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「MTBを国民的スポーツへ」ヤマハ発動機や山守人ら4社が連携し『MTB活用社会推進連絡協議会』を発足

2025年11月27日、山守人とオリエンタルコンサルタンツ、JPF、ヤマハ発動機との4社連携による「MTB活用社会推進連絡協議会」の設立と、本格的な活動開始を発表した。

建設コンサルタント大手、公営競技場運営、自転車メーカー、そしてトレイルビルダー。異なる強みを持つ4社がタッグを組み、マウンテンバイク(MTB)を単なるレジャーとしてだけでなく、地方創生や社会課題解決の切り札として位置づける。日本の山岳エリアが抱える課題を解決し、欧米のように「MTBが当たり前にある社会」を実現するための政策提言や法整備を目指す、極めて野心的なプロジェクトだ。

なぜ今、この座組みなのか? 日本のMTB環境が抱える構造的課題

世界的に見れば、MTBは全自転車販売台数の約半数を占める国もあるほどのメジャースポーツだ。市民の日常的なレジャーとして定着し、公園や山道が法的に走行可能なフィールドとして整備され、公的資金による維持管理体制も確立されている国は少なくない。

対して日本国内におけるMTB人口は全人口の0.1%未満(同協議会推計)に留まる。
その最大の要因として長年指摘されてきたのが、「走れる場所の不足」と「法制度の未整備」だ。

日本の山道の多くは、古くからの生活道や信仰の道であり、権利関係が複雑であることや、歩行者優先の原則の中でMTBの法的地位が曖昧であったことから、公的な活用が進んでこなかった。また、近年では利用者の減少による山道の荒廃も深刻化している。

こうした「個別の団体やローカルな活動だけでは突破しきれなかった壁」に対し、制度設計や予算化という根本からの解決を試みるのが本協議会の狙いだ。

山梨県市川三郷町における「自治体とMTB団体の地域活性化包括連携協定」調印。単なるイベント協力にとどまらず、行政と協定を結ぶことで、公的な予算や計画の中にMTB活用が正式に位置づけられる。これが地方創生の基盤となる

異業種4社が描く「MTBエコシステム」

今回発足した協議会の構成メンバーは非常にユニークかつ、強力な布陣となっている。

  • 一般社団法人山守人:全国のトレイル整備や維持管理の現場で豊富な実績を持ち、MTBと地域の共生を実践してきたエキスパート集団。
  • オリエンタルコンサルタンツ株式会社:社会インフラ整備や地域計画に強みを持つ総合建設コンサルタント。行政への政策提言や計画策定のノウハウを持つ。
  • 株式会社JPF:公営競技場(競輪場等)の運営やITソリューションを手掛ける。施設の利活用や資金循環の仕組みづくりに長ける。
  • ヤマハ発動機株式会社:世界初の電動アシスト自転車を開発したメーカーであり、E-MTBのパイオニア。機材の提供や技術的知見、安全教育の面で貢献する。

「現場のノウハウ」を持つ山守人と、「行政計画・コンサル」のオリコン、「施設運営・資金」のJPF、「メーカー・技術」のヤマハ。これらが連携することで、ソフト(活動・教育)とハード(コース・機材)、そしてルール(制度・予算)を包括的に整備できる体制が整ったと言える。

協議会が描くMTB活用社会のイメージ。山道だけでなく、公園、廃校、宿泊施設、公共交通など、地域全体がMTBフレンドリーに連携する様子が描かれている

「導入拠点」と「トレイル網」の2階建て構造で普及を目指す

協議会が提唱する普及モデルで興味深いのが、「MTB導入拠点」と「山道トレイル網」をセットで整備する必要性を説いている点だ。

これまでのMTB普及活動では、いきなり山道のトレイル整備に注力しがちだったが、初心者にとって「山」はハードルが高い。そこで同協議会は、以下のようなステップアップ構造を提案している。

  1. MTB導入拠点(入口):
    都市公園、競輪場、廃校、河川敷などを活用した平地や緩斜面のフィールド。ここでレンタルバイク(E-MTB含む)を利用し、基礎的な操作スキルやマナー、安全走行を学ぶ。
  2. 山道トレイル網(本番):
    導入拠点で基礎を身につけた人々が、地域の山林に整備された長大なトレイル網へと繰り出す。

この「入口」と「本番」をセットで地域に実装することで、既存のコアなサイクリストだけでなく、ファミリー層やMTB未経験の一般層を取り込む。そうして地域に多くの人を呼び込み、アドベンチャーツーリズムや長期滞在型の観光へと繋げ、経済効果を生み出す狙いだ。

初心者が安全に学べる「導入拠点」と、本格的な体験ができる「山道トレイル網」。この2つを循環させることで、持続可能なMTB文化を醸成する
JPFが運営に関わる施設(千葉公園「ドーム前広場」)における活用事例。都市部の公園や余剰地に本格的なパンプトラック(導入拠点)を設置。ここで基礎を学んだ層が、やがて山へ向かうという動線を描く

「遊ぶ」だけではない。社会課題解決ツールとしてのMTB

本協議会が画期的なのは、MTBを「スポーツ・レジャー」の枠を超えた「社会課題解決のツール」として定義している点にある。リリースでは具体的な活用例として以下が挙げられている。

  • 山道の維持管理:登山者だけでなく、機動力のあるMTBライダーが日常的に山に入り、巡視や整備を行うことで、荒廃する古道や登山道を保全する。
  • 災害時の活用:災害時に自動車が入れない悪路でも移動可能なE-MTBを配備し、物資輸送や連絡手段として活用する(フェーズフリー社会)。
  • 教育・育成:自然の中での判断力や自己管理能力を養う教育プログラムとしてMTBを活用。不登校対策や健全育成に寄与する。
  • 獣害対策・防犯:人が山に入り気配を消さないことで、野生動物との緩衝地帯を作る。また、過疎地域の見守り機能を果たす。

これらは、地方自治体が抱える「人口減少」「インフラ維持難」「防災」といった喫緊の課題に対し、MTBというソリューションを提案するものであり、行政側が予算や制度をつけるための強力なロジックとなり得る。

「走る人が、道を守る」。MTBライダー自身が整備活動に参加することで、担い手不足に悩む山道の維持管理に貢献する。この「公益性」こそが、MTBが社会に受け入れられるための鍵となる
子どもたちが自然の中でMTBを楽しむ様子。こうした原体験が、将来の地域への愛着(シビックプライド)を育むことにも繋がるという

今後の展望:先進事例を作り、国を動かす

協議会は今後、以下の活動を重点的に進めていくとしている。

  1. 先進事例(モデルケース)の構築:自治体と連携し、実際にMTBを活用した地域づくりの成功事例を作る。
  2. エビデンスの蓄積:それらの事例から、経済効果や健康増進効果、山道の維持管理コスト削減効果などのデータを収集・分析する。
  3. 政策提言:集まったエビデンスを基に、国や関係省庁に対し、MTB活用社会を推進するために必要な法制度の見直しや予算化を働きかける。

すでに挙げられている「先進事例」のテーマには、自治体との包括連携協定、閑散期のロープウェイ活用、学校教育への導入、インバウンド向けアドベンチャーツーリズムなどが並ぶ。

長年、グレーゾーンと言われがちだった日本のトレイルライド環境。今回の「MTB活用社会推進連絡協議会」の発足は、趣味人の草の根活動から、社会インフラとしての公的な位置づけへと、日本のMTBシーンを大きく転換させるきっかけになるかもしれない。

大手企業と専門家集団がスクラムを組んだ本プロジェクトの今後の動向に、引き続き注目していきたい。

既存の観光インフラであるロープウェイを活用し、MTBを山頂へ。冬場以外は稼働率の下がるスキー場リフトやロープウェイを有効活用することで、通年型のリゾートビジネスを構築する
学校教育や地域住民・行政職員向けの研修としてMTBを活用する事例。乗車技術だけでなく、自然環境への配慮やSDGsを学ぶ場として機能させることで、次世代の理解者と担い手を育む
MTBと山道を活用した森林学習体験や、インバウンド向けのアドベンチャーツーリズムの事例。ガイドが帯同することで安全性を確保しつつ、地域の自然や歴史文化を深く知る機会を提供する

MTB活用社会推進連絡協議会 構成団体

  • オリエンタルコンサルタンツ株式会社
  • 株式会社JPF
  • ヤマハ発動機株式会社
  • 一般社団法人山守人、株式会社山守人

主な活動内容

  • MTB活用社会モデル(先進事例)の構築
  • MTBによる山道利活用ガイドライン・維持管理手法の整備
  • 政策提言、制度化や予算化の働きかけ
  • 災害時のE-MTB活用協定締結
  • 地域住民や行政職員向けのMTB体験・研修など

問:MTB活用社会推進連絡協議会 https://www.mtbcpc.org/

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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