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フィジークが「シューズの常識」を覆す——VEGA CARBONとLYRA、新世代2モデルの全貌

フィジークの新世代ロードシューズ「VEGA CARBON(ベガ カーボン)」と「LYRA(リラ)」を徹底解説。新設計ラスト、アッパー素材Aeroweave PRO、一体型フルカーボンアウトソールなどの注目技術から、実際の足入れや走行感、両モデルの違いまで紹介する。

フィジークが、シューズをゼロから作り直した。

単なるモデルチェンジではない。木型(ラスト)の設計から素材、構造、そして「速さとは何か」という問いそのものまで——すべてを見直した結果が、「VEGA CARBON」と「LYRA」という2つのモデルだ。国内代理店カワシマサイクルサプライの福田氏に、開発の背景と両モデルの違いを詳しく聞いた。

①VEGA、そしてLYRA——「後継」ではない、新世代の始まり

最初に押さえておきたいのが、この2モデルがどういう位置づけなのか、という点だ。

「VEGA CARBONは、今までのシリーズの後継機種というわけではありません。フィジークがシューズの設計思想そのものを刷新し、専用素材を惜しみなく投入した、新世代フラッグシップという位置づけです。INFINITOシリーズやスタビリータが担ってきたハイエンドカテゴリーを、実質的に引き継ぐモデルと考えてもらえればわかりやすいと思います」(福田氏)

一方のLYRAは、そのVEGAの設計思想を受け継ぎながら、より広いユーザーに届けるために生まれたモデル。レースにもトレーニングにも、ロングライドにも幅広く対応するオールラウンダーとして設定されている。

2026年時点でのフィジークのロードシューズラインナップは大きく3段階に整理できる。VEGA CARBONがプロ・シリアスレーサー向けのフラッグシップ、LYRAがトレーニングからレース・ロングライドまで対応するパフォーマンスロード、そして既存のTEMPO系モデルがコンフォート寄りのエンデュランスラインという構成だ。

また近年フィジークは「ヴェント」「テンポ」「テラ」といったシリーズ名を廃止する方向にある。現代のライディングシチュエーションはクロスオーバーが進み、カテゴリー分けがかえって選びにくさを生んでいたからだ。VEGA・LYRA・BEATというシューズラインも、バーテープの新命名も、この流れの中に登場している。

②VEGAの注目技術——3つのブレイクスルー

ブレイクスルー1:ラストの刷新「アナトミックシェイプ」

VEGA CARBONで最も根本的な変化が、シューズの木型(ラスト)の全面刷新だ。従来の「EVO3」ラストから、「アナトミックシェイプ」と呼ばれる新しい木型へ。変化は大きく2つある。

トゥボックスのワイド化。足の指が自然に広がる空間を確保し、前足部への圧迫を軽減。血流が改善され、長時間ライドでの快適性が大幅に向上する。ステージレースのように何時間も踏み続けるシーンで、この差が疲労の蓄積に直結する。

ヒール〜トゥのドロップ量の削減。従来のシューズはかかと側がやや高い設計で、足が「逆くの字」に傾いた状態で固定されていた。現代のフィッティングではクリートがどんどんかかと寄り(ミッドフット寄り)に変化しており、VEGAはその流れに合わせてドロップ量を削減。足がよりストレートな自然な軸で固定される。

「以前はあえてドロップをつけていたんですが、クリートの位置がどんどん後ろに下がってきた。それに合わせてドロップも削減されています。より自然な90度の足の位置に近づいているイメージです」(福田氏)

ブレイクスルー2:「インソールを外したら、そこがカーボン」——一体型コアアウトソール

VEGA CARBONの最大の特徴と言えるのが、この一体型フルカーボンアウトソール(Vegaアウトソール、剛性指数10)の構造だ。

一般的なシューズには、インソールの下に「ラスティングボード」と呼ばれるパーツが存在する。アッパーをアウトソールに接着するためのいわば”のりしろ”で、不織布やパーティクルボードなど素材はさまざまだが、ほぼすべてのスポーツシューズが採用している構造だ。

VEGA CARBONでは、アッパーがカーボンソールをぐるりと包み込む独自の構造によって、このラスティングボードを廃止している。インソールを外すと、その下にカーボンアウトソールが直接現れる。つまり、カーボンソールはシューズの外側ではなく、「内側」にある。

「足とカーボンソールの間から余計なパーツが1枚なくなるので、ダイレクト感と反応性が大幅に向上します。スタックハイトも低くなって、パワーロスも削減されている。アッパーがソールまで巻き込んでいることで横ブレ抑制にも効いています」(福田氏)

ブレイクスルー3:「エアロウィーブ × BOAダイヤル」の夢の組み合わせ——Aeroweave PROアッパー

VEGA CARBONのアッパー素材は「Aeroweave PRO(エアロウィーブ プロ)」。フィジーク独自のアッパー素材で、ナイロン繊維と熱可塑性ポリマーフィラメントを編み込んだ高強度の網状構造体だ。極めて高い通気性と剛性感を両立し、いわゆる”ニット”とはまったくの別物。カチッとしたホールド感を出しながら、通気性はトップクラスという優れた素材だ。

しかし長年、このエアロウィーブにBOAダイヤルを採用することは「技術的に非常に難しかった」という。BOAダイヤルはアッパーにベース部分を縫い付ける必要があるが、エアロウィーブの素材特性上それが困難で、エアロウィーブモデルはパワーストラップのみというラインナップが続いていた。

これを解決したのが「Aeroweave PRO」の2レイヤー構造だ。エアロウィーブの上に薄いトランスルーセントメッシュを重ね、足首に向かうにつれて硬質な樹脂層へと変化させる。その樹脂部分にBOAダイヤルのベースを縫い付けることで、ついにエアロウィーブ × BOAダイヤルの組み合わせを実現した。BOAを締めると表面のメッシュごとエアロウィーブを包み込むような、これまでにないフィット感が生まれる。

この構造はさらに副産物的なメリットも生む。BOAダイヤルのベース部分がシューズの外側パーツに縫い付けられているため、シューズ内側に縫い目や補強材が露出しない。ダイヤルを締めても内側はクリーンな状態で、余計な当たりが発生しにくい構造になっている。

さらにシューズ内側には、パーフォレーション加工されたAirprene素材のブーティーを内蔵。足を包み込むように覆うことで、圧迫感のないフィット感をプレッシャーフリーで実現している。

「開発のスタートが”エアロウィーブでBOAダイヤルを使いたい”というところからだったと聞いています。ずっとできなかったことが、ついに実現した。それがVEGAです」(福田氏)

③その技術をLYRAへ——「VEGAの哲学を、もっと広く」

LYRAはVEGAの設計思想を受け継ぎながら、汎用素材と一般的な製法で仕上げたモデルだ。フィジーク自身の言葉を借りれば「daily rides and fast-paced racing」のためのシューズ——毎日乗るライダーから、週末レースに出るライダーまで、幅広く対応する。

ラストはVEGAと同じ「アナトミックシェイプ」を採用。ワイドなトゥボックスと低ドロップ設計で、VEGAと同様の「自然な足の使い方」を実現している。

 

アウトソールはフルカーボンではなくファイバーコンポジット(剛性指数8)だが、高い剛性とレスポンシブなペダリングを実現。ヒール〜トゥのドロップ削減もVEGA同様に反映されており、戦略的に配置されたベンチホールが足元の冷却を助ける。

アッパーはやや硬質なエンジニアードメッシュを採用。ランニングシューズなどでも使われる素材だが、ロードバイク向けに硬めのタイプを選択することで、従来のTEMPOシリーズが持っていたPUラミネート構造よりもカチッとしたホールド感を実現している。クロージャーはデュアルBOA Li2システムで、前足部と甲部分を独立して調整できる。

「ただVEGAとのアプローチは違っても、目指したゴールは同じです。シューズ内側はVEGA同様に非常にクリーンな状態で、縫い目や段差を極力排除しています。これはリラの場合、内側に内張り処理を施すことで実現しています」(福田氏)

スペックの差をまとめると以下のようになる。

VEGA CARBON LYRA
アウトソール 一体型フルカーボン(剛性指数10) ファイバーコンポジット(剛性指数8)
アッパー Aeroweave PRO(2レイヤー) エンジニアードメッシュ
ラスト アナトミックシェイプ(新設計) アナトミックシェイプ(新設計)
クロージャー デュアルBOA Li2 デュアルBOA Li2
ラスティングボード なし(廃止) あり
重量 239g(1/2ペア、インソール除く) 259g(1/2ペア、インソール除く)
サイズ 36.0-45.0(37〜44はハーフサイズあり)
※在庫サイズはカラーによって異なります
36.0-45.0(37〜44はハーフサイズあり)
※在庫サイズはカラーによって異なります

「足入れ」でわかる、スペック表には出ない差

VEGA CARBON、LYRAともに試着して最初に感じるのは、足全体を均一に包み込むような、面でのフィット感だ。BOAダイヤルをゆっくり締めていくと、アッパーが足の形に沿ってぴたりと寄り添ってくる。さらにBOAクロージャーのあたり面が痛くならないように設計されており、局所的に締め付けられる感覚がなく、どこかが当たって痛いということがない。

VEGA CARBONはこの感覚がより顕著だ。Aeroweave PROの網目構造がそのまま足を包み込むような独特のフィット感で、「包まれている」というより「足そのものに貼り付いている」に近い。インソールを外してカーボンソールを直接踏んだ時の、あの薄さと硬さの感触が、実際に乗った時のダイレクト感にそのまま繋がっているのだと納得できる。

従来のシューズと比べると「足がペダルにそのまま乗っている」ような感覚で、余計なたわみや遊びが感じられない。それでいてトゥボックスに余裕があるため、長時間乗っていても足先への圧迫感が出てこない。「剛性と快適性はトレードオフ」という先入観を崩してくる。

いっぽう、LYRAはVEGAと比べるとよりコンフォートな印象だ。とくに開口部が開放されているので履きやすく、BOAクロージャーをゆるめたときにプレッシャーが少ない。ここは好みの分かれるところだろう。

剛性感の差はあるが、逆にその分だけ脚への当たりがマイルドで、長距離を自分のペースで走る用途にはむしろ合っているかもしれない。VEGAが「今すぐレースに出る」シューズだとすれば、LYRAは「毎週末乗り続けられる」シューズ。ホールド感とフレキシビリティのバランスが、まさにオールラウンドという言葉がしっくりくる。

「履いてもらったら良さがわかる。乗ってもう一度驚いてもらえる。そういうシューズです」という福田氏の言葉は、決して誇張ではなかった。

「速さ」の定義が変わった

VEGAとLYRAを通して見えてくるのは、フィジークの設計思想そのものの転換だ。かつては「硬ければ硬いほどパワーが伝わる」が常識だった。しかし今は違う。

「重量や剛性の数値よりも、フィット感と通気性を大切にしたい。疲れないことがパフォーマンスに直結するという考え方が、今のフィジークの根底にあります。重量をもっと軽くすることも技術的にはできるけれど、そうするとフィット感がスポイルされてしまうのでしない、という判断です」(福田氏)

数値で測れる革新もある。しかしVEGA CARBONの本当の価値は、そのスペック表の先にある。「ソールの直上に足が乗っている」という感覚は、履いてみないとわからない。

VEGA CARBONを選んでいるプロ選手として、エンリク・マス、エイネル・ルビオ(ともにモビスター)、フェリックス・ガル(デカスロン)、ルカ・モッツァート(Tudor)、アレッサンドロ・コーヴィ(UAE)といった名前が挙がっている。

試着に迷ったら——全国20店舗「トライオンストア」を活用

カワシマサイクルサプライでは、フィジークシューズを気軽に試着できる「トライオンストア」を全国20店舗で展開中。常設の試着シューズがローテーションで各店に配備されており、VEGA CARBONとLYRAも含まれている。

また、フィジークシューズ特約店では「試着取り寄せサービス」も利用可能。在庫がなくても取り寄せて試着ができ、コンシューマーへの送料負担が発生しないケースも多い。詳細はカワシマサイクルサプライのウェブサイト(ショップリスト → フィジークシューズ特約店)から確認できる。

スペック表だけでは伝わらないシューズがある。ぜひ一度、足入れから体験してほしい。

【フィジーク:TRYON STORE】気軽にフィジークシューズを試着できるTRYON STOREスタート。(06.03 UP)

フィジーク VEGA CARBON

72,000円

 

アウトソール:Vega
アウトソール(フルカーボン一体型、剛性指数10)
アッパー:Aeroweave PRO
クロージャー:デュアルBOA Li2
重量:239g(1/2ペア、インソール除く)
サイズ:36.0-45.0(37〜44はハーフサイズあり)
※在庫サイズはカラーによって異なります
カラー:White  / White、Coral Black / Black、White / Yellow Fluo、Mint Green / Purple

公式サイトでチェック

White  / White
Coral Black / Black
White / Yellow Fluo
Mint Green / Purple

フィジーク LYRA

41,2000円

アウトソール:R4ファイバーコンポジット(剛性指数8)
アッパー:エンジニアードメッシュ
クロージャー:デュアルBOA Li2
重量:259g(1/2ペア、インソール除く)
サイズ:36.0-45.0(37〜44はハーフサイズあり)
※在庫サイズはカラーによって異なります
カラー:White/White、Coal Black/Black、Lavender/Mint Green

公式サイトでチェック

White  / White
Coal Black/Black
Lavender/Mint Green

問い合わせ:カワシマサイクルサプライ https://www.riogrande.co.jp/

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