
脊椎を守る自転車用エアバッグ、ツール・ド・フランスを前にスーダル・クイックステップとカステリらがキックオフ
Bicycle Club編集部
- 2026年07月04日
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2025年7月3日、ツール・ド・フランス開幕前日のバルセロナで開かれたスーダル・クイックステップのプレスカンファレンスにて、カステリ(Castelli)、スーダル・クイックステップ(Soudal Quick-Step)、AGインシュランス・スーダル(AG Insurance Soudal)の3者が、イタリアのスタートアップ企業RAGAZ(ラガッツ)と共同で、自転車用エアバッグクラッシュプロテクションシステムの開発・テストに取り組むことを発表した。
脊椎保護に特化したRAGAZ統合型エアバッグ

このシステムは、落車時にライダーの脊椎を保護することを目的に設計されたもの。近年、プロトンでは重大な脊椎損傷事故が相次いでおり、その対策として開発が進められてきた。
カステリはプロトタイプの段階から、ハイパフォーマンスウェアへのシームレスな統合を重視。エリートレースに求められる快適性、運動の自由度、エアロダイナミクスを損なわない設計を実現しているという。

主な技術的特徴
RAGAZシステムの技術的なポイントは以下のとおりだ。
- 超軽量設計:重量はエナジージェル約2本分。従来の安全装備にありがちなかさばりや重量増を回避している
- 高速展開:200ミリ秒でのインフレーション(膨張)を実現
- スマートデフレーション:誤作動時にもライダーの動きを制限し続けないよう、制御された自動収縮機能を搭載
- メンテナンス性:充電式で、ウェアからの取り外しが可能。洗濯にも対応する
チーム、メーカー、スタートアップのコメント

カステリのグローバルブランドマネージャー、スティーブ・スミス氏は「安全性はカステリがスーダル・クイックステップおよびAGインシュランス・スーダルとのパートナーシップで最重要視する領域だ。視認性の向上や耐摩耗プロテクションの実験に続き、RAGAZと共に最先端のエアバッグシステムを統合する。深刻な怪我を防ぎつつ、日常的に使える実用性を備えたシステムを、すべてのサイクリストに届けることが目標だ」と語った。
スーダル・クイックステップCEOのユルゲン・フォレ氏は「RAGAZとカステリが開発しているソリューションは、プロサイクリングで使用可能な適切なサイズ感を備えた初のプロダクトだ。トレーニングおよびレースでの着用を通じて、開発に貢献していきたい」とコメントしている。
RAGAZ創業者のフランチェスコ・ラガッツィーニ氏は「パフォーマンスや快適性を犠牲にすることなく、サイクリストの体で最も重要かつ脆弱な部位を守るソリューションの開発が、長年の目標だった。スーダル・クイックステップやカステリのようなエリートサイクリングの知見を持つ組織と共にプロジェクトを評価できることは、大きな前進だ」と述べた。
加速する自転車用エアバッグ開発競争
カステリ×RAGAZの発表は、2026年に入って急速に活発化している自転車用エアバッグ開発の流れに連なるものだ。現在、主に3つのシステムが並行して開発・テストされている。
Aerobag(ベルギー)

2026年1月のベロフォリーズで発表され、最も早くワールドツアーチームとの提携を実現した。CO2カートリッジ方式で、ビブショーツのストラップに沿ってTPUチューブを配置し、展開時間は100ミリ秒。ピクニック・ポストNLがトレーニングでの使用を開始しており、ヴィスマ・リースアバイクもシステムの納入を受けている。
保護範囲は骨盤、肋骨、鎖骨、首と広い。スタンドアロン型のため、複数のウェアに付け替えて使用可能な点が特徴だ。ウェアブランドのナリーニ(Nalini)がDyneema素材のビブショーツにAerobagを統合した製品をすでに一般販売しており、3社の中で唯一、市販段階に入っている。
7月3日のツール開幕前日にピクニック・ポストNLのプレスカンファレンス(バルセロナ)でAerobagの実演デモも行われるなど注目を集めている。
Van Rysel Project Airbag(フランス/デカトロン)
2026年4月に発表。MotoGPで実績を持つIn&motion社と共同開発し、エアバッグをスキンスーツに完全統合した点が特徴。展開時間は60ミリ秒と3社中最速で、スーツ全体の重量は約700g。デカトロンCMA CGMチームで検証中で、2年以内の一般販売を計画している。
UCIも年内にワーキンググループを開設

Aerobagはナリーニを通じてすでに市販段階に入っており、Van RyselとRAGAZ×カステリはプロトタイプの検証・開発フェーズにある。UCI(世界自転車競技連合)もエアバッグ導入に関する協議を開始しており、近年のプロトンにおける重大事故の増加を背景に、ヘルメット義務化(2003年)以来最大の安全装備革新が現実味を帯びてきたと言えるだろう。
ただし、現時点でエアバッグのレース使用を認めるUCI規則は存在しない。UCIは2026年1月の管理委員会でエアバッグおよびプロテクティブウェアに関する関係者公募を決定し、2026年中にワーキンググループを組織して性能基準・規制フレームワークの策定に着手する方針だ。
Aerobag開発陣は「レースでの使用はおそらく来年(2027年)から」との見通しを示し、Van Ryselもレース投入は「すぐには実現しない」としている。RAGAZ×カステリもツール・ド・フランスでの使用には言及を避けた。各社ともトレーニングでの実証が先行しており、2027年シーズンが最初の転換点となりそうだ。
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