
元プロ自転車選手×鉄道好き・中島康晴が行く 信越エリア“4線サイクルトレイン”乗り継ぎ旅
山口
- 2026年08月28日
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自転車を袋に入れず、そのまま列車に載せられるサイクルトレイン。長野・新潟にまたがる信越9市町村エリア「信越自然郷」では、鉄道とライドを組み合わせた”レール&ライド”がぐっと現実的になってきた。2026年7〜9月、JR飯山線のサイクルトレインが期間限定で豊野駅まで延伸。これにより飯山線⇄しなの鉄道 北しなの線の乗り継ぎが可能となり、エリア内の複数のサイクルトレインを1つの旅で乗り継いで巡れるようになった。今回、元プロロードレーサーで無類の鉄道好きとしても知られる中島康晴さんが、長野駅を起点にこのルートを実際に走ってきた。
元プロ×鉄道好き、中島康晴が挑む「レール&ライド」

サイクルトレインとは、自転車を分解も袋詰めもせず、そのままの状態で車内に持ち込める列車のこと。信越自然郷エリアはこのサイクルトレインを走らせる路線が集中しており、自転車×鉄道の組み合わせで、体力に合わせた無理のない旅が楽しめる。さらに鉄道好きの中島さんにとっては、車両や路線そのものを味わえる”見どころ”が道中にいくつも待っている。
- 信越エリア内の4線(JR東日本 飯山線・しなの鉄道 北しなの線・長野電鉄・えちごトキめき鉄道 妙高はねうまライン)のサイクルトレインを乗り継いで巡れる
- この夏限定で飯山線が豊野まで延伸したことで、飯山線⇄北しなの線のサイクルトレイン乗り継ぎが可能に
- 長野駅を起点にすれば、全国各地からのアクセスを確保できる(北陸・首都圏・関西から新幹線で一本)
※各線のサイクルトレインの区間・期間・予約要否などの詳細は、「サイクルトレイン全国MAP」にまとめている。あわせて、今回のエリアの路線関係を1枚にしたエリアマップ(下図)もチェックしてほしい。
なぜ「長野駅起点」なのか
このルートの起点に長野駅を選ぶ最大の理由はアクセスのよさ。北陸新幹線で首都圏からも北陸・関西方面からも乗り換えなしで到着でき、輪行してきた自転車をそのまま北信濃のサイクルトレインへ載せ替えられる。
「今回は自分は福井から、そして撮影してくれる編集部は東京から来ていますが、長野駅は全国どこからでも集まりやすく、駅を出たらすぐ走り出せる。旅の”入口”として長野駅は本当に便利です。そして長野電鉄は、全国でも珍しい地下の駅からサイクルトレインに乗れるのもポイントでしょう」(中島さん)

【1日目】長野→小布施→飯山→黒姫→タングラム斑尾

初日は長野電鉄・JR東日本 飯山線・しなの鉄道 北しなの線と、3線のサイクルトレインを一日で乗り継ぐ欲張りな行程。走行はライドとしてもそれなりに走りごたえのある約33km。
小布施からライドスタート(長野電鉄)

まずは長野駅から、9時13分発の普通・信州中野行のサイクルトレインに乗車。乗車は前日までにオンライン、または当日の出発の30分前までにお客様サポートセンター(TEL026-248-

鉄道好きなら見逃せないのが、長野電鉄の名物特急車両だ。元・小田急のロマンスカー10000形「HiSE」を譲り受けた1000系特急「ゆけむり」と、初代「成田エクスプレス」ことJR東日本253系を譲り受けた2100系特急「スノーモンキー」という、二大”移籍組”が現役で活躍している。ただし要注意——サイクルトレインとして自転車をそのまま持ち込めるのは普通列車のみで、これらの特急は対象外だ。乗り継ぎを計画するときは、必ず普通列車のサイクルトレイン対象便を選ぼう。

9時50分、栗と花の町・小布施で下車し、ここからペダルを回し始める。走り出す前に立ち寄ったのがマルテ珈琲焙煎所。ていねいに淹れた一杯のアイスラテは、コーヒーの香りと小布施牛乳の濃厚なコクが重なる贅沢な味わいで、旅の景気づけにぴったりだった。

小布施から千曲川沿いの気持ちのいい道をたどって北へ。飯山までの約20kmは、田園と川景色が続く北信濃らしいウォームアップ区間だ。途中、千曲川を渡る北陸新幹線の高架や、飯山線の沿線らしいのどかな雰囲気も楽しめる。収穫を待つリンゴ畑に色づきはじめた稲穂、川面をわたる風、そして時折すれ違うローカル線の気配。急ぐ旅ではないからこそ、路傍の小さな景色まで拾いながら、ゆっくりとペースを刻んでいく。

飯山線沿線には道路との並走区間もある。「上今井と替佐の間で待てば、越後川口行きの列車に抜かれるかもしれません」(中島さん)ということで、ちょっと時間調整をしていると、遠くから踏切の音が聞こえてきた。思わず中島さんの顔が笑顔になる。

長野電鉄 河東線(木島線)の廃線跡をたどる

じつはこの道中、鉄道好きの中島さんにはもうひとつの”お目当て”があった。以前レースで近くを通ったときに見つけて以来ずっと気になっていた、長野電鉄 河東線(木島線)の廃線跡だ。かつて北信濃を結んだ路線の面影を、車窓ならぬ”サドルの上”からたどれるのも自走ならではの楽しみ。

「以前このあたりを車で通ったときに、ここは廃線跡があるな! とずっと気になっていた場所でした。今回は自転車で走りながら鉄道の歴史に出会えるなんて最高ですよ」と目を輝かせた。
ランチは飯山の「カリースパイス山路」

飯山でのお楽しみは、南町にある地元で人気のカレー店「カリースパイス山路」。看板メニューの3種盛りでしっかり補給する。「スパイスの効いた3種のルー——山路カリー、バターチキン、クラムチャウダーカレーを一度に楽しめる贅沢な一皿でした」(中島さん)と、夏の暑さも吹き飛ぶおいしさだった。

このあと飯山駅に立ち寄り、駅1階の信越自然郷アクティビティセンターでおすすめポイントを教わった。地元を知り尽くしたスタッフに相談すれば、季節の見どころや走りやすい道、サイクルトレインの使い方まで一気に相談できる。レンタサイクルも用意されているので、飯山駅を起点に手ぶらでサイクルトレインの旅を楽しめるのもうれしい。
飯山線→北しなの線を”乗り継ぐ”(延伸の恩恵)

ランチのあとは、いよいよこの旅のハイライト。飯山駅から13時48分発の普通・長野行、飯山線サイクルトレイン(上り・要予約)で豊野へ(14時19分着)。この豊野駅は、サイクルトレインからサイクルトレインへ乗り換えができる全国でも珍しい駅になっている。ここで14時25分発の妙高高原行、北しなの線サイクルトレイン(下り・予約不要)へ乗り継ぐわけだが、これは飯山線が豊野まで延伸したからこそ実現した”列車リレー”だ。輪行袋いらずで自転車をそのまま押して乗り換えられる手軽さは、走り疲れた脚にもうれしい。自転車ごと列車に乗り込めば、さっきまで自分の脚でたどった千曲川が、今度は車窓を逆回しにして過ぎていく。走って覚えた景色を座って眺め直す——これもレール&ライドならではの贅沢な時間だ。


黒姫から野尻湖、そしてタングラム斑尾へ

豊野駅から黒姫駅へは、北しなの線で一気に標高を稼ぐことになる。「この北しなの線、じつは頼れる”登りの相棒”です。豊野駅(標高334.6m)から黒姫駅(同671.8m)までは約340mの標高差。自走ならボディブローのように効いてくる登りを、自転車ごと列車がまるごと稼いでくれます。降り立った黒姫はすでに高原の入口。脚を残したまま、野尻湖・斑尾方面の絶景ライドへ気持ちよくスタートできます。まさに”標高を稼ぐ”のは賢いサイクルトレインの使い方。ちなみにこの黒姫駅は北しなの線のサミット(最高地点)なんですよ」(中島さん)
今回の旅の高低図

今回のルートは、長野駅(標高362m)から上越妙高駅(標高45m)まで、全体で見ると約300m以上を下る行程だ。 ポイントは、標高を稼ぐ区間を鉄道に任せていること。1日目は長野電鉄・JR飯山線・北しなの線を乗り継ぎ、列車の車窓を楽しみながら黒姫駅(標高約670m)まで標高を鉄道で稼げる。
2日目は黒姫から自走で最高地点のタングラム斑尾(標高800m)へ。ここから妙高高原(標高510m)まで約290mの爽快なダウンヒルが待っている。さらにトキ鉄 妙高はねうまラインで北新井駅(標高35m)まで一気に高度を落とし、最後は平坦な道を上越妙高駅までゆったりと流す。 鉄道で登り、自転車で下るルートになっている。

列車が山あいへ分け入るほどに、窓の外の空気はひんやりと澄んでいく。トンネルを抜けるたびに標高が上がり、耳の奥がつんと鳴った。降り立った黒姫の駅前には、もう高原の涼しさが漂っている。14時46分、黒姫駅で下車して再びライドへ。

ここでは事前に信越自然郷アクティビティセンターで教わったおすすめスポット、まつきブルーベリー園へ立ち寄り。7〜8月はブルーベリーの収穫時期で、もぎたての実が楽しめるとのこと。甘いひと粒でリフレッシュする。

その後は野尻湖畔を経由し、斑尾高原を目指して上っていく。この日は雨予報だったが、どうやらギリギリ降られずにすみそうだ。

この日の目的地はホテルタングラム(斑尾東急リゾート)。自転車と同じ部屋に泊まれるサイクリストルームを備え、翌日の走りに備えてバイクを室内で保管できる、サイクリストにやさしい宿だ。


【2日目】斑尾→妙高高原→トキ鉄 妙高はねうまラインで北新井へ

2日目はタングラム斑尾からスタート。夜のあいだ降っていた雨も朝には止み、気持ちのいい景色のなかで朝食ビュッフェを楽しんだら、いよいよ出発だ。雨上がりの高原は空気がすっかり洗われ、遠くの山際までくっきりと見渡せた。
ゴンドラでスキーゲレンデを登れば「野尻湖テラス」を楽しめるというが、この日はお目当てのサイクルトレインに乗るため、タングラム斑尾を後にする。昨日は霧がかった幻想的な野尻湖だったが、この日は青く輝いて見えた。

この日は妙高高原駅まで自走し、4本目のサイクルトレイン、えちごトキめき鉄道 妙高はねうまラインを目指す。

途中までは国道18号を走り、そこから旧道へ。交通量の多い国道から一本入るだけで、空気はしっとりと山のものに変わる。木々のトンネルと古いスノーシェードが交互に現れ、標高を上げるごとに気温が下がっていくのが肌でわかった。「スノーシェードを走るとタイムワープできそうで大好きなんですよ!」と、興奮気味に妙高へ向かう中島さん。
妙高高原駅に着いたらまず、駅前にあるこのエリアで人気のMyoko Coffee 高原駅前店でひと休み。
そして、妙高高原駅から北新井駅まではトキ鉄妙高はねうまラインのサイクルトレインだ。こちらは予約不要だが、自転車の持ち込みには手回り品切符(290円)が必要になる。受け取ったのは、なんともうれしい手書きの切符だった。

ちなみに、北しなの線とトキ鉄妙高はねうまラインのサイクルトレインは、この妙高高原駅で乗り換えが可能だ。今回は下り区間の乗車となるが、賢い使い方としては、上越方面から長野側へ抜ける際に”標高を獲得しながら”移動できるので、その先のサイクリングがぐっと楽になる。ちなみに北新井駅の標高は約35m、妙高高原駅は約510mと、その差はおよそ475m。この高低差をまるごと列車で稼げる計算だ。

ということで、10時13分 妙高高原駅発の直江津行で北新井駅へと向かう。手書きの切符を握り、ふたたび自転車を車内へ。妙高の山なみが背後へ遠ざかり、車窓は少しずつ上越平野の田んぼへと移り変わっていく。下り勾配は列車に任せ、脚を休めながら次の目的地へと運ばれていく時間もまた、この旅ならではの心地よさだ。
二本木のスイッチバックに大興奮

2日目のハイライトは、途中の二本木駅にある「スイッチバック」だ。これは急な勾配を上り下りするための仕組みで、本線から一度、勾配のない引き込み線(スノーシェッド内)へ列車を入れ、運転士が進行方向を切り替えてから、ホームのある本線へ改めて発進する。「引き込み線で並走する列車を眺めながら駅に入っていく光景は壮観でした。初めての体験です」と中島さんも大興奮だ。

北新井駅で列車を降りたら、ここからは上越の名所高田城址公園へ。高田城は松平氏ゆかりの城で、いまでは堀を蓮が埋め尽くす公園として親しまれている。

蓮の花や堀に彩られた城下の風景を自転車でのんびりめぐり、最後は上越妙高駅へ。
駅へ向かう途中、中島さんが寄り道を提案する。「もしかしたら特急しらゆきが見られるかもしれません」。線路近くの田んぼで待っていると、「上沼垂色(かみぬったりしょく)じゃないですか!」と興奮する中島さん。上沼垂色とは、かつて新潟県の上沼垂運転区(現・新潟車両センター)に所属していた特急形車両(485系)に施された、白をベースに青と青緑の帯を配したカラーリングのこと。往年の特急ファンにはたまらない色だという。

さらに「この線路と並走する道路は、もともと線路だったんです」と、いっそう興奮しながら説明する中島さん。新幹線の上越妙高駅ができる際に、もともとあった脇野田駅(わきのだえき)を現在の位置へ移し、線路を付け替えた。その際に残った旧線の跡を道路として整備したのが、いま中島さんが走っている道、というわけだ。

こうして、信越のサイクルトレインを乗り継ぐ2日間が完結した。上越妙高駅前には日帰り温泉「釜ぶたの湯」があり、自転車を輪行してから汗を流して新幹線に乗れば、快適に帰路につける。
1日目に長野電鉄・飯山線・北しなの線、2日目は妙高高原駅でつながるトキ鉄妙高はねうまライン。乗り継ぎを含めれば、北信濃〜信越では実質4社4線のサイクルトレインを、自転車と一緒に旅できる。飯山線の豊野延伸は2026年7〜9月の期間限定だが、輪行の手間なく”乗って・走って・また乗って”を繰り返せる北信濃レール&ライド。この夏から秋、ぜひ信越へ出かけてみてほしい。
今回乗ったサイクルトレイン
- 【1日目】長野電鉄 長野 9:13発 → 小布施 9:50着/普通「信州中野行」(要予約)
前日前にオンライン、または当日 駅設置のインターホン(本郷~日野・北須坂~延徳・湯田中の各駅に設置)からの連絡、 またはお客様サポートセンター(TEL026-248- 6000)への電話により予約可能 ※乗車駅の発車時刻30分前まで受付。 - 【1日目】JR東日本 飯山線 飯山 13:48発 → 豊野 14:19着/普通「長野行」(要オンライン予約)
- 【1日目】しなの鉄道 北しなの線 豊野 14:25発 → 黒姫 14:46着/普通「妙高高原行」(予約不要)
- 【2日目】えちごトキめき鉄道 妙高はねうまライン 妙高高原 10:13発 → 北新井/「直江津行」(予約不要・手回り品切符290円)
※時刻・行先は取材時(2026年8月)のもの。ダイヤは変更される場合があるため、利用時は各社の最新時刻表・予約案内を必ずご確認ください。
サイクルフレンドリーな沿線スポット
- マルテ珈琲焙煎所(長野県上高井郡小布施町小布施788)/アイスラテがおすすめ。コーヒー×小布施牛乳の濃厚な一杯
- カリースパイス山路(長野県飯山市南町26-14)/ランチにおすすめのカレー店。看板の”山路カリー”を(公式Instagram)
- ブルーベリー園まつき (長野県上水内郡信濃町野尻3884-227/黒姫高原)/ライド途中のフルーツ補給に。収穫は7〜8月ごろ(掲載:長野県公式観光サイト)
- ホテルタングラム 斑尾東急リゾート(長野県上水内郡信濃町古海3575-8)/自転車と泊まれるサイクリストルーム
- Myoko Coffee 高原駅前店(新潟県妙高市田口307-6)/妙高高原駅前。2日目のコーヒーブレイクに
- 信越自然郷アクティビティセンター(信州いいやま観光局)(長野県飯山市飯山772-6/飯山駅1F)/ルート相談・レンタサイクルの拠点
中島康晴

福井県出身の元プロロードレーサー。現役16年間でUCI(国際自転車連合)レース9勝を挙げ、引退後は母校の教壇にも立つ経歴の持ち主だ。走りのプロであると同時に大の鉄道ファンでもある中島さんにとって、「自転車をそのまま列車に載せて移動し、降りた駅から走り出す」というサイクルトレインの旅は、まさに二つの”好き”が重なる体験。今回は自宅のある福井から長野まで輪行し、長野駅から妙高高原方面へ、列車とライドを織り交ぜた1泊2日を楽しんだ。
- BRAND :
- Bicycle Club
- CREDIT :
- 撮影と文:バイシクルクラブ編集部
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