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バンクーバーの対岸へ。ウエストバンクーバーで森と海、街をめぐる朝【WILD & LOCAL / CANADA #3】

バンクーバーの目と鼻の先、ウエストバンクーバーでは、山と海が街に溶け込み、少しだけゆっくりとした時間が流れていた。

早起きをして森を歩き、海を眺め、街のベーカリーへ。

文◉寺井杏雛
写真◉竹内天平
編集◉VINAVIS

バンクーバーの対岸に佇む静かな街

にぎやかなバンクーバー・ダウンタウンから、ライオンズゲートブリッジを渡るだけで、「ウエストバンクーバー」と呼ばれる海と山に挟まれた静かな街が広がる。

南にはバラード湾が、北にはサイプレス・マウンテンをはじめとする山々が連なる豊かな街。じつは、ここは高級住宅街としても知られ、整った街並みが続く。一方で観光地特有のにぎわいはそれほど強くなく、バンクーバーの中心部とは異なる穏やかな空気が漂っている。

バンクーバーの人や車の多さから離れて、のんびりと街と自然を楽しむのにぴったりの場所だ。

朝の散歩。巨木の秘密

この日は、静かな森と海を求め、早起きしてライトハウス・パークへやってきた。駐車場に車を停めて歩き始めると、すぐにたくさんの巨木が私を迎えてくれた。朝、だれもいない公園で、人間の寿命よりもずっと長い時を生きる「木」に囲まれるのはなんだか不思議な感覚だ。ここだけ時間の流れが緩やかになったような気がして、心がすっと静まり返っていくのを感じる。

▲優しい朝の光が、巨木と私を照らす。

どうしてこんなにも、この公園の「木」が大きいのか。
じつは、ライトハウス・パークには、このあたりでは数少ないオールドグロースの沿岸林が残っている。

ライトハウスという名前のとおり、そこには灯台が建っており、最初の灯台は1874年に建設された。そして、1881年に灯台周辺の森が国によって保全された。森は、灯台を海上から認識しやすくするための暗い背景、また蒸気式霧笛の燃料源としての役割を担った。この森の保全が、現在のライトハウス・パークへと繋がっている。
「灯台と霧笛を支えるため」という意外な理由から、結果的に伐採を免れた幸運な森だったのだ。

森を抜けて海へ

大きな木々の森を10分ほど進むと、視界がパッと開けた。そこには、朝の光をいっぱいに浴びたバラード湾が広がっていた。たくさんの光が一気に目のなかに入ってくる。まだ少し眠かった身体が飛び起きるのを感じる。

▲森を抜けると、海が待っている。太陽が水面に反射して光り輝く世界。すっきりと目と頭が覚める。

そして遠くにはうっすらとバンクーバーダウンタウンが望める。

▲この日は遠くの山火事の影響で空が霞んでいた。

ブリティッシュ・コロンビア州(BC州)の夏はとても乾燥していて山火事が相次ぐことがある。火事自体が近くなくとも、煙が風に乗って広がり、こんなふうに視界が悪くなってしまうことはめずらしくない。
そのため、火災リスクが高まると、焚き火など屋外での火の使用が制限される。キャンプなどをする際には、その時点の規制をBC州の公式サイトで確認する必要がある。

▲海沿いを歩いているとヒトデが現れた。

普段山ばかり歩いている私だが、この潮の匂いや海の生き物たちは、子どものころの海水浴を思い出させ、自然とワクワクした気持ちにさせてくれる。

海風のとおる街をぶらり

朝の静かで穏やかな自然を堪能したのち、車を少し走らせてアンブルサイドの街中へと向かった。

海岸線に沿って伸びるメインストリート「マリーン・ドライブ」に車を停め、あてもなく歩き出す。海風に導かれながら向かったのは、アンブルサイドの木製の桟橋だ。

▲デッキは釣り人でにぎわい、観光客は私だけ。ローカルの人々の日常を覗かせてもらうような感覚になる。

デッキの先端まで歩き、ふと東に目をやると、海の上にすっと一本の線を引いたようなライオンズゲートブリッジが見える。繊細な骨組み。対岸のダウンタウンへと続くその優美なシルエットは、遠くから眺めていると「あんなに細くて大丈夫だろうか」と少しドキドキしてしまうほどだ。

▲バンクーバーとウエストバンクーバーを繋ぐライオンズゲートブリッジ。

じつは、この橋とウエストバンクーバーの発展には密接な関係がある。

かつてバンクーバーとの行き来をフェリーに頼っていたウエストバンクーバーは、1926年の都市計画によって新たな工業開発を禁じ、住宅地としての発展に舵を切った。その可能性に着目したのが、ギネス家を中心とする英国の投資家グループだ。1930年代にBritish Propertiesの開発を進め、そのアクセスを支えるために建設されたのがライオンズゲートブリッジだったという。
1938年に橋が開通すると、バンクーバー中心部へのアクセスは大きく改善。一本の橋の誕生が、ウエストバンクーバーの発展を大きく後押ししたのだ。

海風に吹かれながら街と橋の成り立ちに思いを馳せていると、お腹が心地よく空いてきた。ちょうどブランチの時間だ。少し歩いて、地元のベーカリーを目指すことにした。

地元に愛されるベーカリーへ

やってきたのは、ダンダリーブと呼ばれるエリアにある「サヴァリー・アイランド・パイ・カンパニー」というベーカリー。

▲ふらっと入りたくなってしまうような可愛らしい外観。

ここでは、焼きたてのパイやサンドウィッチ、マフィンにケーキまで、さまざまな焼きたての味が楽しめる。店内はローカルのマダムたちや、仕事着のまま立ち寄ったお客さんでにぎわっている。

今回はチキンポットパイと、ハム&アップル・チェダーサンドウィッチを注文。

▲手前はサンドウィッチで、奥がパイ。

サクサクしたパイ生地を割ると、たくさんの野菜とチキンが湯気とともにあふれ出し、その優しい味が身体に染み渡る。サンドウィッチは、塩気のあるハムとコクのあるチーズに、シャキッとしたりんごの甘酸っぱさが絶妙なアクセントを添える。

素朴で力強い素材の味わいは、長年地域に根差してきたお店だからこそ。じつはここは30年以上にわたり、この地で焼きたてのパイやパンを提供するファミリービジネスのベーカリーだ。いまではウエストバンクーバーとトフィーノで、ベーカリーやキオスク、アイスクリーム店など4拠点を展開している。

すっかり空いたお腹も、あっという間に満たされた昼下がり。
朝から動いて、心も身体も晴れやかだ。太陽はまだ高い。さあ、午後はなにをしよう。

大都市の喧騒からほんの少し離れるだけで、森と海、そして温もりのこもった美味しい食べ物が私たちを迎えてくれる。穏やかな朝を求めて、ぜひウエストバンクーバーに足を運んでみてほしい。

Information

Lighthouse Park(ライトハウス・パーク)

  • 住所:4902 Beacon Lane, West Vancouver, BC V7W 1K5
  • アクセス:有料駐車場あり。バスでのアクセスも可能。
  • ハイキング・トレイル情報:
    園内にはさまざまなトレイルが整備されており、散策の目的に合わせて15分~1時間以上の森歩きまで楽しめる。
    駐車場からビューポイント(灯台が見える海岸)までは片道約10~15分ほどの緩やかな下り坂。
    スニーカーやハイキングシューズなどの歩きやすい靴を推奨。

Ambleside Pier(アンブルサイドの桟橋)

Savary Island Pie Company(サヴァリー・アイランド・パイ・カンパニー)

  • 住所:1533 Marine Dr, West Vancouver, BC V7V 1H9
  • 営業時間:月~水 7:00~17:30 / 木~日 7:00~19:00(キッチン:月~木 8:30~16:00 /金~日 7:00~16:00)
  • 駐車場:マリーン・ドライブ沿いの路上駐車場を利用。バスでのアクセスも可能。
    ライトハウス・パークなど対象公園の駐車料金は、PayByPhoneやhangTagなどで支払い可能。ライトハウス・パークとアンブルサイド・パークにはクレジットカード対応の精算機も設置されている。

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PROFILE

寺井杏雛

寺井杏雛

山で遊びながら育ち、そのままの想いで学生時代も自然のなかへ。クライミングにマウンテンバイク、ハイキング——気づけばいつも山が遊びの中心にあった。現在はカナダ・ブリティッシュコロンビア州スコーミッシュを拠点に、山とともにあるライフスタイルを楽しんでいる。

寺井杏雛の記事一覧

山で遊びながら育ち、そのままの想いで学生時代も自然のなかへ。クライミングにマウンテンバイク、ハイキング——気づけばいつも山が遊びの中心にあった。現在はカナダ・ブリティッシュコロンビア州スコーミッシュを拠点に、山とともにあるライフスタイルを楽しんでいる。

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