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乗鞍岳最高峰を踏み、変幻の湯へ。剣ヶ峰と白骨温泉「泡の湯」|山本晃市の温泉をめぐる日帰り山行記 Vol.15

温泉大国ニッポン、名岳峰の周辺に名湯あり!下山後に直行したい“山直温泉”を紹介している小誌の連載、「下山後は湯ったりと」。
『PEAKS 2025年12月号(No.175)』では、北アルプスの南端に位置し、日本百名山の一座である乗鞍岳に登りました。下山後の“山直温泉”は、白骨温泉「泡の湯」へ。

“山直温泉”の記事・情報は
『PEAKS 2025年12月号(No.175)』の
「下山後は湯ったりと」にて!

編集◉PEAKS編集部
文・写真◉山本晃市(DO Mt.BOOK)

多彩な表情をもつ乗鞍“連峰”

北アルプス最南部に位置する乗鞍岳。標高3,026mの剣ヶ峰を筆頭に2,000~3,000m級の峰々が23も連なる大山塊だ。一般的に乗鞍岳の名で親しまれているが、実際の山容を見渡すと、乗鞍連峰と呼びたくなる(乗鞍連峰とも呼ぶこともあるようだが、国土地理院地形図では「乗鞍岳」)。

ちなみに「丘」と「山」を組み合わせた「岳」とは、「高くそびえるゴツゴツとした険しい山」のこと。また「連なる山々の最高峰」という意味もある。

上記の23峰をはじめ、7つの山上湖と8つの平原、さらには荘厳な滝や神秘的な森など多彩なロケーションを有する乗鞍岳は、ピークハントに留まらない魅力がある。現地の山岳ガイドさんと一緒に歩くと、23峰はもちろん、山上湖や高原・平原の名称をすべてスラスラと挙げながら、その特徴や概要を解説してくれる(「乗鞍山麓・五色ヶ原の神秘の森を歩く」)。

▲左)雌池。夏場、水が減って底が顔を出すことから亀甲池とも呼ばれる。中)伏流水が絶え間なく流れる布引の滝。雌池とともに、五色ヶ原ネイチャートレイルツアーで堪能できる。右)畳平の白雲荘前に水をたたえる鶴ヶ池。23峰の一座、魔王岳が白雲荘後方にそびえる。
▲左)6枚葉だけが花を咲かせるゴゼンタチバナ。中)澄んだ渓流や滝の水の飛沫、マイナスイオンに癒される。右)森の大地にすくすくと育つ、スギの赤ちゃんたち。五色ヶ原は、乗鞍の魅力がぎっしりと詰まった神秘の森だ。

幸いWebには文字数制限がないので、以下、乗鞍23峰の名称と標高を北から順に記載しておこう(とはいえ、あまり長いと編集部につっこまれます)。ただし、登山規制が敷かれているエリアがあり、全峰踏破はできないのでご注意を。

【乗鞍23峰】
十石岳(じゅっこくだけ/標高2,525m)
大崩山(おおくずれやま/標高2,523m)
猫岳(ねこだけ/標高2,581m)
硫黄岳(いおうだけ/標高2,554m)
四ツ岳(よつだけ/標高2,751m)
烏帽子岳(えぼしだけ/標高2,692m)
大丹生岳(おおにゅうだけ/標高2,698m)
大黒岳(だいこくだけ/標高2,772m)
恵比寿岳(えびすだけ/標高2,831m)
魔王岳(まおうだけ/標高2,764m)
富士見岳(ふじみだけ/標高2,817m)
里見岳(さとみだけ/標高2,824m)
不動岳(ふどうだけ/標高2,871m)
摩利支天岳(まりしてんだけ/標高2,873m)
水分岳(みくまりだけ/標高2,896m)
朝日岳(あさひだけ/標高2,975m)
蚕玉岳(こだまだけ/標高2,979m)
雪山岳(ゆきやまだけ/標高2,890m)
剣ヶ峰(けんがみね/標高3,026m)
大日岳(だいにちだけ/標高3,014m)
薬師岳(やくしだけ/標高2,950m)
屏風岳(びょうぶだけ/標高2,968m)
高天ヶ原(たかまがはら/標高2,829m)
※「岐阜県中部山岳国立公園」より

比較的短時間で登頂できる日本百名山

乗鞍は北アルプスのなかでも別格の山。槍穂高とはまた違った一種独特な味わいがある。山ヤの大先輩が、かつてよくそう言っていた。ところが乗鞍スカイラインが開通し、山頂手前の畳平までだれもが気軽にアクセスできるようになる。1973年のことだ。以後、登山者だけでなく、多くの観光客が訪れる山へとその様相は変わっていった。

現在はマイカー規制があり、岐阜県側のほおのき平バスターミナル、あるいは長野県側の乗鞍高原観光センターで、それぞれシャトルバスに乗り換える。終点の畳平バスターミナルまで、いずれも1時間足らず。あっという間に別世界にたどり着ける。
余談だが、山や自然が大好きだった母が脚を悪くしたあとにも雲上の地に立ち、満面の笑みを浮かべていたことが忘れられない。それはシャトルバスのお陰だった。

▲日本一高所にあるバスターミナル、畳平。標高2,702m。銀嶺荘、白雲荘のほか、レストランや公衆トイレ、土産物店などがある。赤い屋根のバスターミナル後方の山は、不動岳。

畳平から剣ヶ峰へは、一般的なコースタイムで1時間半から2時間程度。天候に恵まれれば、比較的容易に山頂までアプローチできる。とはいえ、肩の小屋からしばらく登ると急なガレ場が始まり、さらに頂上小屋から山頂までは岩場の急登となるので、この区間は慎重に歩を進めたい。登り切れば、待っているのは360度遮るもののなにもない大天望だ。

以下、主要スポットの写真とともに本コースを紹介しよう。下記「山と自然ネットワークコンパス」で作成したルートマップと照らし合わせて、コースの全体感を想像していただければと思う。

▲前回も紹介したが、「山と自然ネットワークコンパス」では、オリジナルのルートマップを作成できる。「ルート勾配」機能、計画ルートの「体力強度」を表示する機能などがあり、登山計画を立てるうえで非常に便利。ぜひ利用されたい。
▲左)畳平バスターミナルを背に歩き始める。建物左奥は、恵比寿岳。右)まずは整備された遊歩道を進む。途中の分岐を右へ行くと、乗鞍自然観察教育林のお花畑が広がる。
▲乗鞍自然観察教育林のお花畑。ハイマツの群落やキバナシャクナゲ、コマクサやチングルマなどなど、さまざまな高山植物を愛でつつトレッキングを楽しめる。
▲7月下旬の本山行時に咲いていた高山植物たち。左)キク科の多年草、ウサギギク。別名キングルマ。中)言わずと知れた高山植物の女王、コマクサ。ケシ科の多年草。右)オトギリソウ科の多年草、シナノオトギリ。類似種にイワオトギリやサワオトギリがある。
▲不消ヶ池(きえずがいけ)。例年、夏でも砂れき部分を覆うように雪渓が残っているのだが、今夏はかなり小さいものだった。これも温暖化の影響か。
▲富士見岳分岐。写真左側から登ってくる。帰路は、この分岐を右に進み、富士見岳経由で畳平へ戻るのもいい。
▲左)1918(大正7)年創業という老舗の山小屋、肩の小屋。目の前に、摩利支天岳。右)朝日岳、剣ヶ峰を見上げる、小屋前のフリースペース。
▲剣ヶ峰口。肩の小屋脇から本格的な登山道が始まる。ややザレた道を登り、次第に斜度も増していく。
▲朝日岳山頂手前あたりから斜度がキツくなり、かつガレガレの岩場区間となる。落石注意。
▲標高約2,840mの地にある火山湖、権現池。日本第2の高地にある湖沼。ちなみに1番は御嶽山の二ノ池(標高約2,905m)。
▲蚕玉岳より乗鞍岳最高峰の剣ヶ峰を望む。鞍部は歩きやすいが、頂上小屋手前から再び岩場となる。
▲小屋の屋根の基礎部分が標高3,000mという頂上小屋。乗鞍岳関連グッズを購入すると、もれなく登頂証明カードをもらえる。
▲左)山頂の剣ヶ峰。晴れていれば、日本百名山48座を見渡せる。この日、周囲の稜線はガスに覆われていた。残念。右)乗鞍本宮奥宮(剣ヶ峰頂上本社)。登頂のお礼と下山の無事を願い、参拝。畳平に乗鞍本宮中ノ宮(遥拝所)があるので、こちらでも参拝できる。

身近になった3,000m峰の光と影

山頂までのアプローチが容易になり、多くの人が気軽に3,000m峰の世界を味わえるようになった。だがその一方で、哀しい事故が発生した。便利さの恩恵の裏側には、さまざまな影響やしっぺ返しも生じる。それは自然の摂理なのかもしれない。山へおじゃまさせていただく身として、以下、畳平で発生した事故(一般的には「乗鞍岳クマ襲撃事件」と呼ばれている)の概要を記載しておきたい。

2009(平成21)年9月18日。この日は三連休の土曜日ということもあり、多くの登山者や観光客が畳平を訪れていた。天候は晴れ、穏やかな秋の行楽日和。いつもと変わらぬ平穏な時間が流れていた。が、14時10分過ぎ、魔王岳中腹にて騒ぎが起こる。登山者でにぎわう山中にクマが出没したためだった。

最初にクマと遭遇したのは、騒ぎの起こる前、写真撮影をしていた男性(68歳)だった。クマと接触し負傷したが、自力で即座に病院へ向かった(本負傷者の存在は、事件後しばらく経過したあとに判明)。

その後、女性が襲われ、先の騒ぎとなる。悲鳴を聞き、男性(66歳)が駆けつけた。女性を救うべく、杖でクマを追い払おうとしたが、クマに押し倒された。異変に気づいた銀嶺荘のオーナー(男性、59歳)が救助に向かった。倒れた男性にクマが覆いかぶさっている。周囲の人に避難を指示し、自らは手をたたいてクマの注意をひいた。するとクマは、オーナーに向かって突進してきた。駆けつけた山荘の従業員とともに逃げたが、途中で従業員が転倒し、クマに襲われる。再びオーナーがクマのもとへ向かい、顔に大ケガを負う。オーナーの息子が父を助けるべくクマを蹴ったが、息子も負傷。従業員も顔面に重傷を負った。人力ではとても手のつけられない状態が続き、連鎖的に負傷者が増えていった。

その後、クマは大勢の人が避難していたバスターミナルの建物へ侵入(クマにとっては侵入ではなく、逃げ場を必死に探していたのかもしれない)、建物内がパニックに陥る。観光客を守るべく奮闘したバスターミナルの従業員やバスの女性運転手が襲われた。最終的に写真撮影していた男性を含め10人もの人が重軽症を負った。だが、幸いにも死者は出なかった。

そして地元猟友会の4名が現場に赴き、午後6時前、当該クマを射殺。人々と遭遇し、図らずも負傷させてしまったツキノワグマは、体長136cm、体重67kg、21歳オスの老グマだった。

▲畳平バスターミナル全景。右側の山が魔王岳。バスターミナルから山頂まで20分ほど。

事故後、さまざまな意見、推測が飛び交った。なかには「原因は杖でクマを興奮させたため」とする報道もあった。そこには<躊躇している場合ではない。ほかに手段はなく、人を助けるために必死に杖をふるった>という男性の思いが欠落していた。結果、この男性に対する根拠のない誹謗中傷までをも生んでしまう。

厳正な検証によって出された岐阜大学の調査報告書を軸に考察すると、主たる原因は以下が考えられる。

普段から多くの人が訪れるこのエリア(畳平および周辺)では、過去に同様な事故は発生していない。通常であれば人の気配を感じたクマは人を避ける。だが、不運にも人と遭遇(最初に遭遇したのは登山道ではなく、普段、クマが植物を食べていたエリアだった)し、驚いたクマは逃避行動を起こした。逃げた先が不運にも道路(乗鞍スカイライン)だった。事実、この日、バスとクマの接触事故が発生していた。さらに逃げ続けたクマは鉄柵設置エリアへ入ってしまう。鉄柵の小さな穴から顔を出すが、体が抜けない。クマはさらなるパニック状態に陥った。なんとか抜け出すものの、危険から身を守るべく猛進した地が魔王岳、さらには多くの登山者でにぎわう畳平だった。極度の緊張状態が続き、クマの行動は威嚇攻撃(ブラフチャージ)から襲撃へと変わっていった。

▲自然豊かな地を蛇行しながら標高3,000mの世界へと誘う乗鞍スカイライン。剣ヶ峰付近より。

本件の発生原因には、いくつもの偶発的な不運が積み重なったことを無視できない。
その後は幸い、同エリアでのクマと人の遭遇による事故は発生していない。
遡れば、道路の開通も原因の一端なのかもしれない。どこを起点にとらえるのか、本件に限らず、考えさせられる。
クマにとっても、人にとっても、悲しい事故がこれ以上発生しないために、できる限りのことを考え、実践したい。クマとの活動圏を分けるゾーニングや山中で不用意にクマと遭遇しないための工夫や行動もそのひとつだろう。

そしてもうひとつ、害獣や益獣、駆除や外来種……といった言葉の使い方にも留意したい。どれも人間本位の言葉であるとともに、使い方ひとつで案件の印象をガラリと変えてしまう。言葉は繊細だ。だからこそ、慎重に使う必要があると自問自答する。そもそも、地球上で最大の“外来種”は、繁殖地を広げるために移動し続けてきた我々ホモ・サピエンスかもしれないのだから。

▲生きるために生きるクマに罪はない。とはいえ、事故が発生してしまえば、それだけでは片づかない。遭遇による哀しい事故がなくなりますよう。クマとヒトの平穏な共存を願う。

幻想的な湯の彩、信州の秘湯「泡の湯」へ

さて、気分一新、下山後の温泉へ。今回訪ねるのは、白骨(しらほね)温泉の「泡の湯」。山深い地に位置する隠れ家的な老舗の温泉旅館だ。日帰り入浴ももちろん可能。惑うように彩を変えてゆく“変幻の湯”は、信州の秘湯として名高い。
乗鞍畳平バスターミナルからであれば車で15分ほどと、乗鞍岳下山後にもってこいの山直温泉だ。シャトルバスを降りマイカーに乗り換え、さっそく「泡の湯」へ向かった。
※温泉については、『PEAKS 2025年12月号(No.175)』誌面をご覧ください。

山行&温泉data

コースデータ 乗鞍岳剣ヶ峰

コース:乗鞍畳平バスターミナル(約2,704m)~不消ヶ池~富士見岳分岐~肩の小屋~蚕玉岳~頂上小屋~乗鞍岳剣ヶ峰~頂上小屋~蚕玉岳~肩の小屋~富士見岳分岐~県境広場~鶴ヶ池~乗鞍畳平バスターミナル
コースタイム:約3時間
標高:3,026m
距離:約6km

下山後のおすすめの温泉 長野県/白骨温泉「泡の湯」

▲四季折々、繊細に移ろう景観とともに幻想的な彩の湯に浸かれる温泉旅館「泡の湯」。
▲大野天。乳白色の湯が、陽光や空の色合いによっては、コバルトブルーや紺碧色へと変化してゆく。
▲内湯。湧出直後の透明な湯は人肌ほどのぬる湯。乳白色の湯は加温したあつ湯。交代浴が心地よい。
▲混浴の大野天のほか、男女別の野天風呂もある。左が無色透明の女湯、右が白濁した湯の男湯。
▲大野天風呂への女湯入口。湯続きになっており、全身湯に浸かった状態で大野天へ移動できる。

白骨温泉「泡の湯」

・長野県松本市安曇4181(白骨温泉)
・TEL.0263-93-2101
・入浴時間:10:00~13:30(14:00退館)
・休業日:日帰り温泉・外来入浴営業カレンダー参照。※臨時休業の場合あり。当日、要電話確認
・入浴料(日帰り):大人¥1,000/小人(3歳~小学生)¥600
・泉質:含硫黄-カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉(硫化水素型)
・アクセス:乗鞍高原観光センターから車で約15分

“山直温泉”の記事・情報は
『PEAKS 2025年12月号(No.175)』の「下山後は湯ったりと」にて!

▶「山本晃市の温泉をめぐる日帰り山行記」一覧はこちら

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PROFILE

山本 晃市

PEAKS / 編集者・ライター

山本 晃市

山や自然、旅の専門出版社勤務、リバーガイド業などを経て、現在、フリーライター・エディター。アドベンチャースポーツやトレイルランニングに関わる雑誌・書籍に長らく関わってきたが、現在は一転。山頂をめざす“垂直志向”よりも、バスやロープウェイを使って標高を稼ぎ、山周辺の旅情も味わう“水平志向”の山行を楽しんでいる。頂上よりも超常現象(!?)、温泉&地元食酒に癒されるのんびり旅を好む。軽自動車にキャンプ道具を積み込み、高速道路を一切使わない日本全国“下道旅”を継続中。

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山や自然、旅の専門出版社勤務、リバーガイド業などを経て、現在、フリーライター・エディター。アドベンチャースポーツやトレイルランニングに関わる雑誌・書籍に長らく関わってきたが、現在は一転。山頂をめざす“垂直志向”よりも、バスやロープウェイを使って標高を稼ぎ、山周辺の旅情も味わう“水平志向”の山行を楽しんでいる。頂上よりも超常現象(!?)、温泉&地元食酒に癒されるのんびり旅を好む。軽自動車にキャンプ道具を積み込み、高速道路を一切使わない日本全国“下道旅”を継続中。

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