
エンリク・マスが31歳で悲願のグランツール初制覇|ブエルタ・ア・エスパーニャ2026総集編
Bicycle Club編集部
- 2026年09月14日
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9月13日、スペイン・グラナダでブエルタ・ア・エスパーニャ2026が全21ステージの戦いを終えた。総合優勝はエンリク・マス(モビスター チーム)。ブエルタで3度の2位を含む4度の表彰台を経て、31歳でついに手にしたキャリア初のグランツール制覇だった。大本命タデイ・ポガチャルの落車リタイア、13日間にわたる赤いジャージの防衛、そして最終日グラナダでの3人スプリント決着まで。波乱の3週間を振り返る。
モナコ開幕、総獲得標高58,000m超という難コース
©A.S.O-Cxcling Creative Agency-Toni Baixauli
今大会は8月22日、モナコでの9.4km個人タイムトライアルで幕を開けた。総獲得標高は58,000mを超え、ピレネーとアンドラでの序盤の試練から、カラル・アルト、シエラ・デ・ラ・パンデーラ、ペーニャス・ブランカス、そして勝負を決したコジャード・デル・アルグアシルまで、山頂フィニッシュが繰り返し用意された。最終週にはもう一度の個人TTも組まれ、クライマーにもTTスペシャリストにも隙のない3週間となった。
すべてを変えた第8ステージ ポガチャルの落車リタイア

序盤戦でマイヨ・ロホを掌握していたのはタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)。しかし8月29日の第8ステージ(プソル〜シェラコ、171km)、残り30kmを切った地点で発生した高速落車に巻き込まれ、自らの足で救急車へと向かった。脳震盪、左鎖骨の転位骨折、C7頸椎骨折(安定型)。ステージレースの途中棄権はキャリア史上初であり、ブエルタの総合リーダーが落車で去るのは2010年のイゴール・アントン以来16年ぶりの出来事だった。
ステージ優勝はブリアン・コカール(コフィディス)。悲願のグランツール初勝利だった。そしてマイヨ・ロホは、エンリク・マスの肩に渡った。
「棚ぼた」で終わらせなかった男 第9ステージ・アイタナの勝利

赤を着た者が背負うプレッシャーは重い。だがマスは翌第9ステージ(ビジャホヨサ〜アルト・デ・アイタナ、187.4km)で、その疑念を自らの脚で払拭してみせた。厳しい山頂フィニッシュでオスカー・オンリー(ネットカンパニー・イネオス)とのスプリントを制し、リーダーとしての初勝利を挙げたのだ。ここから最終日まで、マスは13ステージにわたってマイヨ・ロホを守り抜くことになる。
ヴィスマが席巻した平坦ステージ ブレナン5勝、ファンアールト2勝

総合争いの傍らで圧巻の強さを見せたのが、チーム ヴィスマ・リースアバイクだった。マシュー・ブレナンが5勝、ワウト・ファンアールトが2勝と、2人だけで計7ステージを制圧。ファンアールトは326ポイントを積み上げてポイント賞(マイヨ・ベルデ)を獲得し、273ポイントの2位ブレナンに53ポイント差をつけた。
第20ステージ 大混戦のクイーンステージ

最大の山場は第20ステージ、コジャード・デル・アルグアシル山頂フィニッシュ。総合2位プリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)にとって逆転の最後のチャンスだったが、マスはモビスターのアシストとともに混沌を乗り切り、赤を死守した。ステージ優勝は逃げから抜け出したミケル・ランダ(スーダル・クイックステップ)。2位にはトビアス・ハランド・ヨハネセン(ウノエックス・モビリティ)が入った。
総合ではセップ・クス(チーム ヴィスマ・リースアバイク)が5位を劇的に奪取。一方で、前日に感動的なステージ優勝を挙げたエディ・ダンバー(ピナレロ・Q36.5)がリタイアし、高速落車でさらに2名がレースを去るなど、最終決戦にふさわしい過酷な一日となった。
最終日グラナダ、ヨハネセンが3人スプリントを制す

最終第21ステージはグラナダ発着の112km。アルト・デ・ラ・アルハンブラ(2.1km・平均6.6%)を含む周回コースだったが、主催者とCPAの協議により安全上の理由から最終周回の総合タイム計測は無効化され、4回目のフィニッシュライン通過時点で総合順位が確定した。
それでもステージ優勝争いは全開だった。残り24kmで有力勢が先行し、山岳賞ジャージのサンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス)を含む追走が合流。終盤はアクセル・ローランス(ネットカンパニー・イネオス)の単独アタックを追う展開から3人のスプリントへ。最終右コーナーを先頭で抜けたヨハネセンが、アレッサンドロ・ロメレ(XDS・アスタナ チーム)とラムセス・デブリュイン(アルペシン・プレミアテック)を振り切った。
「今日は本当に期待していなかった。マグヌス(コルト)のキャリア最終日を特別なものにしたかった。長いあいだドアをノックし続けてきたから、今日は本当に特別だ」とヨハネセン。この日はステフェン・クライスウェイク(チーム ヴィスマ・リースアバイク)にとってもキャリア最後のレースとなった。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2026 最終結果
第21ステージ成績
1 トビアス・ハランド・ヨハネセン(ウノエックス・モビリティ、ノルウェー)2:54:08
2 アレッサンドロ・ロメレ(XDS・アスタナ チーム、イタリア)ST
3 ラムセス・デブリュイン(アルペシン・プレミアテック、ベルギー)ST
4 マシュー・ブレナン(チーム ヴィスマ・リースアバイク、イギリス)ST
5 バスティアン・トロンション(グルパマ・FDJユナイテッド、フランス)ST
個人総合成績(マイヨ・ロホ)
1 エンリク・マス(モビスター チーム、スペイン)73:52:55
2 プリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ、スロベニア)+2’15”
3 フェリックス・ガル(デカトロン・CMA CGMチーム、オーストリア)+2’44”
4 リチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト、エクアドル)+6’54”
5 セップ・クス(チーム ヴィスマ・リースアバイク、アメリカ)+8’45”
6 オスカー・オンリー(ネットカンパニー・イネオス、イギリス)+9’28”
7 ヤコブ・オムルゼル(バーレーン・ヴィクトリアス、スロベニア)+10’38”
8 クレマン・ベルテ(グルパマ・FDJユナイテッド、フランス)+11’41”
9 クリスティアン・ロドリゲス(XDS・アスタナ チーム、スペイン)+11’59”
10 ハロルド・テハダ(XDS・アスタナ チーム、コロンビア)+12’51”
ポイント賞(マイヨ・ベルデ)
ワウト・ファンアールト(チーム ヴィスマ・リースアバイク、ベルギー)326pts
山岳賞(マイヨ・ルナレス)
サンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス、コロンビア)78pts
ヤングライダー賞(マイヨ・ブランコ)
オスカー・オンリー(ネットカンパニー・イネオス、イギリス)
チーム総合成績
デカトロン・CMA CGMチーム 222:25:14
スペインに12年ぶりに帰ってきたマイヨ・ロホ

スペイン人ライダーが自国のグランツールを制するのは2014年以来。モビスターにとってもグランツール総合優勝は2019年以来となる。
「忘れられない一日、素晴らしい一日だ。最終日は何が起きるか分からない緊張がつねにあるし、ここまで来るのに長い時間がかかった。これは本当に特別なものだ」
レース後の会見で、マスはそう語った。何度も表彰台の階段を上りながら、その最上段にだけは届かなかった男。転がり込んできたように見えた赤いジャージを、13日間かけて「自分のもの」に変えた3週間であった。
- BRAND :
- Bicycle Club
- CREDIT :
- PHOTO:A.S.O-Cxcling
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