番目に高い滝。落ち口から舞い上がる水煙が、体ごと包み込むほどの迫力だ。

この日は、滝の真横にそびえる岩壁を登る。
水飛沫が届かないギリギリのラインを、ロープでつないで慎重に進む。

パートナーは吉田くん。
2年前、アメリカ・ヨセミテで一度あいさつを交わしただけの仲だ。
けれど、ロープクライミングは命を預け合う行為。打ち解けるのに時間はいらなかった。

途中に現れた天然洞窟は、この日のハイライト。
腹ばいになって数分間、ひたすら匍匐前進を続ける。
ヘッドランプを消すと、闇と自分の境界が溶けていく。
滝の轟音だけが響き、ここが宇宙なのか地中なのか、わからなくなる。

▲洞窟を進む吉田くん。

この空間を共にしたあやさんと虎くんとは、数カ月前にスコーミッシュで出会った。
クライミング帰りに夕食を共にしただけの仲だったが、冒険を共有すれば心の距離は一瞬で近づく。

クライミングのあとは、あやさん宅で餃子パーティ。
日本語が飛び交うなかで、なじみある味を口にする。
旅の緊張の糸が一気にほどけていくのを感じた。

あやさんは夫婦でキャンモアに暮らし、ロッキーの自然を遊び尽くすパワフルな女性。
虎くんは車中泊をしながら、靴の修理とアウトドアを両立する職人。
吉田くんは、半年前にこの地へ移り住んできたばかり。
それぞれが、この土地と自然に溶け込みながら生きていた。

▲クライミング後の一枚。あやさん(右)、虎くん(左奥)、私(左手前)。

日本で生まれ育った私たちが、いまこうしてキャンモアに集っている偶然。
それは奇跡のようにも思えたが、ヨセミテやスコーミッシュでつながった縁が導いた必然なのかもしれない。

そう思うと、何気なく立ち寄ったキャンモアが、一気に自分にとって意味のある場所へと変わっていった。

明日からどんな時間が待っているのだろう。
その期待を胸に、私は深い眠りについた。

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PROFILE

寺井杏雛

寺井杏雛

山で遊びながら育ち、そのままの想いで学生時代も自然のなかへ。クライミングにマウンテンバイク、ハイキング——気づけばいつも山が遊びの中心にあった。現在はカナダ・ブリティッシュコロンビア州スコーミッシュを拠点に、山とともにあるライフスタイルを楽しんでいる。

寺井杏雛の記事一覧

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