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ピレリ「PゼロレースTLR SL-R TEAM EDITION」試乗レビュー|リムとの段差を埋める新技術「PAAS」は効くのか|PIRELLI

フレームもホイールも、ハンドルもウエアもヘルメットも「空力最適化」が当たり前になった今。しかし、路面と唯一接するタイヤだけは、なぜか置き去りにされてきた。そこへイタリアのピレリが投じた一石が、PゼロレースTLR SL-Rだ。サイドウォールの断面形状を工夫してリムとの段差を埋め、ホイールと一体で空気抵抗を削る特許出願中の新技術「PAAS」を搭載する。理屈はわかる。では実際の走りはどうか。自転車ジャーナリスト安井行生さんがお伝えする。

空力で置き去りにされてきた「タイヤ」に、ピレリが一石

フレームやホイールだけでなく、ハンドル&ステム、ウエアやヘルメットまでありとあらゆるものが「空力的に最適化された」と謳われる今。しかしなぜかタイヤだけは放置されていた。リム外幅が極端なまでにワイド化され、タイヤのサイドウォールとリムの間に大きな段差ができても、その状況は変わらず。

もちろんそこに着目した人がいなかったわけではない。実際、過去にはリムとタイヤの段差を埋めるような製品は存在したが、いつしか消えていった。

タイヤ側でいくら工夫をしても、リム内幅やリム形状、リムハイトなどによって空力性能向上効果がまちまちであり、「どんなリムでも明確な空力性能向上が見込める」というレベルには到達しなかったからだろう。おそらく、CFDでも風洞実験でも、タイヤの断面形状をいくら変えてもリム幅やリムハイトによる差のほうが大きく、一つの答えに収斂しなかったに違いない。それに、タイヤのサイドウォール形状に工夫をすれば、重量増やサイドウォール剛性の意図せぬ向上による快適性低下なども考えられる。

(筆者の妄想ではあるが)そうしてタイヤメーカーが二の足を踏んでいたところに、イタリアのピレリが石を投げ込んだ。PゼロレースTLR SL-R。同社のPゼロレースTLRシリーズに追加されたレーシングモデルである。

14回の設計変更、8回の風洞試験が生んだ「PAAS」

最大の特徴は、サイドウォール部の断面形状を工夫してリムとの段差を埋め、それによる空気抵抗削減を目指したことだ。ホイール~タイヤの形状が滑らかになれば、空気抵抗を決める大きな要因である抗力係数(CD値)が小さくなり、抵抗を減ずることができる。

開発では、14回の形状・構造の設計変更、8回の風洞試験(パートナーとの共同試験を含め10回)、4種類の風洞施設を用いて性能を検証したという。ピレリの持つ豊富なモータースポーツ技術により培われたCFD解析技術も活用し、もちろんタイヤ単体だけではなくホイールと組み合わせたうえでの空力性能を最適化している。

理屈としては理解できるが、先述のようにリム形状によって効果は大きく左右されるだろうし、サイドウォール部に段差を設けるとタイヤとしての性能をスポイルする要因になりかねない。実力はどうか。

PAAS(ピレリ・アドバンスド・エアロ・システム)の一部をなす、特許出願中のプロファイル形状。リムとタイヤの接続部を滑らかに整え、気流の剥離を抑える。確かにリムとサイドウォールの段差が小さくなっている。

ケーシングは、ピレリのTLR用としては最軽量となるLiteCORE。通常のケーシングは、ビードを起点にして三つ折りにし、中央までオーバーラップさせる。するとサイドウォール部は二重に、センター部分は三重になる。PゼロレースTLR SL-Rの構造イラストを見ると、センターまで重ねず、トレッド部分にもう1枚重ねる作りのようだ。これによってケーシングの重ね方が左右対称になり、変形が素直になって転がり抵抗が減る可能性がある。また、トレッドセンターが2枚になることで変形する部材の量が減り、ここでも転がり抵抗が減る。

P ZERO RACE TLR SL-R TEAM EDITION

価格:18,800円(税込)

P ZERO RACE TLR SL-R

価格:18,600円(税込)

  • カラー:TEAM EDITION、BLACK
  • サイズ(重量):700x28C(275g)、700x30C(295g)
  • タイヤタイプ:TUBELESS READY
  • ケーシング:120tpi
  • コンパウンド:SmartEVO2 COMPOUND
  • ストラクチャー:LiteCORE、PAAS
  • フックレス対応:対応(※最大空気圧制限を必ずお守りください)

詳細はこちら

試乗レビュー 自転車ジャーナリスト安井行生

リム外幅がどんどん広がるなかで、タイヤとリムの段差も大きくなっている。空力性能追求においてそこが放置されていることに違和感を覚えていたから、この進化の方向には納得だ。ただし、話はそう簡単ではないだろう。「普及率が非常に高い丸形ボトルの汎用性を無視できない/いくらボトル&ボトルケージで空力を高めてもフレーム&ホイールとの相性によって効果が薄れる/重量増の原因になる」という理由によってボトル周りのエアロ化が進まないのと全く同じ理由によって、タイヤ&リム周りのトータルでのエアロ化には各メーカー消極的だ。

特定のリム形状に最適化するならまだしも、このピレリの新作はリムを限定しないのだから、下手をすれば「空力性能向上は全く感じられないのに、重くなって快適性も低下した」というトホホな事態になりかねない。慎重に利害損得を見極める必要がある。

実際に28Cを走らせてみると

試乗したのは28C。もちろんチューブレス状態で乗った。転がり抵抗は非常に低い。コンパウンドなのか構造なのか、本当にサイドウォールの段差が効いているのかは判別できないが、おそらくその全てだろう。トレッド部のケーシングが三重ではなく二重なので、エアロ化だけではなく、あらゆる手段で転がり抵抗を削減したのだろう(基本的に転がり抵抗は変形する部材の量によって決まる。トレッド部が薄ければ薄いほど変形するものが少なくなり、抵抗は小さくなる)。

サイドウォールが分厚いから快適性が低いかと思いきや、意外にマイルドだ。大きい衝撃は正直に伝えてくるが、「コシがある」「路面の状態を感じ取りやすい」とポジティブに捉えることもできるもの。4気圧以下に落としても走りが重くならず、快適性を含めたバランスがよくなる。ハンドリング、ダンシングのナチュラルさは隠れた大きな美点。

ちょい乗りでは耐久性や耐パンク性は評価できないが、レーシングタイヤとして隙がない。この「サイドウォール部の形状を工夫して空気抵抗を減ずるPAAS」は特許出願中とのことだが、レーシングタイヤ開発の新たな方向性の一つになるかもしれない。

問:カワシマサイクルサプライ https://www.riogrande.co.jp/

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PROFILE

安井行生

安井行生

大学卒業後、メッセンジャー生活を経て自転車ジャーナリストに。現在はさまざまな媒体で試乗記事、技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半を自転車につぎ込んできた。

安井行生の記事一覧

大学卒業後、メッセンジャー生活を経て自転車ジャーナリストに。現在はさまざまな媒体で試乗記事、技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半を自転車につぎ込んできた。

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