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北アルプス・上高地での野鳥観察のすすめ―登らなくても出会える、森の小さな住人たち―

上高地を歩いていると、つい雄大な山々や美しい景色に目を奪われる。でも、ふと立ち止まったその先に、小さな物語が隠れていることがある。枝先でさえずる鳥。森のなかをすり抜ける影。気づかなければ通りすぎてしまう、小さな命の気配。野鳥観察は、特別な道具や経験がなくても始められる森歩きの楽しみのひとつ。今回は、上高地で出会える野鳥たちと、その魅力を紹介したい。

上高地散策の目的は野鳥観察

▲ミソサザイ。

初めて上高地に足をふみ入れてから9年。いまも昔も、毎年のように上高地を訪れているけれど、じつは登山ではなく野鳥観察を楽しんでいることが多い。とくにここ数年は、愛鳥週間に合わせて上高地へ入るようになった。(※愛鳥週間とは、野鳥や自然環境の大切さに思いを寄せる1週間のこと)。毎年5月10日〜16日に、鳥たちが暮らす環境を守る意識を広めるため、観察会などのイベントが開催されている。

わが家は鳥飼いということもあり、数年前から、この時期に訪れるのが恒例になった。というのも、この時期の鳥たちは縄張りを主張したり、求愛したり、巣作りや子育てをしたりと、普段なかなか見ることのできない野鳥たちのドラマを見せてくれるから。

▲シジュウカラの巣。

そして、5月上旬の上高地は晩春や初夏に比べて緑がまだ少ない。そのぶん、枝にとまる野鳥たちを見つけやすいといううれしいポイントもある。さらに、上高地に入ると通信環境がそれほどよいわけではないため、自然とスマホを見る時間も減る。デジタルデトックスにもなるし、野鳥は基本的に自分より高い場所で活動していることが多いから、必然的に顔を上げて歩くことになる。首や顔まわりのストレッチにもなる気がするし、なにより鳥たちがかわいい。私にとっては、いいことづくめの時間なのだ。

野鳥探しは最高のトレーニング?

▲キビタキ。

私は「野鳥を見たい」という気持ちと同時に、「出会った鳥を写真に残したい」という気持ちもある。そのため、持っている視力を最大限に活用して、日々野鳥探しに励んでいる。

野鳥探しが趣味になったおかげで、下界にいても自然と鳥を探すようになった。その環境で暮らしているせいか、聴力はいい感じに維持できている気がするし、動体視力も少し上がったような気がする。ただ、残念ながら……。枝にとまって歌っている鳥や、ひと休みしている鳥は見つけられるのに、飛んでいる鳥はというと、写真はブレブレ、もしくはフレームアウトして何も写っていないこともしばしば(苦笑)。

だからこそ、野鳥撮影で大事なのは、見つける力だけではなく「気配を消す力」なのかもしれない。忍者のように存在を消して、そっと近づき、一瞬の表情を切り取る。……なんて言いつつ、実際は鳥に気づかれて飛ばれてしまうことも多いのだけれど(笑)。

上高地の野鳥観察はどこから始まる?

▲ルリビタキ。

「上高地って、どこで野鳥に出会えるの?」そう思うかもしれない。でもじつは、野鳥観察はトンネルを抜けた瞬間から始まっている。多くの人はバスやタクシーで入山すると思うので、実際にはバスターミナルで降りた瞬間からがスタートだ。上高地食堂から河童橋周辺では、セキレイ、シジュウカラ、エナガ、コガラなど。笹薮ではウグイスやミソサザイが、カサコソと小さな体で動き回っている。少し川のほうへ歩けばカワガラスに出会えることもある。

▲カワガラス。

開山して間もないころには、ルリビタキが姿を見せてくれることも。河童橋から明神、徳沢方面へ歩いていくと、キビタキやアカハラ、アカゲラ、ホシガラス、マガモ、オシドリ、コマドリなど、さらに多くの野鳥たちに出会える。季節によって出会える鳥が少しずつ変わるのも、上高地の魅力だ。

▲ヤマドリ。

鳥たちの暮らしを覗かせてもらう

▲ゴジュウカラ。

今回の5月の愛鳥週間では、コガラの営巣をはじめ、ミソサザイ、アカハラ、キビタキ、キバシリ、ゴジュウカラなど、かわいらしい野鳥たちが上高地の春を彩っていた。その中で、ひとつ印象に残った光景がある。コマドリが見られることで、鳥好きのあいだでは有名な「ソングポスト(縄張り主張や求愛のためにさえずる場所)」。

そこでは、コマドリが現れるのを今か今かと待つ人たちがいた。大きなカメラを構えてじっと待つ姿は、まるで人気芸能人を待つパパラッチのようで、思わずクスッとしてしまった。もちろん私自身も、かわいい姿を写真に残したいと思うひとり。

▲コマドリ。

だからこそ、ふと考えた。私たちが「見たい」「撮りたい」と思う気持ちが強くなりすぎたら、鳥たちにとっては少し落ち着かない場所になってしまうのではないか。野鳥観察の楽しさは、鳥たちの暮らしを少しだけ覗かせてもらうこと。主役はあくまで、そこに暮らす鳥たち。これはきっと、雷鳥を見つけたときもおなじ。あまりのかわいさに興奮して、気づけば距離を詰めてしまう……なんてことがないようにしたい。その暮らしを邪魔しない距離で、これからも野鳥観察を楽しみたい。

▲コサメビタキ。

写真&テキスト◎佐藤 郁(宇宙HIKE)
https://www.instagram.com/iku_sato2014?igsh=eXg4bTYwd2o5ZXQ4&utm_source=qr
https://note.com/ikus2014

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宇宙HIKE

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Photographer 松本茜主催、山と写真のコミュニティー。 宇宙を旅するように山へ登り、旅や写真を使って「自分」にフォーカスする。 ユーモア溢れるメンバーが集まり、日々楽しみながらいろんなフィールドで活動を続けている。

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