
バーンズ独走劇!シマノが大臣旗奪還、岡がブリッツェンに14年ぶり年間個人総合V、広島が逆転チーム総合制覇
せいちゃん
- 2026年09月20日
INDEX
2026年JBCFロードシリーズの天王山「第60回 経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ/第11回 南魚沼ロードレース」が9月19日、新潟県南魚沼市の三国川(さぐりがわ)ダム周回コースで開催された。真夏を思わせる過酷な暑さのなか行われた144kmの決戦は、残り2周で鋭いアタックを決めたルーク・バーンズ(ヴィクトワール広島、オーストラリア)が圧巻の独走勝利。団体戦「経済産業大臣旗」はシマノレーシングが17年ぶりに奪還し、個人総合優勝(プロリーダー)は岡篤志(Astemo宇都宮ブリッツェン)が死守。そしてチーム総合優勝はヴィクトワール広島が劇的な逆転でチーム史上初の栄冠に輝いた。
個人総合、チーム総合、そして経済産業大臣旗――すべてのタイトルが懸かる運命の最終決戦

国内最高峰のJプロツアー(JPT)第11戦にして2026年シーズンの最終戦を迎えた南魚沼ロードレース。伝統の「経済産業大臣旗(輪翔旗)」を懸けた今大会は、レースレイティング最高峰の「PLATINUM」に設定され、獲得ポイントが極めて高い。
レース前の段階で、年間王者争い(プロリーダー)は岡篤志(Astemo宇都宮ブリッツェン)が2146点、孫崎大樹(ヴィクトワール広島)が1878点と268点差。チーム総合ランキングでも首位のAstemo宇都宮ブリッツェン(4507点)を、442点差でヴィクトワール広島(4065点)が猛追する構図となっていた。さらに各チーム上位3名の着順合計数で争われる団体戦・経済産業大臣旗の行方も絡み合い、スタート前から張り詰めた空気が漂った。

会場となるのは、今年6月の全日本選手権でも舞台となった三国川ダム周回コース。急峻な登坂とテクニカルなハイスピードダウンヒル、そして平坦区間が連続する1周12kmを12周、計144kmの難コースだ。朝から雲が晴れ渡り、日差しとともに気温は手元の温度計で30度に達するタフなコンディションとなった。
序盤から激しい動き シュルツと風間が先行し、最大6分超の大逃げへ
108名がスタートを切ったレースは、序盤から激しいアタック合戦が勃発。1周目に山田拓海(シマノレーシング)と新宮颯太(キナンレーシングチーム)が仕掛けるが、これは2周目までに吸収。続いて3周目、エリオット・シュルツ(ヴィクトワール広島)と風間翔眞(シマノレーシング)の2名が鋭く抜け出し、先行を開始する。

この強力な2名に対し、メイン集団からは谷順成(Astemo宇都宮ブリッツェン)、ルーク・バーンズ(ヴィクトワール広島)、山本元喜(キナンレーシングチーム)、林原聖真、香山飛龍(ともにシマノレーシング)、島崎将男(群馬マンモスレーシング)、野嵜然新(稲城FIETSクラスアクト)、馬場慶三郎(弱虫ペダルサイクリングチーム)、玉城翔太(チームサイクラーズSNEL)ら実力者による追走グループが形成された。

リーダーの岡篤志とライバルの孫崎大樹は互いを意識し合ってメイン集団に待機。前方にはシマノが3名、ヴィクトワール広島が2名、ブリッツェンが1名を送り込んだことで、牽制が生じたメイン集団のペースは急速に落ち着く。先頭2名とメイン集団とのタイム差は、レース中盤の5周目から6周目にかけて一時は「6分20秒」という絶望的な差まで拡大した。
追走グループの奮闘と、メイン集団の猛烈な反撃
追走グループ内では、各チームの思惑が交錯しながらもハイペースなローテーションが回される。Astemo宇都宮ブリッツェンからは谷順成が単騎で入り、チームの年間タイトル死守に向けて懸命に前を追った。


7周回完了時、今大会の中間スプリント賞(地元名産日本酒「魚沼で候」)は、逃げ続ける風間翔眞(シマノレーシング)が獲得。
この頃から、年間タイトルを守るべくAstemo宇都宮ブリッツェンが総力を挙げてメイン集団の牽引を開始する。増田成幸や宮崎泰史、そしてオープン参加の大前翔(Roppongi Express)らが前頭に立ち、1周あたり1分以上のハイペースでタイム差を削り取っていく。

メイン集団は猛烈なペースアップによって縦一列に引き伸ばされ、次々と選手が脱落して20名程度にまで絞り込まれた。
一方の前方では、9周目に追走グループが先頭の2名(シュルツ、風間)をキャッチし、11名の先頭集団が結成される。しかし、長距離を逃げ続けてきたシュルツや風間が10周目の登りで力尽きて後退。先頭はバーンズ、谷、林原、香山、島崎、山本、野嵜、馬場の8名に絞られた。
残り2周、ルーク・バーンズが電光石火のアタックで独走へ

勝負が決定的に動いたのは、残り2周に入る11周回目のホームストレート、フィニッシュ手前の急坂だった。
ここまで先頭グループ内で冷静に脚を温存していたルーク・バーンズ(ヴィクトワール広島)が、右サイドから異次元のキレを見せる電光石火のアタックを放つ。
今年のツール・ド・熊野で山岳ステージを制し個人総合優勝を飾った屈指のクライマーの爆発的な加速に、先頭グループの誰もが即座に反応できない。バーンズは一瞬にしてリードを奪うと、そのまま単独でダンシングを続け、後続を突き放していった。
バーンズを追う第2グループは、昨年の南魚沼ロード覇者である林原聖真(シマノレーシング)と、U23ネクストリーダーの島崎将男(群馬マンモスレーシング)の2名。その後ろに山本元喜、野嵜然新らがバラバラになって続く。

最終周回(12周目)、バーンズは後続との差を20〜30秒に保ち、下り区間もノーミスでクリア。最後の登坂ストレートに満面の笑みで姿を現すと、両手を広げて歓喜のフィニッシュラインを越えた。ヴィクトワール広島に今季JPT初勝利をもたらす、見事な2周独走劇だった。
激しい2位争いと個人総合を懸けた登坂スプリント
バーンズから25秒後、2位争いは林原聖真がスプリントで島崎将男を抑えて2位フィニッシュ。3位に入った島崎は、Jプロツアー自身初となる表彰台を獲得した。続いてキナン勢が猛追を見せ、草場啓吾が4位、山本元喜が5位に入った。
そして注目の個人総合争いは、メイン集団でのスプリント勝負へ。最終コーナーを立ち上がった登りストレートで、孫崎大樹が先行し意地の集団頭(14位)を取る。しかし、その背後を終始徹底マークしていたプロリーダーの岡篤志がわずか1秒差の15位でフィニッシュ。

この結果、岡が見事にプロリーダージャージを死守し、自身初、そしてチームにとっても2012年の増田成幸以来14年ぶりとなるJプロツアー個人総合優勝の栄冠に輝いた。
3つのタイトルが分かれた表彰式:シマノの大臣旗、岡の個人総合、広島の逆転チーム総合

レース後の表彰式では、激動のシーズン最終戦を象徴するドラマが明らかになった。
各チーム上位3名の順位合計で競われる伝統の「第60回 経済産業大臣旗」は、林原聖真(2位)、山田拓海(6位)、香山飛龍(8位)と上位に3名を送り込み合計「16ポイント」としたシマノレーシングが獲得。チームとして2009年以来、実に17年ぶり(通算3回目)となる大臣旗奪還を果たした。序盤から逃げに乗ってレースを動かし、中間スプリント賞と敢闘賞(高木秀彰記念賞)をダブル受賞した風間翔眞の果敢な走りが、チームの勝利を力強く手繰り寄せた。
個人総合(プロリーダー)は、年間を通じて安定した強さを見せた岡篤志(Astemo宇都宮ブリッツェン)が戴冠。ガチンコサイクルTVから贈られた賞金100万円のボードを手に、壇上で最高の笑顔を見せた。U23個人総合(ネクストリーダー)は、3位表彰台に乗った島崎将男(群馬マンモスレーシング)が獲得した。

そして最大の波乱となったのがチーム総合優勝。優勝したバーンズが大量800ポイントを獲得したことで、ヴィクトワール広島がブリッツェンを大逆転。悲願であったチーム史上初のJプロツアー年間チーム総合優勝を達成した。
選手・監督コメント

優勝:ルーク・バーンズ(ヴィクトワール広島)
「チームメイトのシュルツが序盤から逃げてくれたおかげで、自分は集団の中で脚を休めることができた。残り2周の登りでアタックした瞬間、全力を注ぎ込んだよ。シーズン最後のビッグレースで勝つことができて本当に最高の気分だ」
個人総合優勝:岡篤志(Astemo宇都宮ブリッツェン)
「チームとしては2012年の増田選手以来14年ぶりの個人総合優勝です。自分自身、これまで総合2位は2回ほど経験がありましたが、優勝には届いていなかったので、今回ついにこのジャージを守り切ることができて本当に嬉しいです。今季はコンスタントに良い成績を残せましたが、優勝は大田原ロードレースの1回のみで悔しさもありました。それでも1年間の積み重ねとしてタイトルを獲得できました。宇都宮からも多くのファンが応援に来てくださり、皆さんの前でポディウムの頂点に立てて良かったです」
U23個人総合優勝&レース3位:島崎将男(群馬マンモスレーシング)
「前のレース(大田原)でペナルティを受けてしまい監督に立て替えてもらっていたので、まずはその罰金をこの賞金で払って、チームに恩返ししたいです(笑)。JPTで初の表彰台に乗れたことは自信になります。今後はヨーロッパでプロになることを目指して、さらに力を磨いていきたいです」
中間スプリント賞&敢闘賞:風間翔眞(シマノレーシング)
「チーム全員の意識が非常に高く、監督からも『みんな調子が良いから自由に結果を狙っていけ』と指示を受けていました。自分自身が逃げに乗り、チームとして目標だった経済産業大臣旗を獲ることができて本当に満足のいくレースができました。シマノがこの旗を獲るのは2009年以来と聞いて、強いチームの歴史を再び刻むことができて誇らしいです」
チーム総合優勝:西村大輝監督(ヴィクトワール広島)
「選手たちが本当によく頑張ってくれました。前戦の大田原が終わった時点では点差的にかなり厳しい状況でしたが、全員でミーティングを重ね、『最後まで絶対に諦めずに逆転を狙おう』と誓い合いました。サポーターやスポンサーの皆様に『日本一のチームになって帰ってくる』と宣言していたので、有言実行できて選手たちを心から誇りに思います」
他カテゴリーダイジェスト:ベテラン井上の劇的勝利、福山舞の女子戴冠、木村孔南の圧巻独走
午前中から行われた各カテゴリーでも、三国川ダム周回コースならではの熱戦が繰り広げられた。
【E1/E2】:45歳のベテラン井上和郎が巧みな位置取りで勝利
84km(7周)で行われたE1クラス・E2クラス混走レースは、序盤に形成された11名の逃げグループがレースを支配。終盤に人数が絞られるなか、下り区間で果敢に仕掛けた元プロの45歳・井上和郎(バルバサイクルレーシングチーム)と、高校生の三上将醐(横浜立野高校)が先行。最終ストレートで絶妙な番手からスプリントを繰り出した井上が雄叫びをあげて優勝を飾った。2位に入った三上と、3位の橋本晴哉(TRYCLE.ing、中間スプリント賞獲得)がE2からE1昇格の切符を手に入れた。
【F(女子チャンピオンシップ)】:福山舞が登りスプリントを制して女子王者に
60km(5周)で争われた第15回女子チャンピオンシップは、湾岸サイクリング・ユナイテッド勢と林優希(なるしまフレンドレーシングチーム)を中心とした攻防に。最終周回の登坂勝負に持ち込まれ、力強く腰を上げて踏み抜いた福山舞(湾岸サイクリング・ユナイテッド)が林を抑えて優勝。第15代女子ロードチャンピオンの称号を手にした。
【Y(ユースチャンピオンシップ)】:木村孔南が独走劇で完勝
60km(5周)の第15回ユースチャンピオンシップは、今季出場レースで連対率100%を誇る木村孔南(mkw / U17)が4周目から単独アタックを敢行。後続に35秒以上の差をつけて独走勝利を収めた。2位には越知映成(イナーメ信濃山形-EFT)が入り、U17リーダージャージを逆転で手中に収めた。3位にはU15トップの小野聡太(PARK CYCLING TEAM)が入った。
【E3・マスターズ】:滝口敬司と深谷侑司が美酒に酔う
E3(36km)は最終周回の下りで抜け出した滝口敬司(明星大学自転車競技部)が独走逃げ切り勝ち。マスターズ(36km)はMiNERVA-asahiの深谷侑司とシリーズリーダー中村将也のワン・ツー体制となり、深谷が大会2連覇を達成した。
リザルト
JBCF 第60回 経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ(JPT第11戦・144km)
1位 ルーク・バーンズ(ヴィクトワール広島) 3時間40分44秒
2位 林原聖真(シマノレーシング) +25秒
3位 島崎将男(群馬マンモスレーシング) +26秒
4位 草場啓吾(キナンレーシングチーム) +2分33秒
5位 山本元喜(キナンレーシングチーム) +2分33秒
6位 山田拓海(シマノレーシング) +2分33秒
7位 谷順成(Astemo宇都宮ブリッツェン) +2分34秒
8位 香山飛龍(シマノレーシング) +2分34秒
9位 長井健太(アヴニールサイクリング山梨) +2分34秒
10位 馬場慶三郎(弱虫ペダルサイクリングチーム) +2分34秒
経済産業大臣旗(団体順位)
1位 シマノレーシング(16pt)
2位 キナンレーシングチーム(20pt)
3位 ヴィクトワール広島(37pt)
中間スプリント賞:風間翔眞(シマノレーシング)
敢闘賞(高木秀彰記念賞):風間翔眞(シマノレーシング)
2026年 Jプロツアー年間最終ランキング
プロリーダー(個人総合優勝):岡篤志(Astemo宇都宮ブリッツェン)
ネクストリーダー(U23個人総合優勝):島崎将男(群馬マンモスレーシング)
チーム総合優勝:ヴィクトワール広島
【E1/E2】(84.0km)
1位 井上和郎(バルバサイクルレーシングチーム) 2時間08分49秒
2位 三上将醐(横浜立野高校) +05秒
3位 橋本晴哉(TRYCLE.ing) +07秒
4位 布田直也(MiNERVA-asahi) +09秒
5位 櫻庭悠真(MGM GROMA RACING TEAM) +18秒
6位 桜井翔太(アヴニールサイクリング山梨ディベロップメント) +1分10秒
中間スプリント賞:橋本晴哉(TRYCLE.ing)
【F(第15回 女子チャンピオンシップ)】(60.0km)
1位 福山舞(湾岸サイクリング・ユナイテッド) 1時間51分10秒
2位 林優希(なるしまフレンドレーシングチーム) +06秒
3位 西山千智(High Ambition Racing Academy) +26秒
4位 遠藤杏奈(湾岸サイクリング・ユナイテッド) +1分03秒
5位 大堀博美(イナーメ信濃山形-F) +1分48秒
6位 佐藤恵美(Border racing) +1分52秒
【Y(第15回 ユースチャンピオンシップ)】(60.0km)
1位 木村孔南(mkw) 1時間43分00秒
2位 越知映成(イナーメ信濃山形-EFT) +35秒
3位 小野聡太(PARK CYCLING TEAM) +39秒
4位 関愛絆(Team 一匹狼) +41秒
5位 小林悠聖(VeloVivid Racing Team) +57秒
6位 富永和彦(#1-PRIMERA-) +1分02秒
【E3】(36.0km)
1位 滝口敬司(明星大学自転車競技部) 56分06秒
2位 今田康一(MiNERVA-asahi) +01秒
3位 塩崎真和(LINKVISION GIRASOLE CYCLING) +02秒
【M(マスターズ)】(36.0km)
1位 深谷侑司(MiNERVA-asahi) 57分32秒
2位 中村将也(MiNERVA-asahi) +01秒
3位 矢野国康(LINKVISION GIRASOLE CYCLING) +32秒
SHARE
PROFILE
せいちゃん
稲城FIETSクラスアクト所属のJプロツアーレーサー。レースを走る傍ら、国内外のレースや選手情報などを追っている。愛称は「せいちゃん」のほか「セイペディア」と呼ばれている
稲城FIETSクラスアクト所属のJプロツアーレーサー。レースを走る傍ら、国内外のレースや選手情報などを追っている。愛称は「せいちゃん」のほか「セイペディア」と呼ばれている



















