
年末年始を山小屋ですごした特別な思い出。年に一度、かけがえのない時間がそこにはある。
PEAKS 編集部
- 2025年12月02日
INDEX
年に一度しか訪れない大晦日とお正月。特別な日だからこそ、特別な場所で迎えたい。
それが山小屋で年越しをするということなのかもしれない。
山小屋ですごした、それぞれのかけがえのない年末年始の思い出を語ってもらいました。
① 根石岳山荘(八ヶ岳)|私を山の世界に引き込んだ運命の日。

私が人生で初めて泊まった山小屋は大晦日の根石岳山荘で、ちょうど10年前のこと。テレビ番組の制作会社で働いていたころに仕事で登りました。 登山などやったことがないのにいきなり冬の八ケ岳に行くなんて、いま考えると無謀なことをしたなと。だけど、なにも知らなかったことが、私を山の世界に引き込んだのかもしれません。 大晦日の晩に宿泊者の方たちと肩を組んで歌った雪山讃歌や、翌朝の雲海から登る初日の出や真っ青な青空に、新しい世界を見た気がしました。 登山を始めてこの大晦日で10年目。今年ももちろん年越しは山小屋で!

profile:登山YouTuber/登山ガイド かほさん
いままでに年越しした山小屋:根石岳山荘、蓼科山頂ヒュッテ、七丈小屋、宝剣山荘

② 蓼科山頂ヒュッテ(八ヶ岳)|年越し営業のために命からがら、猛吹雪のなかでの歩荷。

蓼科山頂ヒュッテに通うようになってから、毎年のように年越し営業を手伝っています。最初はほんの数人のお客さんから始まり、落語会、蕎麦打ち体験、バイオリン&ピアノコンサートなど工夫を凝らして、現在は毎年満室です。印象的だったのは、入山日に大雪が降った年。厳冬期装備+歩荷での真冬の悪天候はきつかった! 膝丈の雪に埋まりながら踏み跡を付けてもどんどん積もって消えてゆく。稜線では前の人も見えないほどの視界と吹っ飛ばされそうな風。小屋に着くも急いで扉を開けないと全員凍死する! と必死で掘り起こしました。お客さまが来る日には、そんなことはなかったかのようにすっかり天気が落ち着いて、踏み跡も付き、無事に営業できました。

profile:ライター/信州登山案内人 中島英摩さん
いままでに年越しした山小屋:蓼科山頂ヒュッテ、燕山荘、西穂山荘

③ 赤岳天望荘(八ヶ岳)|辛抱の先に待ち受けていた鮮烈な青と赤。

ダラダラとすごすか、ガツンと登るか。年越しといっても山小屋の立地によってがぜんスタイルが変わってきます。南八ケ岳の稜線にある赤岳天望荘は、もちろん後者。2021年12月31日、悪天で小屋のキャンセルも多数出るなか、カメラマンとふたりで真っ白な世界に同化しつつ、痩せた地蔵尾根を登り赤岳天望荘へ。翌朝もガスは抜けず、「ちゃんと小屋の撮影ができたし、下りようか」という言葉を喉元に溜めたまま小屋でダラダラしていました。が、しばらくしたら鮮明な青空が――。「やっぱり待っていてよかった」と言葉を入れ替え、雪煙舞う赤岳を目指しました。

profile:編集者 泥谷範幸さん
いままでに年越しした山小屋:赤岳天望荘、蓼科山頂ヒュッテ、マナスル山荘(ヒュッテ入笠)、雲取山荘、西穂山荘

④ 七丈小屋(南アルプス)|山でお抹茶をふるまうことが元旦の恒例行事に。

2018年に初めて七丈小屋で年越しをしてから毎年七丈小屋で年越しをしています。小さな七丈小屋ではほかの登山者さんや小屋番さんとの距離も近く、みんなでお酒を酌み交わして楽しんで。そんな温かな距離感が心地よくて気づいたら毎年のルーティーンに。そして元日に小屋でお抹茶をふるまうのも恒例行事。山の上でもお正月気分を味わってもらえたらと持参したら喜んでもらえて。いまや、登頂よりもお抹茶をふるまうほうが大事なミッション(笑)! また、みなさんにお抹茶をふるまうべく、9年目の年越しも七丈小屋で迎えたいと思います。


profile:抹茶好き女子 石橋玲江さん
いままでに年越しした山小屋:七丈小屋、西穂山荘

⑤ 燕山荘(北アルプス)|地獄のような二日酔いから抜け出すとそこには天国のような絶景が。

厳冬期のアルプスに登るのもこのときが初めて。大晦日は吹雪のなか小屋まで向かい、それがもう大変で。吹き飛ばされそうな突風が吹き続け、覚えたての耐風姿勢で耐え忍びながら登りました。山小屋での年越しは本当に楽しくて、ついつい遅くまで深酒をしてしまいました。おかげで元旦の朝は激しい頭痛と吐き気をこらえながらの初日の出。その後なんとか回復し、慣れない岩稜雪山登山にドキドキしながら山頂を目指しました。そこで見た景色は本当にすばらしく、元旦からこんな景色が見られるのは最高だなと。まんまとハマってしまいました。

profile:編集者/ライター 阿部 静さん
いままでに年越しした山小屋:燕山荘、蓼科山頂ヒュッテ、根石岳山荘、七丈小屋、西穂山荘

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※この記事はPEAKS[2026年1月号 No.176]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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