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天空への木道が導く、ありのままを見つめる山旅〜鳥取・大山〜

今年の始まりは、個人的にうつむく出来事があり、どこか自分を責める思いで山に登る気も失せていた。ヒザを抱える日が続いたある日、数年前に大雨で断念した鳥取・大山へ再び行く誘いが。一度、諦めたものを取り戻す山旅。沈んでいたはずなのに、なぜか惹かれ行ってみたいと思った。見えないなにかに背中を押されるように、私は春、再び登山靴を履いた。

霞のもやが寄り添うスタート

大山の夏山登山口に着くと、薄くもやがかかっていた。明日は雨になるらしい。それでも今日はなんとか登れそうだ。久しぶりに履く登山靴の紐をギュッと絞めながら、晴れ渡った青空ではなくてよかったと小さく思った。いまの私には、まだちょっと眩しすぎる。心の色となじむ薄曇りに包まれながら、いつもより少しだけ大きく深呼吸をして、しっとりした霞の森に、私の一歩を踏み出してみた。

森のなかで心が動き出す

歩きやすく整備された登山道を進むと、イワカガミの花が咲いていた。うつむき加減で咲く優しいピンク色の姿を眺めていると、無理に上を向かなくてもいいんだよ、と言ってもらえたような気がした。ハッとして花からの小さな声に耳を澄ます。たとえ心が晴れないときでも、うつむくイワカガミはそのままの姿だ。自分を受け入れて凛と咲く、その可憐な花と幾度も言葉を交わすなか、五号目まで続く階段の洗礼も忘れるほど、新緑のブナの森を夢中で歩いていた。

山肌が目の前に

歩き始めて1時間ほど経つと、視界が開ける先には六合目避難小屋。思い思いに休憩をとる人たちに混ざり、少しずつほぐれてきた気持ちに気づく。そのとき、ふと霧が晴れ、山肌が目の前に。屏風岩だ。見えなかったものが突然ドラマティックに幕を開ける。塞いでいた胸の扉が音もなく開いていくようで、沸き立つような感情を味わうようにかみしめていた。

美しい木道が導く山頂へ

八号目からは、整備された美しい木道が。このまま迷いなく天空まで導かれるよう。空まで歩いていけたならと、うつむく先のもう会えない面影に想いを馳せる。時折、風の気まぐれでカーテンが開く。瞬時に覗くパノラマの大きな眺めを心に刻みながら、一歩ずつ山頂へと向かった。

取り戻せた山への思い

大山頂上で迎えてくれたのは、白い雲だった。中国地方最高峰、標高1,709mからの雄大な眺めは想像に託すことになったけれど、私の心には開いた扉から優しい光が差し込み、潤いをまとった柔らかな風が流れているよう。

うつむく思いもそのまま受け入れ、自分の足で前に進む。それでいい。そのままでいい。体と心に風がそよぐ山歩きが私はやっぱり好きなのだ。沈んだ思いの底にある私の「好き」を取り戻し、前に進む静かな強さが芽生えたようでうれしくなった。

振り返ると霞の大山がふっと微笑み、またおいでと優しく見送ってくれていた。

訪問時期:2026年4月
コース:夏山登山道~六号目避難小屋~弥山(1,709m)往復
大山下山後、徒歩で向かえる宿へ。

山陰の情景を味わうフレンチオーベルジュ
「Scène(セヌ)」
https://scene-daisen.com/

写真&テキスト◎高橋 美佳(宇宙HIKE)
https://www.instagram.com/mika87_8184?igsh=MXRmbXpzZjdyMThiMw%3D%3D&utm_source=qr

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PROFILE

宇宙HIKE

宇宙HIKE

Photographer 松本茜主催、山と写真のコミュニティー。 宇宙を旅するように山へ登り、旅や写真を使って「自分」にフォーカスする。 ユーモア溢れるメンバーが集まり、日々楽しみながらいろんなフィールドで活動を続けている。

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