
マウンテンバイク活用が国の政策に!「第3次自転車活用推進計画」が閣議決定、防災や観光の切り札へ
Bicycle Club編集部
- 2026年06月05日
2026年5月29日、政府による新たな「第3次自転車活用推進計画」が閣議決定された。今回の計画では、これまでスポーツやレジャーの枠組みで語られがちだったマウンテンバイク(MTB)が、観光振興や交通安全教育、さらには災害対応といった「社会的課題の解決手段」として、国の政策に明確に位置づけられた。日本のオフロード自転車シーンにとって歴史的な転換点とも言えるこのニュースを、長年働きかけを行ってきた「MTB活用社会推進連絡協議会」のビジョンとともに紐解いていこう。
ついに国が動いた。MTBが切り拓く新たな自転車の可能性

自転車活用推進法に基づき政府が5年ごとに策定する「自転車活用推進計画」。2026年5月29日に閣議決定された「第3次」となる新たな計画には、これまでとは一線を画す画期的な内容が盛り込まれた。それが「マウンテンバイク(MTB)をはじめとする多様な自転車の活用」だ。
これまで、日本のMTBシーンは欧米などの先進国に比べてフィールドの少なさやルールの未整備が課題とされてきた。そんな中、株式会社オリエンタルコンサルタンツ、株式会社JPF、ヤマハ発動機株式会社、一般社団法人山守人の4社が連携し「MTB活用社会推進連絡協議会(以下、MTB協議会)」を結成。MTBを単なる遊び道具ではなく、過疎化や高齢化、交通空白といった中山間地域の複合的な課題を解決するためのツールとして位置づけ、全国各地で先進的な事例を積み重ねてきた。
彼らが国や自治体に対して行ってきた長年の要望や実証実験が、健全な政策形成プロセスの中で高く評価され、今回ついに国の5ヵ年計画という明確な形で位置づけられることとなったのだ。

計画に明記された、MTBが担う「3つの柱」
今回の第3次自転車活用推進計画において、MTBの活用は大きく分けて3つの社会的役割を期待されている。
1. 災害時における「機動力」としての自転車活用

熊本地震や能登半島地震などの大規模災害において、ガソリン不足や道路の寸断、深刻な交通渋滞が課題となった。こうした過酷な状況下において、段差や悪路を走破できるMTB(特にE-MTB)は、極めて高い機動性を発揮する。
本計画では「災害時における道路その他の被災状況の迅速な把握のため、国道事務所等において自転車を配備し、訓練を重ねる等により危機管理体制を強化する」と明記され、平時からの訓練や、地方公共団体における移動手段としての自転車活用が強く推奨されている。和歌山県海南市などで進められている「発災時・平常時を問わず機能するフェーズフリーな公園づくり」は、まさにこの理念を体現するものだ。

2. 子どもの安全教育と、公園・自然環境の活用

若年層の自転車事故の多さや、学校統廃合による通学距離の増加が社会問題となる一方で、近年「自転車に乗れない、または乗る練習をする場所がない」子どもが増加しているというデータがある。
これに対し国は、都市公園や自然公園を有効活用し、安全に自転車に乗れる環境を創出することを施策として掲げた。千葉市の競輪場を活用したMTB環境や、山梨県市川三郷町の市川公園MTBフィールドにおける「乗車技術教室」のような好事例を全国へ周知し、未就学児から高校生まで、発達段階に応じた交通安全教育の場としてMTBフィールドの活用を促進していく構えだ。

3. アドベンチャーツーリズムによる観光振興と地方創生

世界的に約1兆米ドルの市場規模があると言われる「アドベンチャーツーリズム」。本計画では、地方部へ観光客を呼び込む強力なコンテンツとして、MTBを活用したサイクルツーリズムが明記された。
「マウンテンバイクを活用した様々な取組の推進等により、世界に誇るサイクリング環境を創出する」とされ、森林空間を活用したツアーや、インバウンド誘致による関係人口の拡大、地域の雇用創出を目指していく。
目指すは欧米並みの普及。「公共の山道活用」への挑戦

今回の閣議決定は、サイクリストにとって非常に喜ばしいニュースであると同時に、これからの日本のトレイル環境が劇的に変わる可能性を秘めている。
MTB協議会によれば、現在日本のMTB人口比率は欧米など先進国の約「1/100」にとどまっているという。この決定的な差を生んでいる最大の要因が、フィールドの圧倒的な不足だ。これを解決するため、同協議会は専用パークを新たに建設するだけでなく、日本中の山々に眠る「公共の山道(遊休インフラ)」を有効活用し、フィールドの爆発的拡大を目指すという壮大なビジョンを描いている。

もちろん、日本の山道には複雑な権利関係や利用ルール、登山者等との合意形成といった高いハードルが存在する。しかし、今回の国の「お墨付き」を得たことで、全国の自治体や関係機関との連携が加速することは間違いない。

MTB協議会は現在、活動のさらなる発展と社会的信頼性向上を目的に「法人化」を準備中だ。法人化によって体制を強化し、山道利活用のガイドライン整備や維持管理手法の確立、そしてさらなる政策提言を行っていくという。
日本のマウンテンバイク環境は、一部の愛好家のためのものから、「国民が広く親しみ、地域社会を支えるインフラ」へと進化を遂げようとしている。バイシクルクラブでは、全国に広がるこの新たなサイクリングの波と、フィールド開拓の動向を今後も注視していきたい。
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