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紀伊半島の突端、白浜町へ。太平洋の砂浜に寄せては返す泡沫に南方熊楠を想う|筆とまなざし#448

年始は大阪、そして和歌山へ

今年は年越しを地元ですごし、元旦に妻の実家がある大阪へ向かった。二日ほど大阪ですごしたあと、紀伊半島を南下し、和歌山県へ足を延ばした。暖かくて海の幸が堪能できる場所へ行きたかったのである。

和歌山県はずいぶん昔に訪れたことがある。那智大社から太地町の知人の家に行き、半島をぐるりと回って和歌山市、そして高野山を訪れた。それだけなので、和歌山県を訪れるのはほとんど初めてといっていい。和歌山といえば梅とみかん、それからパンダのいなくなった南紀白浜アドベンチャーワールドくらいしか前知識がなかったのだが、調べてみると田辺と白浜に南方熊楠ゆかりの施設があることがわかった。そうだ、南方熊楠は和歌山県出身だ。

粘菌の研究で知られる南方熊楠。1867年(慶応3年)に和歌山市に生まれ、博物学者、生物学者、民俗学者……と幅広い顔を持つ。19歳でアメリカへ遊学し、そのままイギリスへ渡った。1900年に帰郷してからは故郷和歌山県でさまざまな研究に勤しんだ。

南方熊楠について、ぼくは「研究分野が幅広く、遺した資料が膨大で、捉えどころのないほど凄い偉人」くらいの知識しか持っていない。それでも、学生時代から淡い憧れのようなものを抱いていたのはたしかで、アトリエの本棚には『南方熊楠 菌類図譜』という大判の画集が立て掛けられている。

イギリスから帰国した熊楠は田辺市に居を構えた。現在、家の隣には「南方熊楠顕彰館」があるとのことなので、一路田辺市を目指した。ところが顕彰館は閉まっていて、新年は5日から開館する旨、貼り紙が貼られていた。途方にくれたが、白浜町の「南方熊楠記念館」を検索すると1月2日から開いていることがわかった。車でおよそ30分の距離である。

白浜町の南方熊楠記念館へ向かう

海岸に沿った道を車で走り、白浜へ向かう。途中、幾つもの浜辺があったので適当なところで車を停めた。さすがは本州最南端に近い場所。冬でも日差しが眩しいほどだ。浜辺に降りると眼前に太平洋が広がっていた。砂浜に寄せては返す泡沫。この大海の対岸はアメリカである。こんなにも明るく開けていて、大きく力強い太平洋を臨む場所だったからこそ、南方熊楠のような人物が生まれたのかもしれない。

かつて、明治時代に和歌山県太地町から北米に渡った移民史を訪ね歩いていたことがある。彼らは出稼ぎ移民と呼ばれ、一年の一定期間を北米で漁業に従事し、冬になると故郷の太地へと帰って来た。かつては海運が大きな交通手段だった。海に生きる人々にとって、海を渡ることに対してさほど抵抗はなかったのだという。熊楠にもそんな気風があったのかもしれないと考えることは、あながち見当違いでもないだろう。

記念館は岬の突端に建てられていた。曲線を活かした白い建物で、名のある建築家によって設計されたとのことだった。展示スペースは決して広くはなかったが、とてもわかりやすい展示だった。熊楠はイギリス滞在中に大英博物館に入り浸り、英語はもとよりフランス語、スペイン語、イタリア語、ドイツ語、そして漢文と古今東西500冊もの書物をノートに書き写したという。驚愕である。なかには挿絵も描き写されていて、その絵がまた可愛らしい。イギリス滞在中に手に入れたものだろうか、メーカーは分からなかったが携帯用の固形水彩絵具が展示されていた。この絵具でキノコの絵を描いたのかと思うと、僭越ながら妙な親近感が湧いたのだった。

著者:ライター・絵描き・クライマー/成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ、在住。 山やクライミングでのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作したアトリエ小屋で制作に取り組みながら、地元の岩場に通い、各地へクライミングトリップに出かけるのが楽しみ。日本山岳ガイド協会認定フリークライミングインストラクターでもあり、クライミング講習会も行なっている。

https://www.naruseyohei.com

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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