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巨大古墳と五重塔をE-BIKEで吉備路を巡る!|Setouchi Vélo協議会 岡山県・総社ミーティング

2026年8月5日(水)、岡山県総社市の吉備路(きびじ)エリアで「Setouchi Vélo(セトウチヴェロ)協議会 岡山県・総社ミーティング」が開催された。瀬戸内周辺地域を世界に誇るサイクリング推進エリアへ育てることを目的とする同協議会。今回は「晴れの国・岡山」を代表するサイクリングコースのひとつ、吉備路自転車道を舞台に、E-BIKEでのトライアルライドと産官学によるミーティングが行われた。加盟団体や県内関係者ら42名が集まり、猛暑のなかでも熱のこもった議論が交わされた。その模様をレポートする。

夏の吉備路をE-BIKEで駆ける——国内最大の”登れる古墳”と五重塔、旬のフルーツ

スタート地点の総社運動公園。E-BIKEに乗り込む参加者たち
出発前、コイデルの門田基志代表がE-BIKEの乗り方とハンドサインを講習

午前のトライアルライドは、総社運動公園(総社市三輪)を起点に、吉備路自転車道ルートの約12.7kmを走るコース。事務局が用意したE-BIKE(電動アシスト自転車)での試走とあって、坂道や夏の暑さを気にせず、初めての参加者も気持ちよくペダルを回した。

岡山県産業労働部の草替隆樹次長。吉備路自転車道ルートは、備中国分寺や造山(つくりやま)古墳などの歴史遺産を結ぶ魅力あるコースであることを説明した

スタート前には、開催地を代表して岡山県産業労働部の草替隆樹次長が挨拶。続いて安全講習として、オージーケーカブト広報チームの柿山昌範氏が「ヘルメットの正しい被り方」を、コイデルの門田基志代表が「E-BIKEの乗り方とハンドサイン」をレクチャー。岡山出身だという柿山氏は「眉毛の上、指1本分くらいの位置に、深くまっすぐ被る」ことをポイントに挙げつつ、備中国分寺にまつわる高校時代の思い出も披露して会場を和ませた。13時20分、一行は多目的広場をスタートした。

コースはまず、青々とした田園の間を抜ける自転車道へ。約4km先の「JA晴れの国岡山 旬感広場『晴れのち晴れ』」では、開催地からの”おもてなし”として岡山の旬のフルーツなどの補食が振る舞われ、暑さに火照った体をクールダウンさせた。

その後は、墳丘の上まで登れる古墳としては国内最大、全長約350mで全国第4位の規模を誇る「造山(つくりやま)古墳ビジターセンター」に立ち寄り、頂上から”吉備王国”のスケールを体感。さらに、田園の中にそびえる備中国分寺の五重塔(高さ約34m)が絶好の撮影スポットとなり、参加者は吉備路を代表する景観にカメラを向けた。ゴールは温泉も楽しめる国民宿舎「サンロード吉備路」。硫黄分を含む”美人の湯”が、汗を流したサイクリストを迎えた。

田園の中にそびえる備中国分寺の五重塔。吉備路を代表する景観だ
田園の中にそびえる備中国分寺の五重塔。吉備路を代表する景観だ

「自転車の仲間に、総社市を混ぜてほしい」——総社市長のユニークな歓迎

ユーモアたっぷりに参加者を歓迎した総社市の片岡聡一市長

午後のミーティングは、開催地を代表しての挨拶で幕を開けた。まず登壇した総社市の片岡聡一市長の挨拶は、終始ユーモアたっぷりだった。「よくぞ来ていただいた。自転車に乗っていること自体がすごいと思う」と参加者をねぎらいつつ、瀬戸内のサイクリングルートに吉備路が組み込まれていることへの喜びを語った。

片岡市長自身、毎朝約4kmのランニングを、この日で714日連続で続けているという”健脚”。「動くことは面倒くさい。でも毎日続けて体を鍛えることは、人生にとってとても大事」と、日々の実践から得た実感を交えて会場を沸かせた。

また、総社ならではのインバウンド事例も紹介。片岡市長によれば、地元でツアーを手がけるネパール系の事業者が、北欧などからの旅行者を総社駅前のレンタサイクルで吉備路ルートへ案内しており、年間およそ1,200〜1,300人規模の来訪につながっているという。「外から見ると、ここは自転車でちょうどいい。これからもみんなで広げていきたい」と語り、「ちっぽけな総社市ですが、自転車の仲間に混ぜていただけたら嬉しい」と、協議会への参画に強い意欲を示した。

加盟90団体へ——協議会の広がりと「シェア・ザ・ロード」

事務局を代表して挨拶した本州四国連絡高速道路の後藤隆昭取締役常務執行役員

事務局を代表して挨拶に立ったのは、本州四国連絡高速道路の後藤隆昭取締役常務執行役員。自らも自転車をたしなむという後藤常務は、「アシスト付きで走ると風がとても気持ちよく、暑さの中でも爽やかに楽しめた」とトライアルライドを振り返った。

そのうえで、2022年10月の設立から4年目を迎えた同協議会が、これまでに90団体の加盟へと広がったこと、岡山県知事が会長を務めていることを報告。今回のミーティングにも19の加盟団体をはじめ、県内関係者やJR西日本などを含む計42名が参加したと紹介した。

また、協議会が進める安全啓発活動「シェア・ザ・ロード」にも言及。「自動車・自転車・歩行者が譲り合って道路を使おう」という取り組みで、9月21〜30日の秋の全国交通安全運動の期間中、県内のバス広告やSNS、交通安全イベントなどを通じて啓発を行う予定だと呼びかけた。

8ルートとサイクルカフェ、そしてインバウンドへ——「ハレいろ・サイクリングOKAYAMA」(開催地発表)

「ハレいろ・サイクリングOKAYAMA」の取り組みを発表した岡山県観光課の橋本博幸総括副参事
「ハレいろ・サイクリングOKAYAMA」の取り組みを発表した岡山県観光課の橋本博幸総括副参事

開催地発表では、岡山県観光課の橋本博幸総括副参事が登壇。「県を代表して、皆様をここ岡山・総社市にお迎えできて大変嬉しい」と歓迎の言葉を述べ、午前のライド参加者には「暑いなかでの走行、お疲れさまでした」とねぎらった。そのうえで橋本総括副参事は、総社市を中心とする吉備路エリアを「のどかな田園風景の中に、備中国分寺の五重塔や巨大な古墳群が点在する、歴史と自然が調和したサイクリングエリア」と紹介し、「ハレいろ・サイクリングOKAYAMA」の取り組みを具体的に語っていった。

岡山県は平成27〜29年度の事業で、8つのサイクリング推奨ルートを設定。この日の舞台となった吉備路自転車道ルートのほか、瀬戸内の風情と廃線跡を楽しむ「片鉄ロマン街道ルート」、蒜山高原の雄大な自然を満喫する「蒜山高原自転車道ルート」など、県内各地の特徴を活かしたコースを揃える。専用ウェブサイトでは、推奨8ルートに加え、県内市町が設定する43のサブルートの情報も発信。デジタルスタンプラリーなどを通じて、来訪促進と利用データの分析にも取り組んできたという。

以前実施したSetouchi Vélo協議会で片鉄ロマン街道ルートを走った様子▼

Setouchi Vélo協議会第4期会長に岡山県知事が就任、片鉄ロマン街道を走り、未来を語る

Setouchi Vélo協議会第4期会長に岡山県知事が就任、片鉄ロマン街道を走り、未来を語る

2026年02月12日

ハード整備に加えて力を入れるのが、令和5年度に始めた「ハレいろサイクルカフェ制度」だ。ルート周辺の観光施設やグルメスポットと連携し、スタンドや空気入れ・工具の貸し出し、休憩・給水サービスなどを提供してもらう仕組みで、サイクリストの憩いの場となると同時に、地域事業者の新たな集客のきっかけにもなることが期待されている。

今年度は「ルートの魅力開発強化」と「インバウンド向けプロモーション」の2本柱で事業を展開。年1ルートを対象としたモニタリング調査や、新規パンフレット・専用サイトの改修に加え、サイクリング人気の高い台湾の旅行博に出展してPRを行う。

開催地・総社市の取り組みとしては、レトロな街並みを巡る「総社商店街チャリクルーズルート」や、吉備路自転車道のうち総社駅〜備中一宮駅の約15kmを「きびーろーど」としてPRするなど、独自の工夫を紹介。橋本総括副参事は「サイクリストの目線に立てば、行政区域の境界は意識されない。県内で完結せず、瀬戸内を囲む各県・各市町村のルートとつながることで、エリア全体の魅力向上に寄与したい」と、広域連携への意欲を語った。

サイクルツーリズムの”稼ぎ方”——井上寿氏が語るインバウンドと地域連携(講演)

「サイクルツーリズム推進への取り組み」と題して講演した、ライダスの井上寿代表取締役

講演には、自転車専門の旅行会社・ライダス(本拠地:滋賀県)の井上寿代表取締役が登壇。「サイクルツーリズム推進への取り組み」と題し、インバウンドの実務家ならではの率直な視点から、サイクルツーリズムの可能性と課題を語った。

井上代表が主力とするのは、広域・複数日にわたる富裕層向けの「エスコーテッドツアー(フルアテンド型ツアー)」。「1番お金が落ちるから」とその理由を明かし、1人あたり5,000〜10,000ドル規模になる例もあると紹介した。同社は2023年にUNツーリズム(旧UNWTO)の署名企業として認められ、持続可能なサイクルツーリズムにも取り組んでいる。

いっぽうでまったく逆のアプローチも紹介。京都で行っている3時間・1人3万円ほどのカジュアルなツアーでは、”ぴったりしたウェアで飛ばす”コースではなく、農作業や商店街といった「日本の原風景・日常」を巡ることで、海外客に高く評価されているという。「日本はロードバイクに偏りがちだが、もっとカジュアルなサイクリングに目線を落とす方がビジネスになりやすい」と、日本と海外の自転車文化のギャップにも触れた。

最後に井上代表は、「インバウンドで稼ぐなら、マスではなく異国情緒(エキゾチシズム)を求める層に向けること。そして”広域”が大きな力になる」と指摘。自身が京都で展開する「グレーター京都」の取り組みを例に挙げ、「ひとつの魅力的なポイントを核に、広域で結んでいくことがエスコーテッドツアーの鍵になる。Setouchi Véloは広域だからこそチャンスが多い」とエールを送った。

パネルディスカッション「サイクリングルートを活用した観光振興について」——吉備路の”勝ち筋”を探る

テーマ「サイクリングルートを活用した観光振興について」で行われたパネルディスカッション。右からコーディネーターのコイデルの門田基志代表、地域ソリューションパートナーズの前田浩輝代表取締役社長、ライダスの井上寿代表取締役、サイクルスポーツ編集部の迫田賢一統括編集長、バイシクルクラブ編集部の山口博久編集長

ミーティングの締めくくりは、「サイクリングルートを活用した観光振興について」をテーマにしたパネルディスカッション。コーディネーターをコイデルの門田基志代表が務め、パネリストには地域ソリューションパートナーズの前田浩輝代表取締役社長、ライダスの井上寿代表取締役、サイクルスポーツ編集部の迫田賢一統括編集長、バイシクルクラブ編集部の山口博久編集長が登壇。行政・ツアー事業者・メディアそれぞれの立場から、吉備路をどう磨けば観光につながるのかを掘り下げた。

「素材はある。まだ発掘されていないだけ」——吉備路ツアーの現在地

まず前田社長が、昨年度から手がける吉備路ツアーの取り組みを紹介した。折りたたみ自転車を使い、目的地からは電車で輪行するワンウェイ形式で、あぜ道や農道といった”小道”を織り交ぜながら、ガイドが桃やブドウの栽培文化などを解説していくスタイルだという。

一方で前田社長は、岡山県のインバウンドが「経由地」にとどまりがちな現状を課題に挙げた。県内の外国人宿泊は年々増えているものの、隣接する広島の5倍以上、大阪の10倍以上という差があり、多くは広島・京都・直島への通過点になっているという。「電車やバスで移動し、そこからスタートするサイクリングツアーがあってもいい」と提案し、「岡山は素材がないのではなく、まだ発掘されていないだけ。広域でつなげば、他地域との連携ももっとスムーズになる」と語った。

議論の中心になったのが「ストーリー」の力だ。井上代表は、しまなみ海道で「島のでき方」を語ると急に全島を巡りたがる客が現れた例や、各地の城の成り立ちを侍の歴史として結ぶ「セブン・キャッスル・ツアー」、渡来系のルーツをたどる岩国発のライドなどを紹介。「吉備エリアは出雲との関係など、インタープリテーション(解説)の題材が非常に濃い。しかも派手な観光地に行くわけではない」と、その潜在力を評価した。

コーディネーターの門田代表も「ヨーロッパのサイクリングルート(ユーロベロ)には、騎士団が進軍した道や巡礼路といったストーリーが必ずある」と応じる。メディアの立場からは迫田統括編集長が呼応し、「熊野古道やお遍路と同じだ」。自身も参勤交代の旧街道を自転車で走破した経験から歴史にのめり込んだといい、「大人になって遊びながら日本史を学び直した」と振り返った。

さらにコイデルの門田代表は地元では”当たり前”の風景こそ海外客に刺さるという価値の逆転を指摘。「僕らが石造りの家で写真を撮るように、海外の人は日本の瓦屋根や田んぼの畦道で撮りたがる。畦の真ん中に立って撮ると、みんな本当に喜びます」。この日走った田園の緑や備中国分寺の風景に、パネリストたちは「チャンスは非常にある」と手応えを口にした。

ガチ勢だけでなく家族も——「自転車+α」の可能性

日本人客の取り込みと「自転車+α」の可能性を語る、バイシクルクラブ編集部の山口博久編集長

バイシクルクラブ編集部の山口編集長は、日本人客の取り込みを課題に挙げた。「意識の高いサイクリストは今日のコースを楽しめるが、家族連れがそのまま楽しめるか。むしろガチのサイクリストより、観光として自転車を楽しむ方の声のほうが貴重なことも多い」。解決の糸口として、修学旅行にワンランク上の自転車体験を取り入れることや、欧州に多い観光地で気軽に楽しむサイクリングのスタイルを紹介。「すぐには変わらないが、日本でも観光地でサイクリングを楽しむようになる、5年後、10年後に大きく変わってくる」と、長期的な種まきの重要性を説いた。

「自転車+α」というキーワードも浮かび上がった。迫田統括編集長は、アンバサダーを務める愛媛県上島町で、自転車にカヤックやサウナ、ヨットなどを組み合わせた体験が原体験になったと紹介。

門田代表も「移動の先に川遊びや収穫体験があり、そこで人との触れ合いが生まれるのが理想」と、地域住民との共創を思い描いた。ちなみに門田代表は、今回ガイドから聞いた岡山白桃の”うんちく”にすっかり魅了され、「帰りに桃を買った」と会場を沸かせる一幕もあった。

最後に、コーディネーターの門田代表が議論をまとめた。寺社や干拓の歴史、桃太郎伝説など「使える素材はいっぱいあるのに、インバウンドの観点ではまだ使われていない」と課題を整理。そのうえで「来年あたり、井上さんにしっかり吉備のツアーを組んでもらい、それがメディアに載っていくことを期待したい」と語り、白熱したディスカッションを締めくくった。

猛暑の吉備路から、瀬戸内の広域連携へ

歴史遺産と田園風景が一体となった吉備路を舞台に、行政・民間・メディアがそれぞれの立場から意見を交わした今回のミーティング。「晴れの国・岡山」が掲げる8ルートの取り組みと、”量より質”を見据えたインバウンド戦略、そして瀬戸内全体をつなぐ広域連携——。サイクルカルチャーの新たな循環を生み出そうとする総社・吉備路の今後に、引き続き注目していきたい。

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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